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ダイスと共に世界を歩く  作者: 黄粋
第三章
39/208

彼が持つ力、そして決着

 光線が放たれる直前、タツミが考えたのは『どうやれば自分たちの命を守れるか?』という物だった。

 

 足の自由を奪われてしまった為に避ける事は出来ない。

 咄嗟にオイチを抱え上げてしまった為に自由にできるのはせいぜい片腕のみ。

 限定された状況で、自分たちの命を守る為に何が最善かを彼は必死に考えていた。

 

 死に直面した彼の非常に高いレベルで集中しており、タツミの身体のスペックも相まって体感時間が引き延ばされるほどの集中を可能にする。

 彼の視覚情報では全ての動きがスローモーションに見えていた。

 しかし彼にそれを意識する余裕は無い。

 彼はその世界に身を置いた状況をも無意識に利用し、必死に考え、そして。

 この世界に来た当初に『目立たない為』にと己に課した制限を解く事を決めた。

 

「(目立ちたくないからなんて理由に縛られて誰かの命を守れなかったなんて結果があっていいはずがないだろうがっ!!)」

 

 引き伸ばされた時間が続く中でステータスを開く。

 職業項目を選択し、『大将軍』よりも防御力に秀でる『ある職業』に変更し、決定ボタンを押すイメージを浮かべた。

 

「死ぬわけにも、殺されるわけにもいかないんだよぉっ!!」

 

 その場にいた全ての人間の視界が緑色の光に遮られる寸前、タツミの服装が変化した。

 東洋甲冑と装備していた刀が光と共に消え、代わりに彼の身体を覆うのは黒を基調とした重厚な西洋甲冑と全身を隠してしまえるほど巨大な盾だ。

 彼は防御に特化した能力を有する『重戦士』に職業を変更していた。

 

 腕に抱いていたオイチをさらに抱え込み、緑色の砲撃の前に盾を構える。

 

「ううううおおおおおおおおおお!!!」

 

 砲撃の轟音のせいで彼の叫び声は誰の耳にも届かない。

 しかしその気迫の防御は、砲撃のダメージを大幅に軽減する事に成功した。

 

「がぁあああああ!!!」

 

 砲撃の威力に負けてまず盾が壊れ、次に鎧が砕け、そして壁を突き破って監視所の外へと吹き飛ばされる。

 しかしタツミは水平に吹き飛びながらもオイチを離さず、致命傷を与えるだろう攻撃から彼女を守り続けた。

 

 目まぐるしく回る視界。

 上も下もわからないほどに激しく全身を揺さぶられながら、タツミは地面を転がり、監視所の近くにあった建物の壁にぶつかった所でようやく止まった。

 

「げぼっ!」

 

 思わず出た咳と共に血が出る。

 どこか内臓を痛めたのだろうとタツミは察し、口の中に広がった血を唾と共に吐き出した。

 

「オイチ……無事、か?」

 

 腕の中で荒い呼吸を繰り返す女性に声をかける。

 彼が全力で守ったとはいえ、彼女もかなりのダメージを負っていた。

 彼女に似合っていた綺麗な着物も今は所々が破けて酷い有様になっている。

 彼女のそんな姿を見てタツミは怒りで目の前が真っ赤になった。

 

「う……」

「っ……! 無理にしゃべるな」

 

 オイチのうめき声を聞いて、どうにか怒りに蓋をすると彼は腕の中のオイチをそっとその場に横たえた。

 改めて彼女のステータスを確認する。

 キルシェット同様、詳細まで確認できるオイチの体力はほとんど残っていなかった。

 ゲーム的に考えて彼女の職業である『姫君』はタツミに比べて体力的にかなり劣る。

 光線で受けるダメージのほとんどからタツミが庇ったとはいえ、それでも重傷と呼べる程のダメージになってしまったのだ。

 

「(盾を構えた右腕は……力が入らないか。身体は……どうにか動く。装備は……盾が全壊、鎧もほとんど壊れてもう防御力は残ってない。重戦士の防御力でもこの有様……あの光線、なんて攻撃力だ)」

 

 いまだふらつく頭をむりやり働かせ、どうにかアイテムリストをイメージする。

 ハイポーションを選択するとまだ使える左手の中に光と共に細長い小瓶が出現する。

 

「オイチ。飲んでくれ。出来るか?」

 

 蓋を開いた小瓶を口元に押し当て、ほんの少し液体が流れ込むように傾ける。

 口に入る液体に、オイチはうっすらと目を開けるがタツミの姿を確認すると安心したように液体を飲み込み始めた。

 どうにか物が飲める状態ではあるらしい彼女の様子に彼はほっと息をつく。

 

 しかし彼の気の緩みを叱咤するようなタイミングで轟音と共に監視所の中からあの光線がまた発射された。

 天高く雲すら引き裂く緑色の光線、タツミが意識を研ぎ澄ませると断続的に聞こえてくる怒号や金属音が確認できた。

 それらが戦いがまだ続いている事を彼に教えてくれる。

 

「くっ、戻らないとまずいがオイチをここに置いていくわけにも……んっ?」

 

 近づいてくる複数の足音と気配に彼は気付いた。

 同時に彼の脳裏で舞うサイコロ。

 結果は『5』だった。

 悪くない方の結果に安堵しながら彼は止めていた思考を再開する。

 

「(これだけ騒いでいれば人も来るか。国軍だと状況が悪化するんだが……ダイスの結果が良かったからそれは無い、はず)」

 

 彼はふらつく足に喝を入れて立ち上がり、念のために気配が近づいてくる方向からオイチを庇うように身構えた。

 

「こ、これは一体……」

 

 集団の先陣を切って現れた男性は監視所内部から空けられた風穴に驚き、さらに断続的に発射される光線に慄く。

 その男の風貌がトラノスケから聞いていたギルド長の物と一致している事にタツミは気がついた。

 

「もしかして……トラノスケとキルシェットが助けたギルドの方々ですか?」

「むっ!? 貴方は? 見たところ酷い傷を負われているようだが……申し訳ないが何者か教えていただけるだろうか?」

 

 声をかけてきたタツミと彼が背後に庇っているオイチの姿を見て男性は目を丸くする。

 しかしすぐに表情を改めると警戒した様子でタツミたちに相対する。

 

「俺はAランク冒険者のタツミ。貴方たちを助けたトラノスケやキルシェットとパーティを組んでいる者です。これで証明になるとおもいますが」

 

 左手で懐に手を入れ、ギルドカードを彼らに見えるようにかざす。

 遠目でもカードの内容が確認できたようで、男性は1つ頷くと今度は自分の身分を証明する為にギルドカードを提示した。

 カードにはギルドマスターを示すMの表示と『マルド・ロックフィールド』という名称が記されている。

 カードは持ち主以外が持つと特殊なアラームを鳴らす。

 彼がギルドマスター本人である事はカードが提示された時点で確認できたという事になる。

 

「確認できますか?」

「ええ。……確認しました」

 

 相手の正体が確認できたところでタツミは構えを解き、その場に膝をついた。

 マルドは後ろに控えていた冒険者たちに目配せし、回復できる僧侶や医師と共に慌ててタツミたちへと駆け寄り、他の戦える冒険者たちは未だに轟音が続く監視所にどうやって突撃するか打ち合わせを始めた。

 しかしタツミは自分に杖をかざそうとする僧侶たちを手で制し、オイチを指差す。

 

「俺よりも彼女の治療を先にお願いします」

「ふむ。仲間が心配だという気持ちはわかった。しかし君もすぐに治療したほうが良いレベルの重傷を負っている」

「それでも彼女を先にしてほしいんです」

 

 ステータスで見える数値的に考えるとタツミよりもオイチの方が死に近い。

 何が起こるかわからない状況で、即死しかねない体力であるのは非常に危険だ。

 だからこそ彼はオイチの治療を優先するよう願い出ていた。

 

 僧侶の男性はタツミに主張を取り下げるつもりがないと察すると短いため息と共にこう提案した。

 

「ならば妥協案として私が君の治療をする。他の者たちには彼女の治療に行ってもらおう」

「……わかりました。それでお願いします」

 

 回復が出来る者たちのレベルがほぼ横ばいであり、いずれも優秀な回復役である事を確認したタツミは彼の提案を受け入れた。

 宣言通りその男性のみがタツミの元に残って魔法による治療を始め、他の医師、僧侶たちがオイチの治療へ向かう。

 その様子を尻目にタツミはマルドへ質問を投げかけた。

 

「なぜここに?」

「トラノスケ君に君たちが南監視所に向かったという事は聞いていたからな。そこから尋常ではない魔力が放出されれば駆けつけもするさ。連れてきたのは一部の者だけで他は予定通り盗賊ギルドの摘発、国軍の末端兵士の牽制を行ってもらっているがね。……しかしまさかAランク冒険者がここまで手を焼くような者がいるとは正直思わなかったよ」

「敵は相当な実力を持った虫使いです。人の身体に虫を寄生させ操る事も出来るし、自分の身体も改造しているようです。さらに瘴気に憑かれている可能性が高い。最大限の警戒をお願いします」

 

 上級回復魔法『ハイヒール』の暖かな光を受けてタツミは右腕の感覚が戻っていく事を感じ取りながら、マルドへ自分が知る情報を説明する。

 彼からもたらされた情報にマルドと僧侶の男性は驚きに目を見開いていた。

 

「人間に寄生できる虫を操る虫使いっ!? しかも瘴気に憑かれている!? なんと危険な……」

「本人は自分が今回の件の黒幕だと言っていましたが、正気を失っている可能性が高く事の真偽は不明です。実行犯は奴で間違いないとは思いますが……っ!?」

 

 彼らの会話をぶった切るように轟音が響く。

 そして監視所の壁に新しい穴が空き、2人の人間が外へと吹き飛ばされてきた。

 

「ごほっ、がはっ」

「ぐ、うう……」

 

 地面に叩きつけられたのは数え切れないほどの切り傷や刺し傷、打撲を負ったキルシェットとトラノスケだった。

 タツミはせっかく閉めた蓋から溢れ出しそうになる怒りを無理やり押さえ込み、声を上げた。

 

「トラノスケ!! キルシェット!!」

「なっ!? トラノスケ君っ!? キルシェット君もっ!!」

 

 治療の為に動けないタツミに変わりマルドが2人に駆け寄った。

 ボロ雑巾のような2人の姿に驚くもすぐに彼は上級回復魔法『ハイヒール』を使用する。

 傷の1つ1つはそれほどの深さではなかったようですぐに塞がっていく。

 しかしマルドは彼らの傷を見てある事に気づき、顔をしかめた。

 この傷は『故意に浅く、致命傷にならないように付けられた傷』だと。

 

「倒せる相手をわざといたぶっているのか?」

「そ~のとおりで~す!!」

 

 既に穴だらけになった監視所に新たな風穴を開け、虫使いがその場に現れる。

 その両腕は蟷螂の腕のように刃物の形へ、その足はバッタを彷彿とさせる細いが力強い物に変化していた。

 突入しようとしていた冒険者たちがその異様な姿を警戒しそれぞれが武器を構えるが、虫使いは彼らに見向きをせずにマルドに視線を向けていた。

 

「あんた、よくわかったねぇ? 俺がそこの2人で遊んでたって」

「……職業柄、拷問や尋問などに立ち会う事も、下種な思考を持った人間と関わり合う事も多いのでね。経験則と言う物だよ」

「へぇ? すごいすごい。ま、どうでもいいけどさ。そ~れ~よ~り~も~」

 

 虫使いは視線をマルドからタツミへと移す。

 どこかねっとりとしたその視線は生理的嫌悪を及ぼす物だが、タツミは気圧される事無く立ち上がり彼を睨み返した。

 治療をしてくれた僧侶に離れるよう伝え、虫使いに向かってゆっくりと歩き出す。

 

「あんたまだ生きてたの? 粘るねぇ。いいよ、殺し甲斐がある」

「そいつはどうも」

 

 心の底から楽しそうに嗤う男に適当な返答を返しながらタツミは大きく深呼吸をすると、自身の気配察知の感覚を最大限に広めた。

 

「(周囲に虫は……いない。監視所の中にも……)」

「あ、たぶん虫を警戒してるんだろーけど意味ないよ。そっちの奴らが全部殺してくれちゃったから」

 

 タツミが何を警戒しているかを察した虫使いは実にあっさりと虫が残っていない事を暴露した。

 

「いやぁほんとよくやってくれたよ。よっぽどあんたらを殺したのが頭に来たんだねぇ。まぁ生きてたけどさ。爆弾やら飛び道具やらナイフやらで串刺し爆殺八つ裂きなんでもありって感じ。むかついたからついつい死なない程度に痛めつけたりしたけどさぁ。それ抜きにしても派手にやってくれてさぁ」

「そりゃありがたい。お蔭で……俺はお前1人に集中できる」

「……っ!?」

 

 タツミは両手の動きを確認するように握り、そして開くと腰を落とす。

 オイチ、キルシェット、トラノスケを、仲間を痛めつけられた事で感じていた怒り。

 その蓋を彼は取り払い、隠す事無く表に出したのだ。

 虫使いは目の前の男の雰囲気が変わった事を察し、浮かべていた笑みを消した。

 

「けっこうボロボロに見えるけど……まさかそんな状態で俺に勝つつもり?」

「……ああ」

 

 虫使いの問いかけに答えると同時にタツミの全身が光に包まれる。

 

「っ!?」

 

 驚きながらも両腕を振り上げ、迎撃する姿勢を取る虫使い。

 しかし光が消えた瞬間、地震のような地面を蹴る音がその場の全員の耳に聞こえたと思った時にはタツミの姿は消えていた。

 

「はっ? おぶぇっ!?」

 

 間の抜けた声を上げると同時に虫使いの腹部に衝撃が走る。

 肺の中の酸素を強制的に吐き出させる程の力で、瞬く間に接近した胴着を着たタツミの蹴りを食らったのだ。

 

「で、でめっ!!」

 

 突如、目の前に現れたタツミに虫使いは怒りのまま蟷螂の腕を振るう。

 しかし腕が振り下ろされた場所には地面を蹴った後と思われる足跡だけがあり標的の姿はなかった。

 

「な、なん、でぇっ!?」

 

 訳が分からず目を白黒させる男の頬にタツミの右拳が突き刺さる。

 衝撃にぐらりと上体を揺らがせた虫使いの顎をさらに拳で打ち抜く。

 上向きの衝撃で浮き上がった男の身体にタツミはコマンドスキルで追い討ちをかけた。

 

「『爆烈拳』」

 

 両拳によるラッシュが男の身体を乱打する。

 

「うごげがぐがががががっ!? ぐっ……てめぇ!!」

 

 普通の人間なら気絶どころか一生目が覚めなくなってもおかしくない威力の拳の嵐を受けたというのに驚異的な耐久力で意識を保っていた。

 男は両腕を砲撃の形へと変化させその砲門をタツミに向ける。

 砲門に光が収束し始めるが、しかし今のタツミにはその動きは止まって見えた。

 

「うごぇっ!?」

 

 回し蹴りが虫使いの横腹に突き刺さり、受身も取れずに監視所の外壁に激突する。

 

「まだ終わらないだろ? とっとと立て」

「がぁあああああああ!!!」

 

 外壁を砕いた事で発生した土煙を振り払いながら虫使いは立ち上がった。

 タツミの攻撃を受けた部位にくっきりとした痣が出来ており、ダメージが残っている事を物語っている。

 

「あああああああああ!!! てめぇ、なんなんだよぉ!! さっきまでと全然動きがちげぇじゃねぇか!?」

 

 虫使いの絶叫を伴った怒号を聞き流しながら、タツミはステータスを操作し、さらに職業を変更した。

 

「ただのAランク冒険者だ」

 

 光に包まれ彼の姿がまたしても変わる。

 キルシェットのような身軽な服装に変わったタツミは両腰に佩いた幅広のナイフを引き抜いた。

 

「ここから先、お前の思い通りになる事は何一つ無いからそう思え」

 

 そして音も無く姿を消す。

 先ほどまではあったはずの地面を蹴る轟音もしなかった。

 コマンドスキル『気配遮断・上級』と『スニーキング』を併用した効果だが、それが理解できる人間はいない。

 彼に注目していたその場の全員が、彼を消えたとそう認識してしまった。

 

「どこ行ったぁ!! くそ、がぁあっ!?」

 

 虫使いの絶叫に全員の視線が集まる。

 そして彼らはいつの間にか男の左腕が地面に落ちている事に驚愕する。

 

「何だよ!? 何なんだよぉおおおお!! あぎぃやぁあああ!!!」

 

 叫び手当たり次第に腕を振っていた男の右腕が中空を舞った。

 

「ああ!! ああ、もう!! どうでもいい、もう全員死ねよぉおおおおおお!!」

 

 人並み外れた跳躍力で虫使いは頭上へと跳躍する。

 30メートルはくだらない距離の跳躍、そして男は口を大きく開いた。

 緑色の光が集まる事に冒険者たちは戦慄する。

 

「あの光線をここに向かって撃つつもりか!! 怪我人を連れて退避しろ、急げ!!」

 

 マルドの指示に一も二もなく従い、数人がかりでオイチたちを担いで走りだす冒険者たち。

 

「っつ! タツミ君!」

 

 全員が駆け出した事を確認し、その場を離れようとしたマルドの目に頭上の虫使いを見上げてその場を動こうとしないタツミの姿が映った。

 

「何をしているんだ! 逃げたまえ!!」

「必要ありません。俺がここにいれば奴は真っ先に俺を狙いますから」

 

 彼の身体が光に包まれる。

 その不可思議な光景を疑問に思うよりも早く、光は散り中からタツミが姿を現した。

 東洋甲冑を装備したその姿は、タツミの雰囲気と相まって質実剛健の言葉を体現したかのような威圧感を放っている。

 

「これで終わりにしてやる」

 

 彼は頭上に手をかざす。

 その手に光が集まり、それは細長い筒のような物を形取る。

 火縄銃『鬼殺し』。

 

「死ねぇえええええええええ!!!」

 

 今までに無い規模の光線が男の口から放たれる。

 タツミは鬼殺しの銃口を向かってくる光線に向けると銃に魔力をたらふく注ぎ込み、そして引き金を引く瞬間。

 またしてもダイスが舞った。

 結果は『2』。

 しかしタツミは冷静にコマンドスキル『運命逆転』を使用した。

 結果が『5』へと変化する。

 そして引き金が引かれ、真っ白な閃光が銃口から放たれた。

 注ぎ込んだ魔力以上の魔力の放出が行われ、タツミの足が地面に深く沈み込む。

 それは緑色の閃光とぶつかり合い、一瞬だけ均衡状態を作り出すと、緑を飲み込んで虫使いの元へ直進していった。

 

「はぁああああああ!?」

 

 虫使いの驚愕の声すらも飲み込んで白い閃光は斜線上にいる物全てを消失させる。

 

「ふ、ざけ……」

 

 虫使いの口は最後まで言葉を紡ぐ事無く光に飲み込まれ、そして消えていった。

 

 後に残ったのは切り落とされた人間大の蟷螂の腕と、火縄銃の一撃の余波が巻き起こした周囲への被害。

 そして虫使いの消滅を確認すると同時にその場に座り込んだタツミと彼を呆然と見つめるマルドの姿だけだった。

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