二丁鎌の脅威
「さあっ、始めようか。」
楽しくてたまらないといった感じで神は、促した。
移香斎は、困惑しながらカマキリに構える。
「できる。」
移香斎は、カマキリの思わぬ位に額に汗が滲んだ。
カマキリの両腕が、大きな二つの鎌に見えるではないか。
二丁鎌の達人と闘う気持ちになり、身がすくむ緊張感を感じた。
ブーン ブーン
骨をも断ち切らんとばかりに、二丁の鎌が連続して襲ってきた。
ボクサーのように小さくコンパクトに構え、左右に揺れながら、
距離をはかり、一瞬で大きく伸び上がるように襲ってくる。
リーチは人間より、はるかに長い。
拍子と間合いが読みにくいってもんじゃない。
移香斎は、必死の思いでかわした。
かわすしかなかった。
「ほれ、ほれ、どうした。逃げてばかりじゃ、面白くないぞ。」
神は宙に寝っ転がって、酒を飲んでいた。
よく見ると、移香斎の瓢箪である。
「あっ、私の酒。今日、買ってきたばかり、結構高かったんだぞ~。」
そう思ったが、目の前の敵に集中した。
気を抜けば、殺られる。
セミのように、頭から喰われると恐ろしく思った。
乾坤一擲、隙を見つけて、木刀を頭にたたき込んだが、
あっさり木刀を受けられた。
あげくに、バキッと、折られてしまった。
首をかしげた仕草がいかにも馬鹿にしているように、思えた。
ムカつく・・・。