表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/21

8.ごめん、思い出したくないから

「ヴェル、改めて私が今してる修行について教えてよ。流石に自分が何をしてるのかも理解しないで修行するっていうのは、変な気分だからさ」


フォールは改めてわかりやすい説明を師匠に求める。


「通常の速度よりも約102倍で動くことにより、普段ではかかることのない負荷が体にかかり、目だけでなく身体も同時に鍛えている。それに加え、あらゆる地形を行くことによりさらに鍛えられる。結果、使ったエネルギー量や運動量等の計算により、3日は動き続けた計算になる。

こんなものでよいか?」

「なるほど、ありがとう。今までで1番わかりやすい説明だったかも...」

「そうか。

して、飲食はどうするのだ?オレは食わなくても問題ないが、お前はそうはいくまい」

「んー、そうだね...私、料理したことないからな...でもな...」


腕を組んで首を傾け悩むフォールなのだが、あまりにも隙がありすぎた。これでは最強種の名が泣くというものだ。


「フォール、どんな体勢であっても隙を作らない、ということを意識しておくがいい」

「ん、あ...はい、気をつけます」


そこからのフォールは、同じように腕を組んで首を傾けていたのだが、心構え一つでフォールの才能が何をすればいいのかわかっているかのように隙がほとんどない状態になった。

まだ隙があるところにはあるが、これは経験の問題なのだとヴェルは考え、今はその点については指摘しないことにした。


「その才能は最強種でなくとも貴重な才能だ。お前は強くなる。ともすれば、最強種の歴史で最も強くなることもありえるだろう」

「いや、流石にそこまでは...いやでも、歴代最強と噂される魔王が師匠ならありえるか...?」

「そこはオレではなく、お前自身の問題であろう。お前はこのまま努力をし続ければ至れるが、現実はそう甘いものではない」


「まぁ、だろうね。

でさ、思いついたんだけど、私が獲物を狩って君が料理するっていうのはどうかな?

それなら私の経験を積む一環になるんじゃないかって思ってるんだけど。

君は、知っていることよりも、見て聞いたことのあるほうが大事なことだと言ったからね。それを考えると、経験が大事なんじゃないかと考えた上でのことなんだけど」


「オレは構わんが、ならば獲物はどうやって決めるのだ?」

「それこそ目の力を使って、かな」

「良いのではないか。オレはそう思うぞ」

「そう?やった!褒められた!」

「喜ぶのもよいが、早々に行かねばまずいのではないか」

「おっと、そうだね。いってくるよ」

「一つ助言をしてやろう。見るのではなく、視るのだ───」


「んー...まずはありがとう...」


フォールはあまり納得している様子ではなかったが、そう言い残して森の奥へ走っていった。修行の成果か、本人は軽く走っているつもりでも、実際には結構な速度で走っている。


そして、フォールはとある巨大な洞窟を見つける。洞窟は暗くはあったが、目を鍛えたおかげで昼間の外のように、とまではいかないが戦闘をするとしても困るような暗さには見えていない。

洞窟の奥にそいつはいた。その体の大きさが強さを物語っている。その青い瞳の中にある縦に長い瞳孔の鋭い視線が強さを物語っている。今フォールの目の前には巨大な、濃い紫色の分厚い鱗をもつ大蛇オロチがとぐろを巻いてフォールを見つめている。そして時折チロチロと舌を出しては、しまうというの繰り返しをしている。

その大蛇は体の縦の大きさだけで2、3mはある。それがとぐろを巻いて上からこちらを、フォールを観察するように観ている。


最早もうフォールの頭に、食材にするという考えは一切ない。あるのはただこいつを殺す、ということだけだ。逃げるなんて選択肢は端からない。

ならばどう戦うか、フォールに出来ることは限られている。武器はない、力はあっても通じない可能性が高い。一か八か力任せに殴ってみるなどやってみたとしても、おそらくあの分厚い鱗に阻まれる。

そこでまずはフォールも、おなじく相手を監察することにした。


全長はざっくり100mほどあると言っても間違いではないであろう。また、この巨躯ともなれば動かすには相当の力が必要になる。よってこの大蛇は、鱗の壁だけでなく、筋肉の壁をも持っている可能性がある。

フォールは大事なことを、目の前の情報の中から判断する。こいつには毒が、あるのかないのか。目の前の情報から判断したフォールの予想は「ない」だ。正確には、この大蛇の体内で作られる毒はない、という予想だ。


あまり不用意に近づくべきでもないが、フォールには残念ながら武器がない。ならば他の手段に頼りたいが、なにをすればいいのか。近づいて捕まれば、まずその力でフォールなら殺されるだろう。


『一つ助言をしてやろう。見るのではなく、視るのだ。

形ある物はいつかは劣化し、壊れる。

そして、視えるならばそれは形がある、ということだ。

よって、視ることができるのなら、傷をつけることもできる。壊すこともできるだろう』


ヴェルの助言が頭から離れない。あのヴェルが無駄なことを教えるはずがない。

まずは見ることをやめて、視ることをしてみる。


そもそもなにを視ればいいのかわからないが、それでも何かを、普段は見えていないような何かを視ることにした。


視えた...淡い紫色の発光体だ。大蛇の体のなかにそれが視える。

次だ、視えたのだから、これがなんであったとしても傷をつけられる。壊すこともできる。

なにをすればいいのか、なんて最初からわかっていない。だから自分がなにをしたのかもわかっていない。

発光体が一瞬光を失った。まさに一瞬だった。

だが、大蛇はその一瞬だけでフォールを獲物ではなく、敵として認識した。


『小娘、貴様なにをした?』


ドスの効いた低い女性のような声で聞いてくる。フォールは正直驚いたが、その同様は表にはださない。長く生きているのだろうから、そういうこともあるのだろうと勝手に結論を出す。


「悪いけど、私もなにをしたのかはわかってない」

『...折角の機会だ。最強種を腹にいれるのも悪くない』


そう言うと同時に、大蛇はフォールに突進してくる。

フォールがそれを洞窟の広さを利用し避けると、大蛇はそのまま外へ向かう。100m近い巨体の割に素早い。大仰に避けてしまったせいか、もう既に尻尾しか見えない。

すぐさま大蛇を追いかけた。外に出ると、大蛇が首をもたげてフォールを上から見ている。だが、先ほどのようにフォールを監察している目ではない。明確に敵意と殺意をもってしてフォールを見ている。


『小娘、貴様はどの最強種だ?目を使っているところから巨人族ジャイアントかとも思ったが使い方が違う。貴様はどの最強種だ?』

「次は私の番じゃないかな。あなたはどうやってそんなに強くなったの?」

『簡単な話だ。この森に入ったが最後、体がこの森から出ることはないと覚悟したほうがいい。だからこそ、この場所から出られなくとも生き続けるには強くなるしかない。この森で生きていこうと思ったのなら、嫌でも強くなるだろうな。

で、貴様はどの最強種だ?』

「キタノタミ」

『ほぅ』


大蛇は警戒しながらも、興味ありげに目を僅かに細めた。


「あなたはここにどれくらいの時間いるの?」

『さぁな。もう二度と出ることはないと思っているからな、数えるだけ無駄だとすぐにやめた。

貴様は北の世界の者なのか?』

「そうだよ。悪いけど、これにはこれ以上答えられない。

最後かな、あなたの名前は?」

『名か...』

1週間ごとに更新しようと思ってもなかなかできないんです、ごめんなさい...今回ちょっと短めですけど、日曜に改めて9.更新しようと考えているので楽しみにしててください!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ