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029-日野本くんと朝子さん

このお話はフィクションです。

あくまで現実とは無関係ってことで…

『久しぶりねぇ。セクハラ名人の日野本。』

「てめぇ金田…作り話も程々にしろよ。。。」


 この女。金田朝子…。

 会社の同期でかつての部下。

 …まったく事実無根のセクハラで騒ぎ立て、

 私を貶めている張本人だ。



 …きっかけは大したことではなかった。


 私が主任に昇格し、リーダーになって二年目…。

 業務範囲が広がって忙しかった頃。

 昇格が遅れ、責められてばかりだった金田は、

 【独立した仕事はムリだ】と異動を希望して、

 私のチームの一員となったのだが…


 プライドと言うか…虚栄心が強く嫉妬深い彼女は

 同期の私の下につくのが屈辱だったらしく… 

 …ことあるごとに反発を繰り返し…

 チームの業績に貢献することは何一つなかった。



 …それでも私は最大限の協力はしたつもりだ。

 おかげで彼女の評価はそれなりに保たれ…

 私から数年遅れて主任に昇格した。


 同じ頃、私のチームは他社との競争に敗れて解散。

 金田は独立した業務を任されるようになった。


 …しかし彼女はただ私の仕事を真似るだけだから

 まったく業績が伸びない。

 私から独立後に任されたチームも分裂し…

 見かねて仕事を手伝わせたのだが…


 …これが仇になってしまった。



『私を無理やり残業させて…二人きりにして…』

「ここはオフィスだぞ…何をやったと言うんだ!?」

『…強制的に…奴隷のように…』

「嘘つくな!!事実無根で証拠もないんだろう!?」

『でも…私がこうして訴えてるんだから…』



 …もちろん金田の証言はウソだ。

 私が残業は強制しないことは日誌にも書いている。

 それにガラス張りのオフィスで何ができる??

 …証言だって二転三転して信用に値しない。


 でも金田には旭日と言う変わり者の友人がいて…

 金田に頼まれて出鱈目な証言をしたらしく…

 問題はそのまま長期化してしまって…



「あのなぁ日野本くん。事実かどうかはともかく…

 とりあえず謝ったらどうだ??」

「…私が謝る??なぜですか河埜部長??」

「このままでは金田くんはセクハラで訴えるそうだ。

 …そうなったら会社の評判が下がりかねん。」


「でも…事情は部長もご存知でしょう??」

「そうもいかんのだよ…。

 たとえ出鱈目でも世間では被害者の証言は…」

「バカな!どっちが被害者だと言うんですか!?」 

「…仕方ないだろう…

 世間の誰もが事情を理解した賢者ではないんだ…」

「…」



 …そしてその結果は言うまでもない。

 私が形ばかりの謝罪をしたことで金田は…

 あたかもセクハラがあったかのように触れ回った。


 もちろん事情を知る者で金田を信じる者はいない。

 しかし上司の言う通り…誰もが賢者はないのだ。

 特にウワサ好きの無責任な連中にとって…

 …私は格好の餌食というわけだ。


 …そしてその噂だけがひとり歩きし…

 …金田はことあるごとに私の悪口を触れ回り…

 何も知らない若手社員の中には、こんな出鱈目を

 本気で信じる者が出てきてしまった…



『ふん、自業自得よ。私を傷つけた罰でしょ。』

「てめぇ…何が目的だ??金か?謝罪か??」

『どっちでもいいのよ。あんたさえ貶められれば…』

「ウソばかりついて…プライドはないのか!?」

『あるわよ。私はもう出世の目はないけど…

 私はあんたが私より上にいるのが許せないの。』


「そのために事実と違う証言をしたのか!??」

『…事実かどうかなんてどうでもいいじゃない。

 都合の悪いことは事実であっても認めたくないの。

 それが私のプライドってわけ。おわかり!?』



 …好き放題にウソを言ってくれやがる…

 だが俺だって黙っていたわけではない…

 …この会話は録音していたんだ。

 …河埜部長と旭日にこれを聞かせると…



『…ごめんなさい。

 私…金田さんに頼まれて…訂正します!』

「…すまない。穏便に済ませてくれないか…

 金田くんはちゃんと処罰するから…」


「いえ、公に訴えます。

 内々で処理されては事実を知らないままの人が

 たくさん残りますからね。」

「そ…それでは金田くんはどうなる!?

 これを公にされたら…金田くんは破滅だぞ!?」


「もう知りませんよ。

 頼まれたからチームに加えてやったのに…

 同情して何度も支援したのに…

 恩を仇で返すヤツに同情なんか無用です!!」 



 こうして私は裁判を起こし…名誉を保った。

 …金田は依願退職ということで処罰を見送られた。



 …でも…私だって哀しいんだ…

 ずっと面倒みて…ここまで引き立ててやったのに…


 とはいえ与えられる側はそれをいつしか当然と思い…

 与えるだけの側を軽んじ憎むようになる…

 だから一方的に与えるだけでは…いつはか破綻する。


 でも…ずっと与えられていた側は現実に直面した時…

 いったい何を思うのだろう??


 今は、誰彼かまわず私も悪口を言いまわってるらしい。

 …逆恨みだけは勘弁してほしいのだが…


正義とは都合…

けど現実とは…


事実とは時の都合では

覆らないものです。

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