新しい魂の誕生を見守りました。
喜美さんがベッドに寝ている。側には、生まれたばかりの赤ちゃんがすやすやと眠っていた。
卓司さんがベッドの横に座って、幸せそうに二人を見ている。
「よく頑張ったなあ、喜美」
「愛実も頑張ったんだよ」
「そうだなあ」
卓司さんが、眠っている赤ちゃんの柔らかそうなほっぺをさすった。
あれ……?
俺は不思議に思った。赤ちゃんの胸の辺りで、ふわふわと光の玉がその体に出たり入ったりしている。
その数が、二つになっていたのだ。
「工藤君。人の魂はね、赤ん坊のころは前世の自分が見守っているものなんだよ。そして、今誕生したもうひとつの光の玉が、今生を得た新しい魂なんだ」
天照さまが告げる。
「だいたい、三歳くらいまでに前世としての自分は引っ込んで、今生を一番輝かしいものにするために、新しい魂が育ってゆく。たとえ前世が有名な人間であってもね、魂としては、名も無い今生が一番成長しているんだ。だから、前世探しをして、有名だったり立派だったりする過去の自分に浸るような、エゴイズムを増長する姿勢は褒められたものじゃない。前世があるのは、今生を精一杯生きるために必要だからなんだ。過去世でやり残したことを、今生で清算するときのみに前世は関わってくると言ってもいい。だから、現世では過去世を覚えていない人がほとんどなんだよ」
「そうなんですか」
「君のおばさんであるこの子の前世の魂は、新しい魂が無事に成長すれば、こちら側に戻ってくるでゲコ」と、土地神様のカエルが言う。
「へえ……」
「今生で必要なときに、僕らのように目に見えない存在として現世にやって来て、今生の魂に寄り添うでゲコ」
「なるほど」
神さまや前世のことを知らなかった俺には、初めてのことばかりだ。でも、もしこうして様々な存在がいつでも見守ってくれていることを知ったなら、人は孤独から解き放たれるのかもしれないと思った。




