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ダイスと共に世界を歩く  作者: 黄粋
第一章
6/208

出会いと遭遇

 極度の緊張で前後不覚になっていたタツミだったが、彼の身体は前方から向かってくる気配に気づいた。

 高性能な彼の身体が反射的に立ち止まり、その場で身構える。

 しかし体の震えは止まらない。


「何か……いや、『誰か』が、こっちに来る?」


 それどころか状況が変化した事によって心臓はさらに早く脈打ち始めた。


「(ま、ずい、このままだと……わけがわからん、まま)」


 気ばかりが焦って呼吸もままならない。

 だと言うのに身体は状況の推移を正確に彼の頭に伝えてくる。

 それが余計に彼を焦らせる。

 

 このままでは何者かもわからない存在と接触する前に呼吸困難で失神してしまう事も有り得た。

 少しでも気を抜けば嘔吐していただろう。

 ギリギリと音が鳴る程に歯を食いしばり口元を手で覆い、込み上げてくる物を抑える。

 

 まるで記憶にある冒険者の仕事を始めたばかりの頃のように、初めて人型の生き物を殺めた時のように、身体が震えて動かない。

 

「っ……か、はぁ」


 このままではいけない。

 混濁する頭でそれだけを考えたタツミは。

 大きく深く呼吸しながら、震える身体から力を抜いた。

 噛みしめていた口からも力を抜いてしまった為、もう遮る物はない。

 盛大に吐き出す事も厭わなかった。

 とにかく状況を変えたいという一心での行動だった。


 結果的にその行動はタツミにとってプラスに働いた。


「えっ?」


 破れかぶれとも言えるその行動が起こした不可思議な現象にタツミは思わず気の抜けた声を出す。

 だらりと下げられた手が右腰に佩いた刀へと伸びたのだ。

 強すぎず、弱すぎない相手を威嚇しない程度の力が両足に込められる。

 先ほどまでのみっともない程の震えはいつの間にか止まっていた。


「(……身体が勝手に?)」


 恥も外聞も捨て、どうなっても構うものかと。

 そんな気持ちで余計な事ばかり考えていた頭を意図的に空っぽにした。


「(俺は……ただ漠然となんとかしたいと思っただけ。武器を構えようなんて考えてもいなかった。それに、さっきまでガチガチに震えてたはずなのに)」


 彼の思考は今、とてもクリアな状態になっている。

 先ほどまで過呼吸と極限の緊張状態に苦しんでいた事実が、まるで幻だったかのように。

 何度も何度も頭の中でシミュレーションしてきた通りに身体を動かす事が出来るようになっていた。


 またしても彼の中の疑問が増えてしまった。

 しかし今、それを考えている程の時間的余裕はない。

 冷静になれたのならば今はそれでいいと考え、タツミはこの疑問を頭の隅に追いやった。


「(先の事を考えるのは目の前の事を乗り切ってからでいい。落ち着きさえすればこの身体にできない事なんてないはずだ……)」


 身体に指示を出す事を最優先にする。

 タイムラグもなく、スムーズに、むしろあちらの世界での自分の身体よりも遥かに素早く動く事が出来るこの身体を信じて。


 すっきりした頭で改めて思考を巡らせる。

 彼は視線を前方へ向けた。

 周囲への警戒を怠らずにコマンドスキル『鷹の目』を使用、近づいてくる何者かを注視する。


 街道を音を殺しながらタツミのいる方に駆け抜けてきているのは14、5歳の少年だった。

 成長期に差し掛かったばかりの顔立ちと大きくぱっちりとした垂れ目の為、実年齢以上に幼く見えるだろう事が容易に想像できる。

 犬に近い種族の獣人らしく、耳はダックスフンドのようで今置かれている状況のせいか力無く垂れ下がっている。

 同年代の子供としてはしっかりした体に装着されている革で作られたと思しき胸当てや肩当ては、最小限の防御力を確保しながらも動きやすさを重視している事がよくわかる。

 腰に巻きつけられたベルトには三本のナイフが収められているが、しっかり取り付けられている為か走っている割に音を発てる事はなかった。

 必死の様子で街道をこちらに向かって走ってくる彼には、まだタツミの姿は見えていないようだ。

 頻繁に後ろを振り返るその様子から、何かに追われているように見える。


「(追われてるのか? とりあえず武器は構えずに様子見しよう)」


 その場で立ち止まってしまうと待ち伏せしているようにも見えてしまうと考え、相手を威嚇しないように意識してゆっくりと彼は歩き出す。

 お互いの距離が十数メートルという所で、少年はようやく近づいてくる彼の姿を認識した。


「だ、誰だ!」


 腰に括り付けていた大型のナイフの一本に手をかけながら、少年は恫喝するかのように大きな声でタツミに呼びかける。

 ここまでずっと走ってきたらしく彼の身体は汗だくで、疲労が溜まっている為かそれとも追われている緊張による物か、非常にピリピリとした雰囲気を放っていた。


「冒険者のタツミだ。この先の村に用があって来た。今はフォゲッタに滞在している」

「ぼ、冒険者? えっと……カ、カードを見せてください!」


 荒くなった息を整えながら疑わしげにタツミを窺う少年。

 ナイフの柄にかけられた手は外されていない。

 身分証明としてのギルドカード提示は、初対面の冒険者間では暗黙の了解として行われている行為だ。


 お互いに名乗り合うだけなら幾らでも名前を詐称する事が出来る。

 しかしギルドカードを偽造する事が出来ない。

 登録を行った本人以外が所持しているとパトカーのサイレンもかくやの騒音と発光現象を起こすのだ。

 仮に登録者が死亡、あるいは何らかの事情で長時間カードを手元に置かなくなった場合、カードは錆色へと変化し全ての機能を停止させる。

 故に名乗った人間がギルドカードの持ち主かどうかは一目でわかるようになっているのだ。

 

「ほら」


 少年が過度にこちらを警戒している事を理解するとタツミは首に下げていたカードを取り出し、自身の顔が映っている表面が見えるように差し出す。

 カードを確認した少年の瞳が大きく見開かれた。


「Aランクの冒険者!? なんでそんな凄い人がここに!? もしかしてギルドが先に手を打ってた?」


 顔に手を当ててぶつぶつと呟く少年を見て、タツミは何かが起きている事を改めて察するとギルドカードを仕舞う。


「すまないがお前が何を言っているのかよくわからない。そもそも今、ここにいるのは個人的な用事であってギルドとは関係ないんだ」

「ええ? えっと……あの、と、とにかく僕のカードもお見せします」


 タツミの言葉に混乱しながらも、自分のギルドカードを提示する少年。

 タツミはそれを受け取り、少年の名前が『キルシェット・レガナ』である事、Bランクの冒険者である事、カードに不審な点が無い事を素早く確認するとすぐに返却した。


「(Bランク冒険者……もしかして例の件の関係者か?) そもそも今の状況がさっぱりなんだ。出来れば説明をしてくれないか?」

「は、はい。えっと、僕は……」


 事情が呑み込めずに困惑しながらも説明を始めようとする少年。

 

「……っ!?」


 しかしタツミは少年とは別に近づいてくる気配を察知した。

 先ほどまでの恐怖を思い出してしまい一瞬だけ顔が強張るが、今度は身体が震える前に落ち着く事が出来た。

 浅く呼吸してからもう一度、『鷹の目』を使用、少年が走ってきた方向を見つめる。

 すると灰色の毛並をした狼が数体、こちらに向かって走っていた。

 いずれも目を血走らせ、正常な状態とは言えないような有様だ。


「ゆっくり話している時間は無さそうだ」

「えっ?」


 明らかに敵意を発している狼の群れの存在に、またしてもタツミの身体が震えそうになる。

 彼は反射的に先ほどのように全身の力を抜いた。

 あくまで自然体を維持したまま。

 目の前の少年に自分がどういう状態なのかを悟られないように。


 すると彼の身体はまたしても勝手に動き出した。

 腰の刀を引き抜き少年の脇をすり抜けて前に出る。


 勝手に動く身体に気持ち悪さを感じる。

 しかし冒険者として生きてきた記憶が、あちらの自分では決して体験出来ない殺伐とした記憶が、彼自身にその行動が正しい事を教えてくれていた。

 敵意を向けてくる狼『グレイウルフ』の群れは、スキルを使わなくとも視認できるほどの距離にまで近づいてきていた。


「構えろ。自分の身は自分で守ってくれ(そこまでの余裕なんて無いからな)」

「は、はひっ!?」

「?」


 素っ頓狂な声を上げる少年を訝しげに一瞥し、タツミは片手で構えていた刀を両手で握り正眼に構える。

 少年もナイフを抜くが、先ほどまでのタツミ同様に緊張している様で武器を構える動作はどこかぎこちない。


「落ち着け。敵を倒そうとは思わなくてもいい。自分の身を守る事に集中するんだ」

「ひゃ、ひゃい!」


 あまりにも期待できない返事だったが、しかしこれ以上会話を続けるだけの時間もない。

 タツミは少年の事を自分の意識の片隅に追いやり、迫りくる敵に集中する事にした。


 目測で二メートルと言うところで、群れの先頭を走っていたグレイウルフがタツミ目がけて飛び掛かってくる。

 獣特有の這い寄るような吐息が、彼の顔にかかった。

 次の瞬間。


「えっ……?」


 狼の身体は縦に真っ二つになった。

 少なくとも少年からはそうとしか見えなかった。

 仲間が一瞬で殺された事実に興奮していた群狼の動きが止まる。


 タツミがやったのは両手持ちの刀での唐竹割り。

 彼の動作があまりにも速過ぎて、少年はおろか野生の狼たちすらも何をしたのかがまったく見えなかったのだ。


「……(う、なんとか倒せた……)」


 タツミは内心で冷や汗を掻きながら残っている敵に集中する。

 周囲に響いていないか不安になる程に、タツミの心臓は早鐘を打っていた。


 戦う前に陥っていた緊張状態とはまた違う感覚。

 肉を裂く確かな手応え、『命を奪った』という感覚に落ち着きを取り戻していた心が、またしても荒れ始めていた。


「……(ボロが出る前に、仕留める!)」


 彼の意思に呼応して身体は最適の動きを行う。

 それは摺り足と言うにはあまりにも速過ぎる足捌きだった。

 仲間の死に未だ混乱している群狼に一瞬で肉薄、刀を水平にして横薙ぎに振るう。

 まとまっていた三匹を一撃で斬り捨てた彼は、残った敵に向かって正面から相対し即座に刀を構え直す。


「っせい!!」


 間髪入れずにその場で刀を二度、振り払う。

 剣閃をなぞるように発生する風の刃が、避ける暇も与えずに残っていた群狼二匹を斜めに引き裂いた。


 遠距離攻撃用のコマンドスキル『斬空ざんくう』。

 刃のある武器を装備可能な職業ならば使う事が出来るスキルだ。

 その気になればナイフでも鉤爪でも使用可能という非常に使い勝手の良いスキルと言える。


「っ……はぁ……(周囲に他の気配は……無い。なんとか、なったか?)」


 危機が去った事への安堵から膝の力が抜けそうになる。

 しかし赤の他人であるキルシェットがいる前で、それは出来なかった。

 出会ったばかりの人間に弱みを晒すわけにはいかない。

 

 Aランクの冒険者として戦いに慣れているよう振る舞うべくタツミはより一層、気を引き締めた。

 持っている刀を軽く振るい、付いた獣の血を払うと鞘に納める。

 自分が殺した狼の死骸をしばし見つめると気を取り直して、ぽかんとした顔のままこちらを見つめていた少年に声をかけた。


「怪我はないか?」


 タツミが確認した限り少年の方に狼は行かなかったが、ここに来るまでの間に怪我をしているかもしれない。

 そう考えての質問だったのだが、少年はぽかんとしたままで質問が聞こえているかどうかもわからない状態だった。


「おい?」

「えっ? あ、は、はい! なんですか?」


 再び呼びかけるとキルシェットは背筋を伸ばして直立不動になり、声を裏返しながら返事をする。


「いや怪我はないかと聞いたんだが……あとさっきも言ったが今の状況についての説明をしてくれないか?」

「あ……す、すすすみません! あ、えっと、カードを見てもう知っているとは思うんですけど、僕はキルシェット・レガナって言います。Bランクの冒険者グループ『青い兜』のメンバーです。職業は盗賊。怪我はない、です。助けてくださってありがとうございました!!」

「助けたのは成り行きで、だ。気にしなくていい。ともかくキルシェット、今どういう状況なのかを教えてくれ(……嫌な予感しかしないが)」


 タツミとしては狼を倒した事で、自分の戦闘能力の確認と言う目的は達成していた。

 新しい疑問が出てきた事もあり、これ以上積極的に行動を起こすつもりはなかった。

 想定した以上に恐怖や緊張が酷かった事もあり、本人の心情としては今すぐにでもホテルに帰りたいと思っている。


 とはいえこちらの世界のタツミとしての記憶によれば、Aランク冒険者が他冒険者の窮状を見過ごすのは良くない事だった。

 冒険者と言うのは荒事を生業にした職業であり、当人の行動やその良し悪しは独自の情報網を通じてすぐに広まってしまう。

 同業者が関わっている時は特にそうだ。

 ならばこそ悪評が立つような行動は控えなければならない。

 今の彼に進んで敵を作るような行動を取る事は出来なかった。


 そして何よりも。

 タツミはあちらの世界でもこちらの世界でも困っている人間を無視できるような性分ではなかった。

 あちらの世界で押しに弱いと評された事もある彼は、必死になって懇願されてしまえば断れない性質なのだ。


「お、お願いします。アスロイ村の救援に協力してください!」

「はっ? あ、ああ……」


 右手をがっしりと両手で掴まれ、すがりつくように懇願されたタツミは戸惑いながらも反射的に頷いてしまった。

 前言撤回しようと考えを巡らした瞬間、たった一日で聞き慣れてしまったサイコロが振られる音が耳に届く。


「っ……」


 サイコロの目は『5』。

 ただし今回の対象はタツミにではなく、キルシェットだった。

 不意打ちにも程がある出来事に反射的に驚きを顔に出さないよう堪える。

 その結果、出来てしまった一拍の間のせいでキルシェットの懇願に対して口を挟むタイミングを完全に逸してしまった。


 先のダイスロールはキルシェットにとって都合の良い展開を招き寄せたという事のようだ。

 その事とこれから何が起こるのかを考え、内心で陰鬱とした気分になりながら、タツミは気持ちを切り替えて情報収集に努める事にした。


「とりあえず、だ。村に行きながらでいい。事情を説明してくれ。何をするにしても情報が欲しい」

「はい! 実は昨日……」


 これから巻き込まれる事が決定した出来事を思い浮かべ、先ほどまでの過度の緊張とどろりと纏わりつくような恐怖心が彼の中に戻りそうになる。

 タツミはキルシェットから教えてもらう情報を整理する事でその事実から必死に目を逸らしながら、事態が大事にならない事をまったく信じていない神に祈った。

 半ば叶わないだろうと諦めながら。



 キルシェットの説明はこうだ。

 つい先日、急増する魔物襲撃に対する調査とアスロイの救援をギルドから依頼された。

 準備を整えた彼らは昨日、まず拠点を確保するべく村へと向かった。

 アスロイ村へ到着した時、村人はまだ被害を受けていなかった。

 しかし隣村は既に壊滅させられている事を知る。

 村の防衛と調査の二手に分かれて行動を開始した『青の兜』の面々。

 調査の一環として壊滅したという隣村へ偵察に向かったキルシェットを含んだ調査班は、明らかに通常の物と異なるスケルトンとフォレストウルフに遭遇。

 ありえない強さのスケルトンに翻弄され、命からがら退却した彼らはこの依頼が自分たちだけでは対処できない物だと判断。

 一番足の速いキルシェットをギルドへと使いとしてフォゲッタへ向かわせた。

 最初は魔物の襲撃を避ける為に、足音を消しながら森の中を進んでいたのだが先ほどのグレイウルフの群れと遭遇してしまい、走りやすさを優先させて街道に飛び出した。

 しかし敵の脚力がキルシェットの予想を上回る物だった為、引き離すことは出来たものの撒く事が出来ず。

 どうするか焦っていたところでタツミと鉢合わせて先ほどの顛末に繋がったのだと言う。



「なるほど。街で小耳に挟んではいたが……ギルドが認識してる以上に事態は深刻なんだな」

「はい。ゴダさんの毒の治療にフィリーさんが魔力をほとんど使ってしまって、半日も集中して魔法を使い続けた影響で今は休まれてるんです。ですからいざという時の回復役が医師のリドラさんだけでは心許ないし……」

「医師の治療は即応性に欠ける傾向があるからな。健康状態の維持や長期的な治療なら彼らほど頼りになる職業はいないんだが。事前準備で薬の調合や仕入れをしなかったのか?」


 医師という職業の本領は特性の薬の調合、一定間隔でパーティ全員のバッドステータスを治療するスキル『定期健診』などの特殊なスキル、また薬の仕入れ金額を職業熟練度に応じて安く出来るという点にある。

 ゲームでのスキルや職業の特性が、この世界でも効果がある事をタツミは知っている。

 Bランクの冒険者ともなればベテランと言ってもいい。

 タツミの感覚から言えば、クエストに向けた事前準備を怠るとは考え難かった。


「……回復薬や毒の治療薬はフィリーさんの魔法治療と併用してほとんど使ってしまったんです。ハイポーションとかかなりの量を仕入れていたんですけど。ギースさんとゴダさん、それに元々アスロイ村に運び込まれていたフィンブ村の生存者の人達の手当てにも使ってしまって」

「魔法と薬の相乗効果でやっと治療できるほどの毒、か。その規格外のスケルトンは相当厄介みたいだな(……スケルトンに麻痺付与武器を装備した奴なんていなかった。いやそれを言うなら亡霊、怨霊系の魔物はこの辺りには出てこないはず)」


 タツミ自身が持っているこちらの世界で生き抜きながら得た知識を基本としてゲームとしての知識を照らし合わせて考察する。

 ゲームと現実を一緒にするつもりは彼には無い。

 しかし今の所はゲームの知識が、この世界でも通用する事がわかっている。

 なので過度の依存はせず参考情報程度に持っている知識を利用しようと決めていた。

 スキルや職業の特性など大まかでも役に立つ情報は大量にあるのだ。

 利用しない手は無かった。


「村まであとどのくらいだ?」

「このペースだとあと15分くらいです」


 キルシェットのペースに合わせて周囲を警戒しながら歩く事10分。

 情報交換と、先ほどまで全力疾走していた彼の体力回復に務めながらの移動は思いのほか遅い。

 しかしお蔭で緊張と疲労で青くなっていたキルシェットも走る程度には体力を戻す事が出来ていた。


「少し急ごう。走れるか?」

「はい、アスロイまでなら大丈夫です!」

「わかった。それじゃ行くぞ!」


 溌剌とした彼の返事にタツミは口元を僅かに綻ばせながら駆け出す。

 キルシェットも彼の後に続いた。


 長い一日はまだ始まったばかり。

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