002-ひきょう組の犠牲者
既出作品のお引越です。
初めての方もそうでない方もご一読を。
「とうちゃん。俺、あいつらを許せねぇ。」
「…あいつらって誰だ。」
「とても卑怯な連中だ。ひきょう組って言うんだ。」
息子の太郎が珍しく怒っている。
何かにつけてのんびりしたヤツなのに…
それにしても…≪ひきょうぐみ≫ってなんだ??
「俺、そいつらのせいで中学生にバカにされたんだ。
円周率が3だって言ったら違うって言われて…」
「はぁ、円周率が3??そりゃバカにされるさ。」
「でも俺は、ひきょう組からそう習ったんだ。」
「バカだな。直径の三倍なら円に内接する六角形じゃないか。
それぐらいはわかるだろう。」
「ないせつする??…ろっかっけい??…わからん。」
…情けなくなってきた。
太郎は…謙遜でもなんでもなく不肖の息子だが…
これがひきょうぐみの仕業というのだろうか?
「あと…ひきょう組のせいで外国人にもバカにされたんだ。」
「今度は何を言ったんだ??」
「とうちゃん。日本がアメリカと戦争したって本当か?」
「…本当だよ。そんなことも知らんのか?」
「あと韓国とも戦争して負けたって本当か?」
「…それは間違いだ。そんなことも知らんのか??」
「そうだ。ひきょう組は教えてくれなかった。」
…さらに情けなくなった。
こいつは、誰かに教えてもらわないと何も学ばないらしい。
まぁ息子の教育を嫁に任せっきりにした私にも責任はあるが…。
それはそうと…気になることがある。
「なぁ太郎。さっきから言ってる≪ひきょうぐみ≫ってなんだ?」
「知らないよ。きっと俺らを貶めるための組織だ。」
「ヤクザの組か?」
「違うよ。もっと大きな闇の組織だ。」
「さっぱりわからんな…漢字で書けるか??」
…もう情けなくて泣きたくなった。
こいつは数学と社会だけでなく…漢字も習ってないようだ。
「なぁ太郎…。
これはひきょう組じゃない。日教●と読むんだ。」
「え…そうなの??」
「お前は…本当にバカだな…」
「あぁ。中学生と外国人だけだなく…父親にまでバカにされた。」
哀れなヤツだ…。
まぁこいつがひきょうぐみの掲げた≪ゆとり≫というおろかな
政策のせいで貶められたのは確かなのだが…。
この組織の犠牲者…
もしかしたら日本人全員かもしれない。
私も…そしておそらくは貴方も…