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7.弱くても、最強種同士なら大方大地が揺らぎます

フォールたちの旅は、最強種を鍛えるには軽いものに見えたのかもしれない。野を越え山を越え、川を渡り崖を登った。だが、フォール本人としてはとてつもなく疲れていた。


まず最初に、ヴェルに「目を使えるようになれ」と言われた。

曰く、キタノタミは別の歴史をたどっていれば、ほとんどの場合が目の力を使う種属になっていたらしい。今もそれに近いが、もっと直接的な形になっていたらしい。

そこで、まずは「最強種だと知られた時点で、恥をかかないくらいには扱えるようになれ」と言われた。


最初は、「見る」という力を強くすることになった。圧倒的に遠いところを見る千里眼のようなものであったり、物の本質を見抜く鑑識眼に近いものだったりする。

フォールには才能があった。師が良いこともあって、さらに成長は速くなった。

ここまではフォールもよかった、異論も何もなかった。

だが問題はすぐさま発覚した。ヴェルが、スパルタと呼ばれる者の類ではないのだろうが、スパルタなところだった。

フォールが目を酷使し、疲れが見えてくると、ヴェルは果物を渡してくる。そして、渡してくる果物はほぼ毎回違うものだった。同じ物が連続することはなかった。実際、どれも美味しかった。甘いものから、酸っぱいもの、辛みのあるものもあったが、どれも美味しかった。

そして、こちらの好みを勝手に分析し、何回かに1回はフォールの特に好きな味の物を渡してくる。

これには最初は、フォールも優しいところがあるんじゃないかと思っていた。だが違った。むしろ、逆だ。


その果物をひと口食べただけでも、疲れの大半が嘘のようになくなった。それぞれ1個全て食べてしまえば、元のように元気になる。それは、多くの者にとっての長所であり、フォールにとっての短所だった。


疲れがなくなることにより、また酷使が始まる!!目の力を使いに使いまくり、成長と言うか、レベルアップに近いものをする。

そして疲れてくれば、また果物を渡してくる。疲れがなくなる。

疲れがなくなることにより、また酷使が始まる!!目の力を使いに使いまくり、レベルアップする。


なんと効率がいいのだろうか!

と思いながらも、精神的疲労は癒えないらしい。


そんは状態なら果物を食べなければいいだろう、と何も知らない者は言うだろう。

フォールは幽閉されていた過去を持っている。三食しっかり食べれない日が当たり前だった。二食も食べれたら幸運だった。1日に一食以上出来ることの方が少なかった。


だからこそ、いつ目の前から食べ物がなくなるのか怖くて、食べずにはいられない。食べずに後悔したくないと身体も、心も、記憶も訴えてくる。食べていられるだけまだましな上に、成長も同時にしているのだと考えると一石二鳥だ。よって、さらに拒否しづらくなる。


そんなことを確実に知っているでろう師に、まだ旅立って数時間もしていないはずなのだが嫌気がさしてきた。だが、ここまでの師は何度人生を送っても、絶対に2度と見つからないのも事実である。結局のところヴェルについて行くフォールだった。

また果物を渡してくる。思わず食べてしまう。

それにあわせてヴェルは言う。


「流石にそろそろ休むがいい」

「ほんと!やった!」

「睡眠もしっかりとっておけ、3日は寝ていない計算だ」

「え?何言ってるの?たしかに日が沈み始めたみたいだけどさ、まだ、数時間しか経ってないはずじゃ?」

「実際にはそうであろうな。だが、お前は数十秒前まで平均して、普段よりも102.6389・・・倍(この数字はこと細かに言った設定でお願いします)の速度で動いていたのだから、疲労は溜まっている。お前自身は気づいていなくとも、身体がそう言っておる」

「へ、へー...なら、私たち今の時点でどれくらい歩いて来たの?」

「大した距離ではない。あそこに門が見えるだろう」


フォールは、ヴェルが向けた視線の先をたどって、門を見つけた。魔王が治める土地への入口の門だ。その門が特に何か特異なことをするまでもなく、はっきりと見えた。元々その門が大きいと言うのもあるのだろうが、ヴェルの話から考えると、3日間歩き続けた計算という話のはずなのにおかしい。


「何をしたの?」

「特にどうということはしていない。ただ、あの門の周りを回り続けるような道を選んでいるにすぎない」

「えーと、つまり、私たちはあの門のまわりを、数時間ずーっと回ってたってこと?」

「そういうことになる」

「そんなことしてたら、世界の果てなんて見に行けるはずがないじゃんっ!!!」


フォールの言い分はごもっともだ、怒る理由もわかる。怒ると言っても、怒鳴り散らすこと言っているのではない。


「では逆に問うが、お前はそんな実力で他の者に殺されないとでも思っておるのか?」

「そ、それは、その...運動神経とか...腕力とか...」

「そんな者が旅をすれども、そのような旅は長く続かない。だからこそ早々にお前は成長しなければならない。お前が求める物のためにも。

だが、投げ出すのならば止めはしない」


ヴェルの声は相変わらず、感情を感じるような上下がほとんどない。かろうじて、不自然でない程度にしか上下がない。

それに対して、フォールは言葉につまる。


最強種をどんな手段であれ、殺すことができれば次に産まれるその種属の者から最強種として産まれてくる。


それを考えると、フォールは恰好の獲物だ。最強種に挑む者は馬鹿か、永年鍛えてその者の限界に近い力を身につけた者ばかりだ。力と言っても、この場合能力という意味になる。罠にはめる力や、連携、数による力など様々だ。

馬鹿なら勝機しかないが、力がある者なら確実に、絶対にフォールだけでは殺される。


ヴェルはいても、手をしてくれることはないだろうとは思っている。力を欲してもよこさない者が、力をかしてくれるなんて全く考えられなかった。


「うん、ごめん。このままでいい」


フォールはシードを掴む。

こういうときにも使える物だから本当に必要なものだと思っている。シードがなければ諦めていたかもしれない。



僅かな思いだった。それをもらったことがほとんどないだけに思ったことだが、別に期待したわけじゃなかった。ヴェルでは無理だろうとも考えていた。



「そうか。投げ出さないこと、それも一つの成長の糧だ」



褒めてほしかった。誰かに、今の自分を認めてほしかった。



遠回しな褒め方ではあったが、フォールにとってはとてつもなく嬉しかった。それこそ、疲れがとぶ程には。最早とんでいく疲れもないのだが。


「ところで、この周囲にあんな連なった山も崖も川もないよね?」


門の周囲は深い森ではあるがほぼ平地だ。連なった山は見えないことはないがそれなりに距離がある。


「ないな」

「どういう仕組みで、あんな険しい道が出来てたの?」

「簡単な話だ。オレたちが進む方向の土地を入れ替えていたにすぎない」

「ごめん、これだけってわけじゃないけど、全っ然わかんない」

「仕方あるまい」


ヴェルが右手を前へ出す。

フォールはその瞬間から、森に違和感を感じ始めた。

目を凝らして、注意しながら見なければわからないが、じわりじわりとゆっくりと、だがしかし確実に森が砂漠に変わっていった。

最終的に辺り一帯の景色が砂漠になった。その上で門は健在だ。何もない分、しっかり見えるようになった。


「...」


その光景を前に、フォールは言葉を失った。草木が生い茂る森から、生命の営みというものを一切感じない砂漠に変わった。緑の「み」の字もない。


地形が変わるということは、そう珍しい話でもないことはフォールも知っている。大地を揺るがす力と力がぶつかりあって地形が変わるなどの現象だ。それでも、地割れが起きたり、平地だったところに少しの高低差が出来る程度のものだ。

それがどうであろう、なんの前触れもなく森が砂漠に変わった。草木が枯れたわけじゃない。燃えたわけじゃない。変化した。


「これで理解したか?」

「うん、理解したよ。師匠が想像以上の化け物だって理解したよ」

「化け物の師匠をもつなら、弟子にも化け物になってもらわねば師匠が報われないとは思わないか?」

「私の師匠はそれをしてくれるんでしょ?」

「どうであろうな、弟子の努力次第であろうな」

「はーい、頑張りますよ」


そして、いつ変わったのか、いつ戻したのか、砂漠は森に変わっていた。

少し間が空いてしまいました、すいません。正月とか色々忙しいってことで察してください!

あと、門については...デザイン考えずにいたらいつの間にか話にでてきて、その話投稿しちゃった後だし、どうしようかと思って、ここは読者の皆様方の想像に任せようかな...とか、そんなこと考えてるわけじゃないんだからねっ!!(ツンデレ風)1/6

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