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恋歌  作者: よろず
タチアオイのつぼみ

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13/57

2の6

 私達の第一の課題は曲作り。ママとパパの練習の為に防音の部屋がある我が家へ楽器を運び込み、今は四人で相談中。


「まずは、作詞出来る人ー」


 私の問い掛けに手を挙げたのは、旭さんと翔平さん。ふむふむと頷いて、次の質問。


「作曲出来る人ー」


 これには旭さんが自信無さそうに手を挙げた。なるほどなるほどってまた頷き、次。


「編曲出来る人ー」


 旭さんが手を挙げて、翔平さんはちょっと遠慮がち。朔はずっと仏頂面のままそっぽ向いてる。


「朔はまだ若いんだから、これから覚えたら良いんだよ」


 思わずそう言った私に、朔はしかめた顔を向けて来た。


「千歳飴なんて中学生じゃねぇか。大人ぶってんなよ」


 そういえばそうだと言って笑った私を一瞥してから、朔はまたふいっと顔を背ける。なんだかご機嫌斜めの朔は放置して、私は話を進める事にした。


「旭さんがライブハウスで演奏してた曲って、作詞したのは旭さん?」


 はじめて旭さんの音を聴いたあの時、ドラムと詞が良いバンドだなって思ったんだよね。旭さんが肯定して、私は心の中で興奮する。作曲も旭さんがやっていたらしい。その情報に、私は満足して頷いた。


「ではではぁ、作詞大会を開催しまぁす!」


 パフパフーと元気良く口で言って、私はまっさらなノートをみんなに配った。朔が漏らした、俺もかよなんていう不平は黙殺です。


「テーマはなんでも良いです。でも、私達の歌っていうのは意識して下さいね! では開始ー」

「なんで千歳飴が仕切ってんだよ」

「良いから良いから! 朔もガンバ! 私に歌わせたい歌詞でも良いよ!」


 背中を叩いたら朔も渋々取り掛かる。慣れているのか、旭さんと翔平さんはあっという間に数本を書き上げてしまった。読んでみたら、旭さんのはカッコイイ大人な雰囲気。翔平さんのは明るく元気でポップな感じ。二人の特徴がよく現れてると思う。

 うーうー唸りながら頭を抱えていた朔の様子を窺う為に、こっそり後ろから覗いてみた。


「なんだ。朔書けてるじゃん」

「ばか! 見んな!」


 折角書いた歌詞は朔の手によって握り潰されてしまった。だけど残念。楽しそうに近寄って来た翔平さんによって朔は羽交い締めにされ、旭さんがくしゃくしゃに握られた紙を取り上げた。目を通した旭さんは、なんだか憐れむみたいな瞳で朔を見やって何も言わない。


「何その顔? どんな詞を書いたんだよ?」


 興味を惹かれた翔平さんが朔の拘束を解いて旭さんに歩み寄って行ったけど、諦めたのか、朔は拗ねた子供みたいに部屋の隅で膝を抱えちゃった。


「あー……朔。これせつねぇな」


 呟いた翔平さんが私に紙を渡してくれた。朔の書いた詞を読み込んで、イメージしてから私はピアノへ向かう。スマホで録音のセットをして、そっと鍵盤に指をのせた。朔が書いた詞は、切ないバラードが合う。


 ****

 はじめて会ったあの日 あの時 恋に落ちた

 無自覚だったけど 認めたくなんてなかったけど あの時の君の笑顔がリフレイン


 俺を見つけてくれて 認められたのが嬉しかっただなんて 言ったら君は笑うかな


 自覚してからはもうとまらない 君の声 笑顔 言葉 全てが心に響く

 口では暴言吐いて だけど俺の目に映る君はなんでだよ 宝石みたいに輝いてる

 日々が輝きだす なんて思ったけれど残念君は誰かのもの

 嘆いたって変わらない現実

 まだ間に合うんじゃないかって 幻想抱いたりもする だって

 あの時の君の笑顔がリフレイン

 とまらない 諦められない だって

 あの時の君の笑顔がリフレイン

 そばにいたいよ 気持ちを伝えるのは許されるかな?

 君が好きだよって 飲み込んだ言葉が心に雨を降らせる

 心が 君を想って泣いている

 後から出会ったから手遅れなんて そんなの――

 ****


 未完成の詞だったけど、作曲しつつ気持ちを込めて歌ったら涙が零れた。


「朔、これ、私好き」


 スマホの録音を止めてから泣き笑いになった顔を向けたら、朔は歪めた顔を膝に埋めちゃった。もしかしたら、これは朔自身なのかな? 切ない片想い。何か声を掛けるべきかなって悩む私の頭を、笑顔を浮かべた旭さんが撫でて来た。


「姫は作曲も出来るんだな?」

「父が仕事で作曲もやっているから、小さい時に教えてもらったんです」

「お姫さんってマジ才能溢れ過ぎだよね! やっぱ公務員なんて勿体無いって! 俺のにも曲つけてー」


 翔平さんに歌詞が書かれた紙を渡されて、私は読み込み、またピアノへ向かう。忘れず、スマホの録音もセット。

 これは、ポップで明るく飛び跳ねる感じ。夏の友達との水遊び。水鉄砲で打ち合って、水風船もパンパンにして割っちゃうんだ。最後はみんなずぶ濡れ! って曲だ。


「おー! すげー!」

「あっという間に二曲も出来ちゃうなんて、早いな!」


 翔平さんと旭さんからの拍手で、照れ臭くなる。教えてくれたパパに感謝しなくちゃ。

 その後は残りの歌詞にも曲付けして、編曲してくれるって言った旭さんに録音データを渡して解散になった。帰る時、朔が何か言いたそうに私を見て、でもそのまま玄関を出て行く。そんな朔に翔平さんが何か言って、拗ねた朔は速歩きで行っちゃった。旭さんはそれ見て苦笑い。そんな三人の背中を、私は手を振りながら見送った。


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