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ある日のお話 にゃんにゃんにゃんだヨ

猫の日である2月22日に思い付いたお話。

何となく区切りが良いので、月は違うけれど22日に公開。

 ある日の多機能宿泊所(名前を決めるつもりはない)。

 既にネスや神獣達には内部が異常である事をさらけ出している為、使わなければ勿体無いと、1階の憩いのエリアとか2階のくつろぎエリアとかで時々のんびりしている。


 今回もメイドのゴーレムに頼んで簡単な飲み物と食べ物を準備――材料は提供――し、図書エリアから見付けてきたマルお勧め魔導書を持って、憩いのエリアの芝生庭園――地面に芝生が張られ、木々が程よい木陰を作っている庭園――で木の幹に背中を預けてまったり読書中。

 文字は知らない言語だけど読めるし書ける。読む事ができるのは召喚魔法陣に組み込まれていたからだけど、書けるのは……これも異世界召喚の恩恵か、魔術神の加護の影響?


 それにしてもこの魔導書、マルお勧めだけあっておかしなレベルで凄過ぎる。天変地異を起こす魔法って、使いたいと思わんわっ!

 まあ、知っているのと知らないのでは心構え(?)が違うから、しっかり熟読していく。使わないけどね。……多分? うん、多分。


『コレは必見! 究極の進化魔法』等という訳の分からないサブタイトルの付いた章を読み終わり、少し休憩しようとしおりを挟む。

 顔を上げて背伸びをしようとした時、あたしの直ぐ傍にネスが居るのに気付いた。しかも、なぜか獣化した姿でだらんと寝そべっている。ほら、良くペットなんかが飼い主の傍で気を抜いてでろ~んって横になっている、あんな感じ。

 手を伸ばせば届く距離にネスの全身。頭はあたしの方を向き微睡んでいる様だ。


 あー……いつの間に来たんだろう?

 というか、なぜ獣化している? 日向ぼっこ? ……ここ、人工――というか魔法の太陽なんだけど、それでも日向ぼっこってあり? まあ良いけど。

 ああ、でもそう言えば、ネスのシャンプーとブラッシングをしたいと思ってたんだった。んー……。


 ネスを見てみる。穏やかな寝顔を見せるネスを起こしてシャンプーとかするのも、ねぇ……。どうしよう?

 取り敢えず、もふもふ――というかなでなで? ――だけしておこう。


 手を伸ばし、耳の裏のもふ毛部分をこしょこしょ撫でる。

 すると、ネスの目が薄っすら開き、ゴロゴロと喉を鳴らし始めた。って、おい! 狸寝入りっ!?

 でも可愛いから許す。これって撫でるのオッケ―な様だから、このまま続けよう――って違う違う。起きてるなら、シャンプーとブラッシング!

 あたしはネスの顔を覗き込む。


「ねえネス。ちょーっとシャンプーとブラッシング、してもいい?」


 あたしの言葉に、ネスは灰黄色の瞳を不思議そうに瞬かせながらもこくんと頷いた。

 ちなみに、ネスは獣化すると話せない。元の世界のユキヒョウが発声器官を持たないのと同じ様にこの世界のユキヒョウも発声器官を持たないらしく、獣化すると発声器官が機能しなくなる様だ。なにその不思議生物。

 まあそんな訳で、喉をゴロゴロ鳴らす、猫の様な鳴き声(?)を出す、低い唸り声を上げるのがせいぜいの為、会話は不可能。最も、こちらの言葉は分かっているので、頷いたりして意思の疎通は図れる。


 さて! 許可を貰ったから、まずはブラッシング! その次、シャンプー! で、乾かしたらまたブラッシング!!


 ネスが寝転がっても草等が付かないよう、防水シート――なにかあった時用に作っておいた――を敷き、ネスにはその上に移動してもらう。

 ちょっと大きいブラシ――トキの中にあった――を使ってネスの全身を丁寧にブラッシング。気持ちいいのか、ネスが目を細めてゴロゴロと鳴いている。

 ブラッシングしながら考えなければいけない問題は……猫用シャンプーがないという事。ネスの場合、獣人だから人間用で大丈夫か?

 ――あれ? トキの中に獣人・ネコ科用シャンプーが!? これ誰が作ったの!? まあ、誰でもいい。うよくやった! そして……神の過保護、この時ばかりはグッジョブ!!

 えーと……色々な種類がある様だけど、ネスも鼻はいいから、無香タイプか微香タイプがいいよね。んー……無香タイプにしておこう。


「ネス。ぬるま湯を掛けても平気?」


 問い掛けると頷いた。大丈夫な様だ。

 魔法でぬるま湯を――確か36度くらいが良い筈だから、それをイメージして――シャワーの様に出しつつネスの全身を濡らしていく。ただし、耳や鼻の中とかに水が入らない様に慎重にやらねば。

 あ、こら! くすぐったいからって尻尾だけ逃げるな!

 思わず尻尾をガシッと掴んで濡らす。尻尾、ぷるぷるしてる。


 そうやって、150センチ位あるネスの全身をなんとか濡らし、手に取ったシャンプーを泡立てる。


「今度は尻尾、逃げないでよ」


 あたしがそう声を掛けると、ネスがちょっとだけシュンとする。


「怒っている訳じゃないから安心して」


 ネスの顔を覗き込みながら言うと、ネスがふにゃっと笑み崩れ頷いた。うっわ、かわゆす。なんかもう女として、ネスに負けまくっている気がするわー。獣化ネスにも負けるあたしって……。

 微妙な敗北感を覚えながら、マッサージする様にシャンプーしていく。普通の猫の何十倍の大きさだから、結構大変ではある、が。

 何と言うか、漫画の様にぶくぶくと泡立つのが面白い。……猫用シャンプーってこんなに泡立つんだっけ?

 疑問を覚えつつも、目とか口とか鼻とか耳には注意。尻尾は……やっぱりぷるぷるしているが何とか逃げるのだけは我慢している様だ。


 ――後でいっぱい褒めてあげよう。


 何かあたしってばネスに甘いかも? とか思いつつ。


「ネス。仰向けになって」


 声を掛ければネスがごろんとお腹を見せる。

 うん。意思疎通が可能な状態でのシャンプーって楽だね……。

 そんな事を思いつつ、やっぱりマッサージするかの様にシャンプーする。……あれ? 何かネスの体温上がった?

 顔を見ると、ちょっと赤い??


「ネス。何かあった?」


 あたしが声を掛けると、ネスは慌てた様に首を振る。器用だな。


「何もない? ホント? 大丈夫?」


 続けざまに聞くと、ネスは何度もうんうんと頷き、でろ~んと体を投げ出した。何なの、この投げやりっぽい感じは?

 うーん……本人が何でもないって言うならそれで良いか。でも、顔が赤いのは間違いないと思うから、風でも引いていたら大変だ。手早く済ませよう。


 肉球ぷにぷにを堪能したい誘惑を必死に退け、あたしは手早くネスの全身を洗う。

 えーと、洗い残しは……うん、ない。大丈夫だ。


「ネース。今度はシャンプーを洗い流すから、目を閉じてねー」


 素直に目を閉じたネスに再びぬるま湯を掛けつつ、丁寧にシャンプーを落としていく。

 ネスに立ってもらって足元のお湯を全部洗い流し、そこに仰向けになってもらい、こちらも丁寧に洗い流す。

 えーと、毛がもふっとしている部分はシャンプーが残ってる可能性があるから、もう一度チェック。――うん、大丈夫だ。


「じゃあ、今度は体を拭くからね~」


 防水シートを取り外し、その場に残っている水分を一気に蒸発させて元の状態に戻す。

 今度はネスにその場に立ってもらい、大きなバスタオルで水気を丁寧に拭き取っていく。

 うーん、あっという間にタオルが濡れるなぁ……。


「ネス。ドライヤーも一緒に遣って良い?」


 尋ねると、首を傾げつつ頷く。何と言うか……ネスって本当に拒否らないね……大丈夫か?

 心配になりつつ温風を魔法で出し、タオルで拭くのに合わせて全身を乾かしていく。

 おおっ! だんだんともふもふが復活していく!!

 擽ったい所為で逃げる尻尾を最後に手早く乾かし……よし! シャンプー終了!!


 でも、ここで手を緩めちゃいけない。

 折角、もふもふが復活したんだから、もう一度ブラッシングして、ふっかふかになってもらおう!


 ネスのもふもふが絡まっていないか細心の注意を払いつつ、あたしは新しいブラシを出して丁寧に梳いていく。

 やっぱりブラッシングは気持ち良いのか、ネスは目を細めてゴロゴロ。尻尾はゆらゆら。


 ――うん! ブラッシング終了!

 寝そべっているネスの毛はピッカピカ。余は満足じゃーーーっ!!


 ふっかふかになったネスを撫でる。う~ん。匂いのないタイプのシャンプーな筈なのに、すっごく良い匂いがする。

 気になって、ネスの背に圧し掛かる様にしてモフる。あーこれって、お日様の匂いに似ている。気持ち良い~。

 ネスの首の毛に顔を埋めると、ネスがびっくりした様に一瞬固まったが、首回りを撫でると落ち着いたのが頭を下げて寝る態勢に入った。

 あーうん。一仕事終えた後だから、本物の太陽じゃないけど、なーんか気持ち良い。


 あたしはもふもふの誘惑に抗えず、ネスに背中を預けてお昼寝タイムに突入するのだった。




 ――目が覚めた時、人の姿に戻ったネスに抱っこされていてびっくりしたのは余談である。

漸く、ブラッシングの野望を達成です!

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