009-お天気の自動販売機
通常連載としては2話目です。
掲載に問題があれば連絡ください。
…あるところに一頭のラクダがいました。
ラクダはおひさまが大好き。
いつも空を眺めては…
「あぁ。今日も明日も快晴ならいいな。」と呟いていました。
そんなラクダがある情報を耳にします。
隣の町に、お天気の自動販売機があるという噂を・・・。
「本当だろうか?もし本当なら・・・」
ラクダはいてもたってもいられず、隣町へ向かいます。
・・・お目当ての自動販売機はあっさりと見つかりました。
でもホコリをかぶっていて、しばらく使われた様子はありません。
「なぜこんないいものを誰も使わないんだ?もしかして偽物??」
などと訝しがりながらも、とりあえず使ってみます。
お金を入れて快晴のボタンを押すと・・・・・・
なんということでしょう。
さっきまで黒色だった空は、あっという間に鮮やかな青色に
変わったではありませんか・・・。
「凄い…これからは毎日ここに通うことにしよう・・・。」
それから天気はずっと快晴になりました。
…しばらくたったある日。
一羽のヒメカモメが嘆いていました。
『ここしばらくの天気は何かしら。少しも雲が出ないなんて・・・』
このところの日差しのせいで、カモメの自慢の白い羽根は、すっかり
黒ずんていたのです。
やがて原因を知ったカモメは、ラクダに抗議にしました。
『ちょっと!!私にその自動販売機を譲りなさい!!』
「いやだよ。この販売機はボクのものだ!」
『ならば私が倍の値段で買い直して上げるわ!!』
ラクダも頑張りましたが相手はヒメです。
とてもかないません。
それから天気はずっと曇りになりました。
「ここしばらくの天気はどうしたのじゃ・・・
雲は出るが、まるで雨が降らんではないか・・・」
嘆いているのはトノサマガエルです。
雨が降らないせいで、住まいの池がすっかり干上がっていたのです。
やがて原因を知ったカエルは、カモメに抗議しました。
「やい、そこの者。ワシにそのカラクリを譲るがよい。」
『いやよ。この自動販売機は私のものよ。』
「ならばワシが倍の値段で買い直してくれよぅ!!』
ヒメカモメも頑張りましたが相手は殿様です。
とてもかないません。
それから天気はずっと雨になりました。
・・・やがて不思議な噂は、遠く海の向こうまで広がりました。
「そのような珍しきものなら、ぜひ余のモノにしたいものよ。」
と言い出したのは・・・
「そち…。その珍妙なものを余に譲りたもぅ。」
「無礼な…。このカラクリはワシの物じゃ。」
「ならば余が倍の値段で買い直そうぞ。」
トノサマガエルも頑張りましたが相手は…皇帝ペンギンです。
とてもかないません。
それから天気はずっとずっと雪になりました。
毎日降り続く雪のせいで、村はすっかり寂れてしまいました。
緑の大地はすっかり雪に覆われてしまいました。
ラクダは震え、カモメの池は凍り、カエルは冬眠しました。
「こうなったのも元はと言えば…ボクのせいだ。」
ついにラクダは皇帝ペンギンの軍と戦う決意をしました。
『私も行くわ!』
ヒメカモメも覚悟を決めました。
「俺も…」『私も…』
村の動物たちはそれぞれに生活を取り戻すため立ち上がりました。
そして動物たちの命がけの戦いが始まりました。
が…決着はあっさりしたものでした。
大柄なラクダの決死の突進に…
動物たちの団結の前に…
皇帝ペンギンと家来たちは、這う這うの体で南極に
追い帰されてしまったのです。
『よかった。…でも村は一面の銀世界。どうすれば…。」
カモメは嘆きました。
するとラクダは決意したように…。
「大丈夫。こうすれば…。」
…というと、ラクダは自動販売機を壊してしまいました。
『な…なにをするの??』
「いいんだよ。そもそも天気を誰かが決めるのがおかしいんだ。
自然には誰も逆らえないんだから…
ボクたには…こっちの方が大事さ。」
…というと、ラクダは自販機からお金を取り出しました。
「ほら。倍々ゲームで増えたお金はこんな大金になったんだ。
お金の有意義な使い道は…何をおいても復興だろう。」
『…そうだね。
自然には逆らえないけど…取り戻すことはできるもんね。』
ラクダたちは復興資金を使って、みんな団結して働きました。
やがて…銀色だった村は、見事な緑色に変わりましたとさ。
おしまい。
復興が早く進むといいですね。
とりあえず…募金をしてきます。