1.それはシナリオにはないから
どうもどうもウタゲゴです。東のほうを読んでくださっているのなら、ありがとうございます、これからも長いお付き合いをさせていただけたらと思っております。さてさて、この度予告を出していた南を出させていただいた次第でございますので、何卒最後の最後まで読んでいただけたらと思っております。では、どうぞ!
───ここは通称、南の世界と言われる世界。最も死の世界に近く、最も生物が死ぬ世界。
そんな世界で、その者は悪の象徴を背負いながらも、より多くの後悔を消そうと、この南の世界を含めて四つの世界を観ている。北の世界、東の世界、南の世界、死の世界これら四つの世界を、住人を観ている。
これはこの者が理想に近づこうと、近づけようとする話。
この者とは、南の世界で何代も続く悪の象徴、魔王の名を36代目として担っている者である。そして、歴代の魔王の中で最も強い魔王であり、東の世界はおろか北の世界、南の世界にも敵はいないほどの強さである。
「パタン」と、本を閉じるかのような音がした気がした。だが、そんな音などしなかったということは分かるのたが、何か気になった。だが、そんなことを気にさせまいとするかのように、魔王がいる部屋に客が来た。
今、魔王はとても喜んでいた。予定していなかった客が来たことがとても嬉しかったのだ。だがしかし同時に、あまり期待をしすぎるなと自分に言い聞かせてもいた。その原因のほとんどが目の前にいる少女によるものだと言っても過言ではない。その少女は18歳ほどの若い少女だ。
「喜べフォール、お前はここに至った、故にお前の願いを叶えてやる」
そう魔王のいる部屋に入ってきた少女に声をかける。その少女の髪は赤く、肩にかかるか、かからないかくらいの長さの綺麗な髪であり、その目も宝石のように赤く、希望に満ち溢れているかのようにもみえた。
「さて、フォール、お前の願いはなんだ?」
「その前に確認したいことがあるのですが」
「構わぬ、それはなんだ?」
「私の願いの大きさによっては何個でも何度でも叶えていただける。また、どんな願いでも最低一つは叶えていただける。ということでいいのですよね?」
「ああ、その認識で問題ない」
この話はフォールと呼ばれた少女が、魔王の治める土地に移住したときからはじまっているゲームのようなものだ。それは魔王が普段いる「魔王の部屋」とでも言うべき部屋を探すという簡単なものだった。たがその難易度は、内容の単純さとは打って変わってとても高い。よって、移住する者、魔王につれてこられた者は多くいるが、この部屋に辿り着くものはまずいない。
「私の願いはたくさんのことを知って、王、あなたのように強くなることです」
「それは構わぬし、それが叶えられない願いでもないが、それを願うわけを聞いてもよいか?」
「それは、あの占い師の言う災いの被害を私自身で止めるや小さくする、などといったことがしたいのです」
はっきりとフォールは言う。
そもそもフォールは北の世界出身で、若くして死のうとしているところをこの魔王によって助けられ、魔王が治める土地に移住したのだった。
フォールは、北の世界でなかったとしてもトップクラスの腕をもつ占い師に、『そいつは北の世界の歴史において後にも先にも最も酷い災いをもたらす』と予言されたために実の両親に幽閉され、今にも餓死しそうなところを助けられたのだ。実際、幽閉されていた理由はそれだけではないのだが、それはまた後で。
「あの世界の者をできる限り救いたいと?」
「そう、なってしまいますが、場合によってはそのうえで復讐もしたいと考えております」
「そうか、なればこそ、やはりオレの力でそれは叶えられるべきではない」
「なぜ、です?」
フォールの声のトーンが今までと比べ少し低くなる。それは仕方のないことだ。最低一つは願いを叶えてやると言っていたのに叶えるわけにいかないと言われたのだから、約束が違うというものだ。
はい、これが1話でございました。まずは読んでくださってありがとうございます!!次の話で魔王とフォールの説明をさせていただこうと考えておりますので、是非楽しみにしていただけたらと思います。10/29
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