2、水辺の夢
ぱちり、ぺちり、と水が叩きつけられるみたいな音が不規則に聞こえてくる。
——ねぇ、ここはそんなに心地良い?
水の音が聞こえるのに、体はむしろ木漏れ陽に包まれてるみたいに温かい。そう、心地良い。
——ふふ、本当に気持ちよさそうだね。
頬を冷たいものがかすっていく。溶けたかき氷に触れたみたい。スッと体の中に染みこんでいって、火照った体を和らげてくれる。
また、ぱちり、と水の跳ねる音。跳ねているのに耳には柔らかい不思議な、小ぶりの鈴のような音色。今度は、もう少し近い気がする。
——でも可哀想な子だね。こんな所まで来ちゃうなんて。
声が聞こえた。耳元で響いたはずなのに、言葉はぼんやりと霞がかっている。何でだろう。耳を澄ませば不可解なノイズが混じる。ジー、ジー、と何ともどこからとも分からない無機質な音は、けれどどこか聞き覚えのあるものだった。
(あぁ、そうだ、これは車のクーラーの音だ)
そう気付けば、木漏れ日の温かさが消えて、秋の早朝に吹くような風が肌を冷やす。
クーラーの音が耳元で響いてくる。誰かが真白を呼ぶ声が聞こえた。誰が呼んでいるのか。真白はそっと目を開いた。金色の光が見えた。
—そんなに嫌ならさ、こっちにおいでよ
ぱちり、と水の跳ねる音が響いた。