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5.普段は感情に近いものを感じないので

これが最後の説明回のはずです。どうかお楽しみください!

「君は、東の世界のヒトたちが嫌いなの?」

「そう見えておるか?」

「うん、そうだね。私からみた印象では、君は何かに対して好印象でも、悪印象でも執着なさそうなのに、東の世界のヒトには悪印象な執着を持ってる感じかな」

「そうか、そう見えるか」

「東の世界のヒトに関して何かあって、恨みを持ってるように見えるけど、実際のところどうなの?」

「逆だ。そうではない」

「どゆこと?」

「オレがあっちに手を出した。それも、とてつもないほどのことをした。ゆえにこそオレは奴らに恨まれなければならない。恨まれるような存在でなければならない」

「そう、大変だね」


他の者ならもっと様々な対応もあろうものたが、このフォールの返事は簡素なものだった。


「この力があるのだから大変なことなど何もない」

「んー、暇そう」

「暇そうなどと簡単な言葉では片付けられない程につまらぬぞ。シナリオが全部とは言わないまでも大半は読める。先がわかっている人生、本当につまらぬ人生よ」

「ふーん、まぁ、そうなると執着も興味も強くなるのか...」

「そういうことだ。して、説明に戻ってもよいか?」

「うん、ごめん、お願い」

「次は西の世界だ。あそこについては『パラレルワールド』の塊、としか説明しようがないな。

あれはシナリオがこれから先のシナリオを決めるための実験場のようなところだ。どうしたら世界が壊れずにすむのか検証している。時間の流れは先に説明したように東の世界と同じだ。どの並行世界においても時間は同じになっている」

「やっぱり、西の世界ってよくわかんないな。たしか、『生命が存在しない』みたいなことも聞いたことあったような、なかったような...?」

「その点については曖昧だな。生命をどういう基準で生命とするのかによって変わる。それも天と地ほどの差ができかねないほどにな。

西の世界は、ヒト属でなかった者がヒト属になるときには、通らなければならないことになっているからな。それは西の世界の者でないが、身体があるわけでもない」

「そんなこともあるんだね」

「そう事例も多いわけではないからな。


次に進むが、次はここ南の世界だ。呼ばれ方は『戦場』『願いが叶う世界』『最強種の世界』と様々呼ばれている。


四方界においては最も世界のエネルギーがある世界だ。この南の世界は、四方界において最もヒト属が死ぬ。それだけにそこからでる恨みの、憤怒の量は凄まじい。

そして、ヒト属の数も四方界において二番目に多い。一番は西の世界だが、純粋にヒト属の数を数えたときの数字でしかない。

ヒト属が多ければそれだけエネルギーは集まる。他の四方界のエネルギーの2割から4割はこの南の世界のエネルギーを使っている。

エネルギー量が四方界において最も多い故に、時間の流れもはやい。


南の世界には条件付きで、かつ特定の物だけになるが、それでも誰かの願いを叶えたり、力をかすことができる者が多い。故に、四方界ではこの南の世界ほど願いが実現する可能性が高い世界はない。実現するかは本人の努力次第ではあるがな。


最強種は南の世界ばかりにいるようなイメージを持つ者も多い。だが、実際にはフォールを含めて東の世界や北の世界にもいる。ただ、ほとんどの最強種は南の世界で産まれ南の世界で死ぬ。この南の世界に最強種が多い理由については予想はついている。だが、確証のあるものと、ただの予想を混同するのはよそう。


そして、今オレが知りうる限りの最強種は全員南の世界にいる。南の世界出身だが、他の世界にいた最強種もいる。東の世界で産まれた最強種もいる。その最強種たちの、おそらく全員が南の世界にいるのだから、そのうち他の最強種と会うこともあろう。そのとき最強種については説明しよう」

「なら今の最強種って、どの種属がなってるの?」

「キタノタミ、ドラゴン、ジャイアント、ビースト、ヴァンパイア。そして、ヒューマン」

「多くない?それに、ヒトって...」

「そうだな、オレの知りうる限りここまで多いことはなかった。

説明したであろう。東の世界で産まれるヒト属はヒトしかいない。その上、東の世界にはヒューマン以外の最強種5種に関係する種属も産まれない。そして、東の世界で産まれた最強種もいると」

「なる、ほど...」

「ヒトは弱い。とてつもなく弱い。だが、それはキタノタミも同じこと。お前は強い。それはお前が最強種だからだ。最強種でないキタノタミはヒトより弱い」

「そっかー...ヒトと会ったことはそれなりにあるけど、同胞と会ったことはなかったからなー...」


フォールは軽く落ち込んでいるような様子だった...のだが、すぐにたちなおる。


「まぁ、いいか。どうせ大して関係あるような話でもないし」

「お前がそう思うならそれでいいのだろう」

「うん、これでいい」

「ならば次の説明にいこう。


これも最強種に関係のある話なのだが、なぜ四方界は北、東、西、南と名前が割り当てられているのかという話だ」

「シナリオを中心に東西南北で並んでるから」

「外れてはいない。だが、足りぬ。四方界は、西の世界のパラレルワールド一つ一つを含めて全てが同じ方角を指す瞬間が存在する。このときにシナリオを中心として北、東、西、南に並ぶ。

そして、その瞬間は意図的に作られる。

また、その瞬間が訪れたときに最強種を担うヒト属が変わる。最強種を殺すということで得られる、最強種としての称号とは全く違う。それに歓喜する者もいるが、それを不名誉に思う者もいる」

「最強種を殺せば最強種になれる。でも、それを無視して選ばれる...不名誉か...んー...」


フォールは最強種であることにあまり実感がない。他の者と関わることはあっても、最強種としての部分をあまり意識する機会がないからだ。


「それをわかるようになるためにも旅に出るのだろう?」

「そうだね、みつけてみせるよ!」

「ああ、お前が諦めない限り、努力し続ける限りには知恵をかそう」

「えー、知恵だけー?」

「贅沢を言うでない。ほぼ全知全能を自負する者が知恵をかすというのに、まだ足らぬと言うのならこの世界ではまず無理であろう。魔王にでもなってしまえば別やも知れぬがな」

「冗談だよ、ごめんごめん」

「そのようなことはわかっておる。お前の筋肉の微細な動きからそうなのであろうとは思っていた」

「筋肉の微細な動きとか、やり方によっては似非えせテレパシーじゃん」

「筋肉の動きからよまずとも、心をよむ程度ならばできる」

「えー...」


ジト目でフォールはちょっとずつヴェルから離れる。


「そんなことはせぬ。それに、チェンジャーの心をよむのは骨が折れる。

何より、いまの状態ですら世界がつまらぬのに、それ以上につまらなくして何をなす」

「そっか」

「説明に戻るぞ。次は死の世界だ。呼び名においては四方界と比較しても一番多いだろうな。『天国』『地獄』『黄泉』『冥界』『冥府』『あの世』これらの他にも多くあるが、結局は死んだ者がいるとされる場所の名ばかりだ。

死の世界には時間の概念の存在がない、とまでは言わぬがほぼないに近い。


まぁ、死者たちの世界なのだから、死んでしまえば死の世界のありとあらゆることがわかるだろう。それまで待ってるがよい。生きてるうちに死後のことなぞ考えるだけ時間の無駄だ」

「うん、まぁ、そうだね。死んだあとのことだし」

「では、改めて世界の共通点に戻る。まずはこれを見てみろ」


そう言ってヴェルは、いつもどこから出しているのか一枚の白い紙を出し、フォールにわたす。


「これは、なに?」

「紙だが」

「いや、そうじゃなくさ。紙なのはわかるよ、どこからどうみても紙だもん。で、これはどんな特殊な紙なの?」

「その価値は持ち主によりけりだろうな。その『価値』の一つに『特殊な紙』としての価値を見いだす者もいるだろうよ。だが、その点ならばオレたちには特にそこまでの価値のない、言わばなんでもない紙だ」

「これは極々一般的な紙であると?」

「『一般的』の意味について追求することをしなければ、そういうことだ」

「こんな紙きれを出して自称全知全能の魔王様は何をしてくれるの?」

「ハードルを上げるでない、大したことはせぬ。ただ、世界が節減していることを証明するだけだ」

「世界にそんな貧乏性みたいなものがあるの?」

「ある。それに、世界は節減どころか、世界は優しくないものだ」


なんとなくだった。具体的な何か根拠があったわけじゃない。そのヴェルの言葉は意図的に感情を消したものに聞こえた。結局、なんとなくの、根拠のないものなのだが。


「世界は優しくない、か...」


「その紙をオレとお前の間にくるように持ってみろ。高さはどうでもいい。オレとお前で違う面が見えるようにすれば」

「えーと、こうでいいの?」


そう言ってフォールは両手で紙を支えて机の上に立たせるように、ヴェルとの中間くらいのところで持った。


「それで構わぬ。いまこの時点でオレとお前に、この紙の両面が見られている状態になったわけだ」

「ん?う、うん」

「では次だ。その紙を後ろの方に持っていき、オレにもお前にも同じ面しか見えないようにしてみろ」


今度はフォールは片手で紙を持って、自分よりも後ろにくるように持った。


「今この時点において、オレたちが見えている面を表としよう」

「うん」

「では、いま現在、裏はどうなっていると思う?」

「え?んー?何も、変わって、ない?」

「違うと言えば違うが、あっていると言っても嘘ではない。 今この時点の裏は闇に染まっている。世界のどんな黒よりも深い黒に染まっている」

「んー?」

「実物をみたほうがはやいだろうよ」

「うん」

「そのまま普通にみても何も変わったことはみられない。その状態で手を離せ」

「うん」


フォールが手を紙から離した瞬間に紙が空気中に静止する。まるで時間がとめられたかのように。


「紙の時間をとめた」

「時間ってそんな簡単にとまるものなの?」

「いや。時間に対して干渉すればそれなりに代償が必要になる。だが、この紙と部屋とオレで条件をあわせた。ゆえに代償は何もない」

「なるほど」

「裏をみてみろ」


フォールは立ち上がり紙の裏を恐る恐る見てみた。

黒かった。黒だった。どこまでも、どこであっても黒だった。今までの人生で見てきた黒が、純粋な黒ではなかったと無意識に確信する。

目が離せなくなった。正確には、離れなくなった。体感的には何百年、何千年と見ていたような気がしたのだが、実際には一秒にも満たなかったのだろう。


紙がヒラヒラと落ちていく。色は元のように、何もなかったかのように白になっていた。


「あまり長く見すぎてはいけない。

今のが現実であったと証明する手立てがないわけではないが、今のお前にはよそう。今のがただの幻覚だと言うならそれでもよい」


フォールは頭痛がする中でも、右手を額にあてながら返す。頭痛は次第に治まっていった。


「いや、信じるよ。師の言葉を疑うのは、まだはやすぎるからね」

「そうか。


今見たものが、世界がエネルギーを節減している証拠だ。

『色』というのはエネルギーを使って世界がオレたちに見せているものだ。世界はその『色』を、生き物の何者もが見ていない面があるとき、先のように『色』を奪う。生き物の何者かがその面を見る直前に、世界は『色』を染める。そして、見られていない状態が続けば、いづれその存在を消す」

「それは、悪いことなの...?」

「今はそれでいい。これが何を意味するのか、それは旅の中で知っていけばよい。それを知った上でどう判断するのかをみたいだけなのだから」

11日も間があきました、失礼しました。この話は始めて三日にわたって書きました。時間なかったり、誤字脱字の確認して寝落ちしたりしたんです...まだ言わせたいこともありますが、そろそろ旅に出します。12/18

※1/20本文修正しました。

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