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6.それならば、今の君は本物と呼べる者なのか?

南に関しては結構読み返していただくことによって、納得して欲しいところが多々ありますので、最初はなかなか分からないことも多かったと思います。すいません。あと、こっちはこっちでやっと旅に出ます。

「さて、粗方説明は終わりだ。まだ話していないこともあるが、それはいづれということだ。

旅の支度をしてくるがいい。オレはオレでやることをやる」

「んー、私はこれでいいや。別に何か持っていきたい物なんてないし、持ってる物も少ないし」

「そうか...ならば暫し待っていろ、やることをやってくる」

「それは、着いていったらだめ?」

「構わぬ、好きにするがよい」

「ありがとう」


ヴェルは椅子から立ち上がりフォールに背を向けて壁に向かって歩いて行った。フォールも椅子から立ち上がり、ヴェルに着いて行く。

やがて壁の目の前で二人は立ち止まる。そして、ヴェルが壁に触れると、触れた面が奥へ自動で収納され道が現れる。その道はそう長いものではなかった。

道を抜けると外に出た。そして、そこには多くの墓があった。それも10や20ではなくもっと多くの。


「107ある」

「これは、どんな方たちの?」

「魔王と、魔王になり損ねて獣になった先達の墓だ」

「獣の方が倍近くいたんだね」

「ああ、負の感情を制御しきれずにいる方たちのほうが多かった」

「もしかしてキミは、この先輩たちを尊敬してる?」

「そうだ。オレより程度は低かったのであろうが、それでも同じ苦しみに耐え続けた方たちだ」

「そっ、か...」


ヴェルは右手を前へ、墓に向けるように出す。それと同時に106の墓に花束が供えられる。一番新しいと思われる墓にはヴェル自身の手で花束が供えられた。


「その方は?」


知らず知らずの内に、フォールはその疑問を口にしていた。


「先代の墓だ。初代もそうだが、この方のこともほとんどわからない。オレが知らないことだから期待してしまう。死した者に期待するなど、馬鹿げておるがな」


そのときのヴェルは、いろんな感情が混ざったような表情をしているような気がした。


そして、フォールは他にも気づいたことがあった。ヴェルの表情が変わっていなくとも、先ほどのように何となく表情に違いがあるような気がしたり、感情を隠したように感じたりしていたわけが。

フォールがそういった場面に出くわしたときには頭の中で声がしていた。それまで自覚がなかったが、3度目ともなれば別だった。実際3度目なのかも怪しいが。その声は聞いたことも、会ったこともないはずの他人の声だ。しかし、他人の声と片付けるには、あまりにも親近感のような物を感じた。

そして、今になって思えばヴェルがいたあの暗い部屋に来たときも、部屋に至るための手順を知らないはずなのに知っていた。


「それでも、いいんじゃないかな」


フォールは考えても無駄だと頭の隅へ追いやった。

ヴェルは墓が大量にあるこの景色を、全体的にもう一度眺めて今度は墓に背を向け、二人はもとの隠し通路へと戻って行った。

部屋に戻ってからヴェルはフォールに聞いた。


「何か見たい物はないか?それを優先して旅をすすめよう」

「天使っていうのは存在するの?」

「存在してはいる」

「じゃー、天使が見てみたいかな」

「他の物なら大方聞くことはなかったであろうが、天使が見たいという理由はなんだ?」

「えー、別に、可愛いってイメージがあるから見てみたいだけだけど」

「ならばやめておくがいい。そのイメージは確実に崩れる。天使が死者を死の世界に連れていくだけの、可愛い奴らならばオレは止めぬ」

「どういう、こと?」

「言ってもよいのか?実際に会うまでは確証がない戯れ言程度にしか思えぬかもしれぬが、会ったときにオレが言ったこと全てに納得がいってしまうぞ?それも最悪の面ばかりが」

「うん...いいよ、説明して」

「そうか。奴らのことを簡単に言うならば、自分の担当する魂が死ぬのを、今か今かと嬉嬉として待っている連中だ。そして、ときには自分が担当する魂を騙して殺す。

担当する魂と言うのは、魂が肉体を持ったときに、どの天使がその魂を死の世界に運ぶのかを決め、そのときその天使からみたその魂を担当する魂と呼ぶ」

「天使には、運べば運ぶだけ何かあるの?」

「ああ、天使としての地位が上がる。ゆえに奴らは嬉嬉として待っている」

「なかなか酷い話を聞いてしまった」


「天使に会っても絶対に、天使を信じるな。奴らは騙すということにおいては相当の腕を持つ。加えて、万人に好かれるような、可愛いと言われる見た目をしているだけに、より騙されやすくなる」

「わかった、そのときは気をつけるよ。

でも、それなら悪魔なんて比べ物にならないくらい酷いんじゃ?」

「そのようなことはない。むしろ、悪魔の言葉は信用できる。奴らは騙すことは少ない。奴らは願いをちゃんと叶えてくれる。その代償や、やり方はともかくとしての話だが。結局、悪魔なら信用してもいいが、天使は信用するな。だが、出来ればどちらにも関わるな」

「が、頑張る」


「して、他に何か希望はないのか?」

「そうなると、世界の果てでも見に行きたいな」

「それならばよい。世界の果てをまずは目的地にしようではないか」

「うん。でも、南の世界の土地ってどういう形なの?」

「それを言ってしまったらつまらないであろう。

大地は平地であったり、山で囲まれていたり、海で囲まれているやもしれぬ。

あるいは、大地を巨大な象が支え、その象を更に巨大な亀が支え、それを更に更に巨大な蛇が支えているやもしれない」

「自分の目で見てこいってことだね」

「ああ、そうだ。世界の果てともなれば、ありとあらゆることにめぐりあえるだろう。存分に考え悩むがいいさ、悔いが残らぬようにな」

「そうだねー、できる限り頑張るよ」

「ああ。では、出るか」

「うん!」


ヴェルが再び2回手をたたくと、波紋が広がるように景色が変わっていき、元々の暗くあちこち壊れた場所に戻る。だが、今度はヴェルが松明を持っているので見える範囲も広い。そして、鉄のような臭いはしなくなっていた。


ヴェルが松明を空中に置くような仕草をして、いつから持っていたのか、その両手にはそれぞれ剣が握られていた。その剣たちは剣先から柄の端まで、白と黒でそれぞれ1色に染まっている。左手には白の剣が、右手には黒の剣が握られている状態だ。


そして、ヴェルが左手の白の剣で空中を切ると、そこにヴェルと全く同じ姿形をした者が現れる。その纏う気配も、何もかもが同じであった。

その者にヴェルは声をかける。ヴェルがその者と立ち位置を変えていなかったならばヴェルと言えるが、その判断はフォールにはつかなかった。


「任せた」

「ああ、行って来い」


やはり声も同じで、フォールは早々にこの空間から抜け出したかった。

その気分の悪さが伝わってしまったのか、そうでないのか、恐らく伝わったのだろうが、ヴェルはフォールが最初に入ってきた入り口を目指して歩いて行った。

フォールはそれについて行こうとしたが、部屋に残るヴェルに何かしていかなければならない気がした。僅かだが、悩んだ末に、軽く手を振って、すぐに入り口に向かったほうのヴェルを追いかけた。

その後の部屋に残ったヴェルのことをフォールは知らない。



外に出た。後ろには廃城がある。この廃城をある手順で進めばヴェルがいた部屋に辿り着く仕組みになっている。


「先のあの剣が、魔王となった者に与えられる剣だ。白い剣が創造の剣、黒い剣が破壊の剣なのだが、結局説明するならば名前の通りだ。ただ、それぞれ概念すらも作り、破壊してしまう程に強い剣だ。強すぎるゆえに使い道が少ない」

「じゃー、さっきのヴェルに似たあのヒトは?」

「あいつはオレとほぼ同じモノだ。オレがここでしていた、お前らを守り、導くことをするオレだ」

「それ、なら...いや、ごめん、何でもない」

「そうか、お前がいいなら、オレはそれでよい」

「うん...」



それからヴェルは歩き出し、フォールもヴェルについて行った。やがて巨大な、いかにも禍々しいデザインの門の目の前までたどり着いた。それをヴェルは右手を前に出すだけで、手も使わず軽々と開けてしまった。

そして、二人はその門をくぐり、魔王が治める土地の外へ出る。


「旅に出るお前に祝辞を送ってやろう」


そう言ってヴェルはフードをとった。その顔はフォールと同じくらいの年の青少年に思えた。髪は黒く、ボサボサで手入れをしているというような感じが伝わって来なかった。そして、少々長かった。だが、そんな中でも目は、金色の目だけはしっかり鋭い目をしていた。


「これか?祝辞の前にこれだけでもなんとかするとしよう」


ヴェルは髪を触りながら言った。そして、髪が燃える。先端から燃えるのではなく、中途半端なところで燃えていた。火は上ではなく下にしかいかず、燃えた部分は限られていた。燃えて切れ、地面に落ちた髪を見ていたのも僅かな時間だったはずなのに、ヴェルの髪はボサボサ感は否めないが、それでも最初に比べたら断然ましなものになっていた。

これには幽閉されていたとはいえ、女として羨ましいと思わざるを得なかった。


「さて、改めて祝辞だ。

おめでとう!フォール・ザンディ!最早お前には、オレの見えているシナリオは用をなさなくなった。そんなお前だからこそ見える物もあろう。悩み考えろ、経験し、多くを得て、強くあれ」

「うん、ありがとう」


フォールは頷きながら返した。


「それはそうと、私ならこの門こっちからくぐれるかな?」

「無理だな」


この魔王が治める土地に入るための門は、魔王に挑む資格があるかどうかを問う門になっている。魔王が決めた一定以上の強さを持つものなら通ることができるが、そうでない者は何度通ってもこの場所に戻るようになっている。


「それに、今回オレは条件をつけた。その条件を満たせば実力がなくともオレは悪の象徴として相手をする。


星を集め、星座を完成させろ


それが条件だ」

「星?どの星?」

「まぁ、感情に関わるものだ。それを集めて星座を完成させたなら、オレは初めて悪の象徴としてお前に向き合おう」


フォールは、まだ悪の象徴としては向き合ってもらえていないことに怒るまではしないが、当然だろうと残念には思っていた。

やっと旅に出ました。あと、作者がインフルエンザAにかかりましたもので熱を出し、こうして更新が遅くなりました。これもこれですいません。南はこれが今年最後かなと思いますので、良いお年を!12/26 門のデザインについてはあえて何も表現しませんでした。

※1/31本文修正しました。

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