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004-機密情報を守るために必要なもの

既出の作品のお引越です。

初めての方もそうでない方も是非ご一読を。

私も似たような経験のある社会人向けの寓話です。


「では、この制度でよろしいでしょうか?」

「なるほど。さすがは池照いけてるくんだ。

 しかしここまでして、従業員に不便はないかね?」

「ある程度の不便は仕方ありません。

 それもこれも、大切な情報を守るためですから…」



 当社のような機密情報を扱う企業にとって一番の問題。

 それは情報の漏洩ろうえいだ。


 もし大切な情報が他社に、しかも他国に知れたりしたら

 会社の存亡、いや国家損失にもつながる大問題だ。

 だから機密情報を守る制度とシステムが必要となる。

 そこで社内で一番の切れ者、池照にその制度作成を担当

 させたのだが…。


「いやぁ、素晴らしいよ池照くん。これでわが社の機密は

 守られたの同然だ。」

「お褒め頂き光栄です社長。では引き続き運用も私が…」

「…いや、その必要はないだろう。

 これだけの制度があるんだ。運用は他の者にさせる。」

「しかし…」


 池照は不安だった。

 いくら制度が完璧でも、実際に運用すればいくらでも

 問題は起きるものだ。

 なのにその時自分がいなければ…


「池照くんの不安は分かる。

 しかしキミのような逸材を、いつまでも儲けの出ない

 社内業務に従事させるわけにはいかんのだよ。」

「しかし、制度は運用してみなければ…」

「それじゃ何かね、キミは不完全な制度を私に提案した

 とでもいうのかね?」

「いや…そういうわけでは」


 社長の言うことは分かるのだが…。


「わかりました。しかし…

 私の後任には出来内できうちさんをお願いします。」

「出来内??以前に例の大損失を出したあいつか?」

「…いえ、出来内さんは運がなかっただけで優秀な人です。

 しかも例の件で今は重要な仕事も持っていませんから。」

「…わかった。池照くんが言うならそうしよう。」



 …数日後、社長は自ら出来内に担当を依頼した。


「…ということだ。引き受けてくれるな出来内くん。」

「了解しました。しかし…私の評価はどうなるのですか?」

「評価?」

「はい。社長も仰る通りこの仕事は儲けがありません。

 しかも同僚にはかなりの不便を強いることになります。

 それでは私は評価されないのではないかと…。」

「…何を甘えたことを言っているのかね。

 これだけ完璧な制度があるんだぞ。

 一件でも情報が洩らしたり、社内から苦情がでたり

 したら、キミの評価は下げざるを得んよ。」

「…わかり…ました。」



 それから数か月後…

 会社は大混乱に陥った。


「池照!どういうことだ!?なぜ情報が洩れてる??

 しかも外国の企業に…これは国家的損失だぞ!!」

「すいません社長。しかしこれは予想できたことで…」

「なんだと!?どういうことだ?」

「制度なんてどうやったって完璧じゃないんです。

 所詮、会社を守るのは社員の力なんですから。

 その弱みにつけこむ企業もあるってことです。」

「じゃぁどうすればよかったんだ!?」

「会社が社員を大切に…会社を守ってくれる人を

 大切にすればよかったんです。

 本当は…それが最良の制度なんですよ!!」



 …ちなみに出来内は行方不明だそうだ。

 どうやら外国の企業に行ってしまったらしい。



ちなみに外国って…

ニュースを見ている方ならば、どこの国かおわかりですよね。


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