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008-自分らしく自分なりに自分としては

既出の作品のお引越です。

初めての方もそうでない方も是非ご一読を。


頑張る若い世代の甘さに対するアンチテーゼです。


「では、プリマの試験は一か月後とします。」

『おおぉぉ…』


 バレエ団のメンバーはどよめいた。

 トップダンサーが突然の引退を発表したことを受け、

 新しいプリマドンナを選ぶことになったのだ。


 新しいプリマの候補は4人。

 まずは秋子あきこ盟子めいこ牧子まきこの3人。

 いずれもこのバレエ団の幼い頃からの所属員。

 もう一人は広子ひろこ

 バレエ経験は浅く若いが、大人びた視野の広い女性。

 …この4人のいずれかが次のプリマとなる。


 ライバル意識のせいか、4人ともあまり仲が良くない。

 もっとも表面上は仲良しを演じているのだが…。



 そんな中…バレエ団に一人のコーチがやってくる。

 天江泰三あまえたいぞうというこの男、やさしくて心理学の

 心得もあるため、すぐに団員の相談役になった…。


 プリマ候補の面々も、この男に相談を持ち掛ける。

 …もちろんライバルには知られないように…



 まずやってきたのは秋子だ。

 『私…誰のアドバイスが正しいか悩んでて…

  誰の言葉を信じていいのかわからなくて…』


 すると天江コーチは答えた。

 「そういう時は誰よりも自分の声を信じるんだ。

  そうすれば、辛く悩む必要はなくなるよ。」


 …秋子は納得して帰って行った。

 …翌日からは自分の声を信じて邁進まいしんした。


 

 次にやってきたのは盟子だ。

 『私…演技に不自由を感じて悩んでいて…

  どういう自分を演じていいのかわからなくて…』

 

 すると天江コーチは答えた。

 「そういう時は自由にありのままを演じるんだ。

  キミはありのままのでいいのだよ。」


 …盟子は納得して帰って行った。

 …翌日からはありのままの自分を演じた。 

 


 その次にやってきたのは牧子だ。

 『私…どうすれば一番になれるか悩んでて…

  ナンバーワンになるには…』

 

 すると天江コーチは答えた。

 「そういう時はオンリーワンを目指すんだ。

  一番になんて…ならなくてもいいのだよ。」


 …牧子は納得して帰って行った。

 …翌日からはより個性的な自分を演じた。 

 

 

 そして一か月後…

 …秋子は自分の声を信じて踊った。

 …盟子はありのままの自分を舞った。

 …裕子は個性的でただ一人の自分を魅せた。 

 …広子は…コーチに言われるがままを演じた。


 その結果、

 誰がプリマに選ばれたかは言うまでもあるまい。



「なんとも気分が悪いな…。

 私は…悩める幼気いたいけな少女をだまししたのかも…」

『いいじゃないですか、天江コーチ。

 そんなのは悩みとは言いません。…迷いでしょ。』

「…それはそうだが…彼女たちはそれなりに真剣に…」


 天江は自分のアドバイスに後悔を感じていた。

 だが…事情を知った勝者は敗者たちを鼻で笑っていた。



『笑えますよね。その程度のものに悩まされる半人前なのに、

 ≪自分らしさ≫を求めるような甘チャンなんて。

 まぁもっとも…私も半人前ですけどね。』

「でも…それで彼女たちは納得しているかな?」


『もちろんよ。彼女たちは今頃きっと言ってますわよ。』

「…なんと言ってるんだ?」



『≪自分らしく…自分なりに一生懸命やったから、

  自分としては悔いはない…≫ってね。』


 そう言い放った広子は、高笑いが止まらなかった。


 なるほど…

 狭小に自分だけを見つめていた者と、天江を含む多くの

 コーチに意見を求め、広い視野で自分を見つめ続けた者。

 なのに視野の狭い甘えん坊が一生懸命いっしょうけんめいだなんて…

 さらに…その甘さに気づいてさえいないなんて…。


 大人びた広子には滑稽こっけいで仕方がないのだろう。

 


 そして次の講演…

 自分らしく脇役を演じる秋子、盟子、牧子をしり目に、

 周囲の期待どおりのプリマドンナを演じる広子。

 

 …当分その地位を脅かす者はいないだろう。



今回の第8話をもってお引越しは完了です。

明日からは、毎週土曜日23時に新作を投稿予定です。

よろしければ読んでやって下さい。


なお特定の曲や歌手とは一切無関係ですのであしからず。

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