005-誰のおかげで飯が食えてると
既出の作品のお引越です。
初めての方もそうでない方も是非ご一読を。
「てめぇ、誰の金でメシが食えてると思ってるんだ!?」
『そう言われましても…役所としては精一杯の…』
またあの手のヤカラだ。
役所の窓口には、時々こんな面倒な人が訪れる。
「お前ら公務員は、俺ら市民の税金で養ってるんだぞ。
なのにいい加減なことばかりしやがって!!」
『申し訳ございません…。』
この暮今とかいうヤカラは特にタチが悪い。
主任が対応してくれて、今日はなんとか帰ってもらえたが、
「また来るからな!」と言い残されてしまった。
『主任…あの人がまた来たらどうしましょう?』
「…とりあえずは俺に任せてくれれば何とかするが…
確かに困るよな。」
『お店とかでもそうですけど…お金を払うお客は
何をしてもいいんでしょうか??』
「そんなわけないさ。当然だろ。」
『そんな人に限って、大して納税してないのに…』
「そう言うな。とりあえず…上司と相談するから。」
…というわけで主任が上司と相談した結果…
問題解決に動いてもらえることになった。
…役所としては珍しいぐらい腰の軽い対応で…。
…そして一か月後、あの暮今が再びやってきた。
「なんだ受付嬢の分際でその態度は!
お前は誰のおかげで飯が食えてると…」
『えぇと、私の給料は…
南区の鈴木様、北区の佐藤様、有限会社フミタ…
など11名の納税により補われています。』
「はぁ??なんだそれは??」
『ですから暮今様のおかげではありません。』
なんだその理屈は??
公務員は市民の納税で養われているはず…
『ところで暮今様、今日のご用件は?』
「そうだ。近所の派出所の高橋とかいう巡査の態度が
悪いんだ。あいつ誰のおかげで…」
『ええと、高橋巡査の給料は…
ファルコンズの田仲投手の納税からですね。』
「田仲投手??」
『そうですよ。あの人は高額納税者ですから…
一人の納税で公務員五人ぐらい養ってますよ。』
なるほど、そういうことか…
誰のおかげで給料が出てるのかはっきりさせたから、
俺のおかげではないと言いたいのか…
…ならばこっちにも考えがある!!
「わかった…じゃあ教えてくれ!
俺の税金は、いったい誰の給料に使われた?」
『えぇと暮今様の納税は…公営競馬に使われました。』
「はぁ??競馬??」
『はい。オハナサキマシタ号という馬の飼葉に…』
「はぁ??飼葉??しかもなんだよ…その馬名は??」
『ちなみにその馬、今日の出走予定ですよ。』
「はぁ??だから俺にどうしろと???」
…とりあえず暮今は役所を引き上げ、競馬場に向かった。
ちょうどオハナサキマシタ号のレースが始まるところ。
「こら、勝てよオハナサキマシタ号!!
誰の金でメシが食えてると思ってるんだ!?」
「ヒヒーン(知らないよ、バカ)。」
哀れ…暮今は競馬でかなりの額を散財してしまった。
…ウマにまで馬鹿にされて…。
クレイマーはどこにでもいます。
無関係な人にあんなことして何が楽しいのやら…