012-百貨店に男性客を呼び込もう
こんな百貨店が欲しいな。
というお話です。
「わが●●百貨店の生き残り対策はあるかね??」
ここしばらく…この地域では百貨店が乱立している。
客の取り合いで売り上げは落ちている。
…社長は焦っている。…何とかせねば。
「社長、新しい客層を開発するのはどうでしょう?」
「良案だが…開発するのはどの客層だ?」
「はい、男性客です。」
…なるほど。男性客か。
たしかに百貨店はどこも女性客がターゲットだ。
男性客の多い百貨店…いいかもしれない…。
「よし…そうと決まれば男性客の嗜好を調べろ!」
「わかりました。」
…こうして男性客中心の百貨店ができた。
まず化粧品売り場が変わった。
男性客にとって一番の難敵は百貨店の入口付近。
…とにかく悪臭…入店前から気分が萎える…。
ここを通らずに百貨店に出入できれば評価は◎。
…化粧品売場は入口から遠い場所に移転。
デパートの入り口は清涼感のある匂いに変わった。
次に下着売り場が変わった。
男性客にとって難敵は彼女に待たされること。
その中でも最大の難敵は下着売り場。
…男が一人取り残された時の視線と言ったら…。
下着売場は一番奥に移転され、近くに休憩用の
広いスペースが設けられた。
レストラン街も変わった。
男性客にとって食事の難敵は待ち時間の長さ。
…男は食事に長々しい会話は求めない…。
回転率の早い店が優先的に配置された。
特に待ち時間が短いのは大きな魅力だ。
さらに一番大きな変化は…
各フロアに無料の休憩スペースが設けられ、
インターネットとTV完備のPCが大量設置された。
これで彼女の買い物に待たされる彼氏も退屈しない。
男性客の呼び込み作戦は完了した。
…数か月後…
なぜだ??
男性客の満足度は上がっているのに、
なぜか売上は伸びない…。
「原因を調べてみると…わかりました。」
「何が原因だ??」
「まず…男性は自主的に百貨店に来ません。」
…なんだその身も蓋もない回答は…
まぁおよそわかっていたことだが…。
「次に…百貨店に来る女性は、男性を待たせることに
まったく罪悪感を持っていません。」
…なんだそのさらに身も蓋もない回答は…
まぁイラつく男の有様を見れば当然の回答だが…。
「最後に…百貨店の売上は女性が決めています。」
…なんだその究極に身も蓋もない回答は…
まぁそれも始めからわかってはいたが…。
…ではどうする??
どうすればいいんだ??
「でも…コンセプトは悪くないんです。
あともう一工夫なんです。」
「どうすればいい??」
「…わかりません。けどもう少し続ければ…」
「わかった。こうなったら社運をかけて…」
ただ…売り上げこそ伸びなかったが…
スポーツ用品は充実し…骨董品売場は充実し…
客を退屈させない工夫は徐々に充実していった。
…誰にでも入りやすく退屈させず居心地がいい。
…そんな百貨店…実はきわめて珍しいんだ。
少しずつではあるが…その評判は広まっていった。
『ねぇ、次の休みは百貨店に付き合ってよ。』
「うん。●●百貨店ならいいよ。」
『またあそこなの?あなた●●百貨店好きね。』
「実はさ…●●以外の百貨店は…嫌いなんだ。」
『仕方ないわね。付き合ってくれるんなら…』
…そんな会話が少しずつ聞かれるようになり…
乱立する他の百貨店が栄枯盛衰していく中…
●●百貨店は細く長く生き残ったそうな…。
最近、関西では百貨店が乱立してます。
でもほとんど店は居心地…残念ながら…です。




