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神の弟子・・・
「神よ、我に稽古を付けたまえ。」
次の夜、期待に胸を膨らまし、鵜戸神社の岩屋で参籠していると、
鵜戸明神が早速現れた。随分、気軽な神らしい。
移香斎が、勢い込むと神は左手で待ったをかけた。
「そう、慌てなさんな。若い者はせっかちじゃのう。
日数はたっぷりとある。わしに稽古を付けて欲しければ、
今日からこの者どもと戦い、倒すがよい。」
「どの者でしょうか。」
神の弟子、どんな達人かと期待をして、辺りを見回せても誰もいない。
首をかしげる彼に、神はニヤリと笑った。
「お主の目は節穴か。ほれ、ここにおるじゃろうが。」
よく見ると、神の右肩にカマキリがチョコンと乗っていた。
「お戯れは、およし下さい。」
「戯れではない、ほれ。」
その言葉を待っていたかのようにカマキリは、地面に飛び降りた。
「ノウマク サマンダ ボダナン オン マリシ ソワカ」
神が摩利支天の真言を唱えると、不思議なことに、
カマキリは人間大になった。