011-銀行強盗とマニュアル銀行
何も考えてないコメディーです。
お気楽にどうぞ。
「おらぁ!!金を出せ!!」
『キャー!』
「騒ぐな!!静かにしろ!」
…銀行強盗だ。
昼下がりの地方銀行。客はほとんどいない。
しかし、いくらそんな状況とはいえ…
銀行員たちは意外なほど落ち着いていた。
『あのぉお客様…いくらご入り用でしょうか??』
「いくら!?あるだけ全部もってこい!!」
『では…少々お待ちください。』
しばらくすると、女子行員は何やら書類を持ってきた。
『こちらに必要な金額をご記入ください。』
「書けるか!」
『でも…規則ですから。』
「いいから!あるだけ全部とこのかばんに入れろ!!」
『では…少々お待ちください。』
…というと女子行員はおもむろに、
窓口の下にある小銭をカバンに目いっぱい入れた。
『…では…少々…重いですが…』
「はぁ!?ふざけるな、小銭ばかりで何キロあるんだ??」
『私がぎりぎり持ち上げれる程度だから…30キロくらい…』
「バカか!?って言うかよくそんな重いモノ持ち上げたな!!」
『そうでしょう。だって銀行員も体力が資本ですから…
毎日トレーニングする規則があるんですよ。テヘッ。』
「…そんなことこはどうでもいい!!
というか…俺が欲しいのは札だ!!札はどうした!?」
『でも紙幣は…奥の倉庫に入れる規則ですから…』
「はぁ!?ここは牛丼屋か!?いいから札を持ってこい!!」
『では…少々お待ちください。』
しばらくすると、女子行員はまたまた書類を持ってきた。
『では、こちらの紙幣持出書に押印を。』
「あほか!!印鑑なんて押したら…名前がばれるだろ!!」
『では…拇印でもいいのですが…』
「大バカ野郎!!指紋なんて残せるか!!」
…このままでは埒があかない。
とにかく札を持ってこさせねば…。
ついに強盗は…女子行員を人質に取った。
「おら!札を持ってこい!さもないとこいつの命はないぞ!!」
『キャー助けて!!』
「店長はどいつだ!?出てこい!!」
しばらくすると店長が出てきたが…
…どうも要領を得ない。。。
「早く金を出せ!!さもないとこいつの命は…」
「…と言われましても…お金は規則の基づいて出さないと…」
「はぁ!?てめぇ、人命と金とどっちが大事なんだ!?」
「…あなたはどうなんですか??」
「そりゃ…人命だけど…」
「はは、そうですよね。
マニュアルにそう書いてありますから。」
こいつら…俺を愚弄してるのか??
もう許せない。。。
強盗はついに銃をぶっ放した!!
「もう待てねぇ!!一刻も早く金を持ってこい!!」
「仕方のない人ですね。…ではあるだけお持ちします。」
…というと店長はあるだけの金を台車で持ってくると…
全ての一万円札を一つのズタ袋に詰め込みはじめた。
…一億・・・二億…三億…四億・・・
…それが終わると五千円札に千円札…二千円札もあるの??
…どう見てもさっきの小銭袋より重い…。
「では…どうぞ。」
「あほか!!そんなもん持ち歩けるか!?」
「でもあなたは全部持ってこいと…」
「だから…そんな重いモノはどうやって持ち歩けと!?」
「では…この台車をお貸ししましょう。」
「…それは助かる。借りていくぞ!」
「では、こちらの備品貸出書類に記名と押印を…」
「ふざけるな!!」
…とうとう強盗は逃げ出してしまった。
しかしこれを警備員が両手を広げて制止する。
「邪魔するな!!警備員!どけ!」
「しかし…ご来店のお客様には必ず…」
『この粗品を持って帰ってもらう規則ですから…』
「いらん!!どけ!!」
『いえいえ…そう遠慮なさらずに…』
「こら!ポケットにティッシュを詰め込むな!!」
…そうして何だかんだやってるうちに…
警察が駆けつけて、強盗は逮捕されてしまった…
「…いやいや。ご協力感謝します。」
「いえいえ、マニュアル通り対処しただけですから。」
「では…何も取られてないのですか?」
すると店長は笑いながら警察に答えた。
「いえいえ、彼はたくさんとりましたよ。」
「え、何をですか?」
「くくっ…我々の…笑いですよ…」
「ハハハッハ…」
「…」
哀れ…
銀行強盗は行員たちの笑い者にされて連行されて行った…
『…お客様。またのご来店をお待ちしておりまぁす。』
「バカ!二度と来るか!!…と言うか当分来れねぇよ…」
たまにはこういう薄っぺらい作風も…
結構好きなんです。




