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21.手札を明かします。

お久しぶりです。今回はやや短めに思うかもしれませんが、これでお願いします。

「まぁ、それについてはもういい。終わったことだ。」

「よくもないんだが...さっきのフォールからは『怒り』を感じた。生半可なものではなかった...」


彼女はフォールが心配で『当時』のことについて気にしていた。


「『怒り』か...あの時代の者で強い『怒り』この程度の情報では全く予想がたたないな。実際、そう心配することでもないだろう。今のところ、そこまでフォールに影響を及ぼしてるわけでもない。」

「そういう、ものか...?」

「はっきり言うのであれば、お前に出来ることはない。」

「そうか...」


彼女は諦めるような顔でため息をついた。


「それよりも、そろそろここの奴らが動かす。その為にもまずは、こちらが隠していることを明かさなければならない。」

「私が姿を見せればいいのか?」

「ああ、そうだ。ここの連中がフォールとセヘルという2人の最強種がいることに驚くかもしれんが、そこはどうでもよい。こちらが真実を明かしたという『事実』が必要だ。」

「それでその『事実』によってどんなことが起こるんだ?」

「ここの連中が、オレが隠してることについて聞きづらくなる。特にここのリーダーの『ルイス』と『クメル』には効くだろうな。」

「魔王様がこんだけ譲歩したのだから、これ以上聞くなってことか。」

「まぁ、つまり、その通りだ。」


彼女はフォールを一瞥し、ヴェルに質問した。


「山賊たちは『復讐、復讐』と言うが誰に何をされたんだ?」

「それについては、オレに聞く前に当の本人達に聞いてみるといい。それも1人1人個別に。」

「ただでさえ言わなそうなのに、1人1人となると、尚更言わないんじゃないか?」

「それはそうであろうよ。だが、操って質問に答えさせる程度のことは出来るだろう?」

「嫌味なことを言うヤツだ。簡単に出来るさ、散々それを受けて来たのだから。」



◇◆◇



その後、フォールはそう時間を開けずに目を覚ました。そして、セヘルとフォールは山賊たち1人1人に話を聞いた。手段は結局、セヘルの魔術でその人物の意識をなくし、彼女たちの質問に本人が『真実』だと思っていることを答えさせた。


フォールは終始見ているだけだったが、この人心を操る魔術のことは大方わかったらしく時折、セヘルの隣で誰かに向けはしないまでも、似た魔力の使い方をしていた。

セヘルとしては正直「こんな『人の道』に外れたようなことは覚えて欲しくない。」と思っていたが、フォールの分析力と成長はセヘルの予想の遥か上をいくもので、途中から彼女の今後に期待を寄せていた。



2人は彼女たちに用意された部屋で聞いた話をまとめていた。

山賊たちの話を聞く中で、最初の数人の時点で「もしや」と思っていた2人だったが、予想は当たっていた。


「みんな違うこと言ってたね。」

「あぁ...実際、本人たちからすれば、それが『真実』ということなのだからきっと...」


そこへヴェルが、部屋の隅に出来た影から現れる。


「残念ながら記憶とは曖昧なモノだ。オレのように何かしら施しているなら別だが、そうでないなら記憶は時間とともに変わって行く。」

「だから、みんな違うこと言うの?」

「そうだ。ここの奴らは『あの日』の出来事を口にすることも嫌う。だから話題に上がらないとなると、尚のこと記憶は変わる。悪い方にも、無くなる方にも。」



彼女たちが山賊から聞いた話では、


彼らが山賊になる前の『村』で流行病に襲われ、不幸中の幸いか大人ばかりが感染し、子供には全く影響が出なかった。だが、働き手が少なくなっていき『村』は壊滅状態になる。そこで動ける者は『村』を捨て、大昔から親しくしている『近くの村』に助けを求めた。そして、この『近くの村』は彼らを拒絶した。


ここまでは誰も彼もほぼ同じ内容だった。この『拒絶した』のあたりから食い違っていた。


ある者は『石を投げられ、暴言を吐かれ追い出された。』と言い。

またある者は『桑などの農作業に使う道具を持ち出してきて、脅され追い出された。』と言う。

そして、またある者は『1人の老人が出てくるだけで『村』の中にさえ入れてくれなかった。』言った。

特に彼女たち2人の印象に残ったのが、『血なまぐさい臭いがして、まさに何かの化け物を飼っているような、暗い恐ろしい雰囲気だった。』と言う者もいた。


1人1人違うことを言うので、彼女たちは最早本当のことを覚えている者はいないと考えていた。



「で、話を聞いてみてフォールは何を思った?」

「言っちゃ悪いけど、随分ぬるいのかなとは思ったよ。ただ、それでも自分の記憶を疑いそうにもなった。」


そう言いながら彼女はシードを握った。


「確かに『温い』と思っても仕方ないだろうな。あいつらの生活は『山賊』としての活動以外の物で潤っていた。『農業』や『元の村特有の特産物』といった物だ。つまり、生き残った『村』全体が満たされ始めていた。」

「そっか、そういうものなんだ。」


セヘルには今のフォールの言葉から感情があまり読み取れなかった。フォールの感情はある程度セヘルに流れるように出来ていたが、それを含めても読み取れなかった。



「お前たちが聞いてきた中で2人、実際にあったことを言った者がいたが予想はつくか?」

「2人か...2人なら『石を投げられ暴言を吐かれた』と言っていた奴と『農作業道具で脅された』と言っていた奴ではないか?」

「私もセヘルと同じ意見かな。」


ヴェルは小さく首を横に振って否定した。


「『石を投げられた』と言ったのはルイスだろう?アイツはもう、大分曖昧な記憶しかない。本当の『真実』を言ったのは『1人の老人が出てくるだけで、村に入れてさえもくれなかった』と言った奴と『血なまぐさい臭いがした』と言った奴だ。」

「その2つが『真実』なら、本当は何があったんだ...!」


セヘルがやや感情的に、語気を強くして言う。

彼女のこの感情はただの興味本位から来ているものではない。第三者が介入し、その第三者だけが甘い汁を啜るという状況が許せないからこそ、感情的になってしまう。彼女自身がそれを体験してしまったために。


「そう急くな、そのうちわかる。それに、まずはこちらの手札を見せる。お前たち2人が最強種であることを見せ、こちらに異議を唱えようとするのをできるだけ阻止する。」

「そんなに、『真実』は悲惨なものなのか?」

「悲惨とは違うな。あまり納得はしたくない内容だろう。それ故に、それを真実と認めたくない者も出る。」



◇◆◇



その後、ヴェルは山賊たちを集めて、フォールたちが最強種であることを明かした。


「お前たちに言っておくことがある。...セヘル」


ヴェルが呼ぶと、セヘルはフォールの腕輪から元のヒト属の姿に戻る。それに合わせて、フォールの目も元の赤い色に戻った。


「簡潔に済ませるが、2人は最強種だ。」


多少のざわめきはあったが、特に驚かれる様子もなかった。最早ヴェルの連れともなると、最強種くらいなら何も思わないらしい。


「言いたいことは以上だ。質問があるなら答えないこともないが」

「それなら...」


と、ルイスが声を出す。


「俺たちの復讐をその2人が手伝ってくれるのか?」

「いや、2人は全く手を出さない。全部、オレとお前たちでやる。」

「そうか。」


話は完全にこれで終わった。山賊たちはそれぞれやることがあるらしく、バラバラに散っていった。


ヴェルはルイスとクメルを呼び止めた。


「ルイス、約束だ。復讐の機会を明日に設けた。」

「そうか、以外と早いんだな。」

「オレがやりたいことが終わったら、後は好きにするがいい。力を貸せと言うなら貸そう。拷問がしたいと言うなら、必要な道具や場所を用意しよう。」


セヘルはクメルが目を逸らすのを見逃さなかった。まるで何かを隠すように、誤魔化すように目を逸らした。

こんな感じです。次の話で当の『近くの村』の方に行く話にする予定です。

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