愛実ちゃんの妊娠を応援しました。
ああ、この光景は以前見たような。
愛実ちゃんが、大きなおなかをさすりながら、夫となった将くんと一緒に神社の境内を歩いている。そうだ、愛実ちゃんのお父さんとお母さんである、卓司さんと喜美さんもおなかに赤ちゃんの愛実ちゃんを宿して、神社に来ていたっけ。
「まさか、ハネムーンベイビーになるとは思わなかったよ」
「ふふっ、良いことは早い方がいいのかもしれないね、将くん」
「そうだね、愛実ちゃん。急に、僕らは親になるんだなあ。うまくやれるかな」
「わたしたちふたりならきっと、なんとかなるよ。家族も喜んでくれているし。中学生のとき、家出しなくて良かったね」
「本当だ」
神社の池のほとり、愛実ちゃんのお父さんとお母さんも安産を祈願したさい銭箱にふたりはお金を入れ、生まれてくる新しい命のために、熱心な祈りを捧げた。
「どうぞ、無事に愛実ちゃんの出産が出来ますように」
「どんな子が生まれてきても、わたしたちが愛しいと思うことが出来ますように」
「愛実ちゃん、もしかして、赤ちゃんのことがちょっと恐い?」
「うん……お父さんとお母さんには、わたしはだいぶ苦労をかけたから。同じような子が生まれてくるなら、正直、ちゃんと育てられるかな? って、心配なんだ。わたしが子どもの時みたいに、ふっとどこかへ行っちゃったりしたらどうしようって」
「子どもと親は違う人間さ。愛実ちゃんと同じには絶対にならないよ。育てやすいか、育てにくいかはあるかもしれないけど……僕もちゃんと力になるから。料理や洗濯や、掃除とか、いろいろなことを僕もやるよ。愛実ちゃんが子どもを見落としてしまったときがあっても、僕がフォロー出来るようにはしたいな」
「ありがとう、将くん」
大丈夫。俺らもちゃんと、見守っているからね、愛実ちゃん!
「さあ、また時を進めるよ、工藤君?」
天照さまの言葉が響き、愛実ちゃんと将くんの姿がだんだんと遠のいた。




