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赤ん坊の愛実ちゃんを見守りました。
おばさん……いや、愛実ちゃんはすくすくと育っていった。喜美さんも卓司さんも、愛情を惜しみなく我が子に注いでいる。
俺も、生まれたときは、そんな感じだったのかな?
たくさんのキスやスキンシップをもらって、笑顔を返して。
俺は結婚どころか、彼女もいない状態で死んでしまったから、新しい家族の、こうした健やかな愛情が満ちているところは、すこし羨ましいようにも思えた。
「愛実ー!」
喜美さんが愛おしそうに愛実ちゃんを抱く。
「あー」
愛実ちゃんが返事をした。
「見た? もう返事したよ」と喜美さん。
「俺たちのことも、ちゃんと分かってるのかなあ? おーい、愛実ー!」と卓司さん。
愛実ちゃんは、ふと、俺の方も向いた。
「あー」
「そこには誰もいないよ、愛実?」と喜美さん。
「分からないぞ、喜美。もしかすると、誰か本当にいたりしてな。霊とか神さまとか、そういうのが」
「卓司さん! 変なこと言って」
はい。ここにちゃんといますよー。
俺は苦笑した。
(さあ、工藤君。今このときから、もうすこし時間を進めるよ?)
天照さまの声がした。




