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ダイスと共に世界を歩く  作者: 黄粋
第二章
17/208

アギ山へ

 突如として現れた東洋甲冑の男、タツミはあっという間にアーリを抜き去り上段に構えていた刀を振り下ろす。

 

「はぁああああ!!!」

 

 一刀の元にリザードマンが斬り捨てられ、即座に下ろした刀を返した。

 斜めに切り上げられた剣閃が二体、三体、四体、五体と次々に敵を切り伏せていく。

 

「なっ……」

「凄い……これがAランク冒険者の実力」

「(さすが……タツミさん)」

 

 呟く言葉と内心の気持ちはまさに三者三様であったが、人型の魔物の中では上位に当たる防御力を持つリザードマン種の鱗を紙切れのように切り裂くその姿を全員が唖然としながら見守った。

 彼女らが気を取り直して加勢するまでしばらくの時間を要する事になる。

 そして彼女たちが動き出す頃にはほとんどの蜥蜴が地に伏していた。

 

「ふぅ~~~」


 周囲に敵と思しき気配が無い事を『気配察知』で入念にチェックし、タツミは大きく息を吐きながら刀を二度ほど振って緑色の血を払い、鞘へと収める。

 兜を脱ぎ、腰に括り付けると彼は合図の主である3人組に視線を向けた。

 

「大丈夫ですか?」

「あ、ああ。こちらは大事ない。迅速な救援、感謝する」

 

 圧倒的な強さに気圧されたのか、アーリはまだ戦えるとルンを怒鳴った時と違い、大人しい態度で礼を述べた。

 

「アーリが上手く立ち回ってくれたから、怪我と呼べるような物は無いわ。心配してくれてありがとう」

 

 自身の時と打って変わった彼女の態度に苦笑いを浮かべながら礼を言うルン。

 

「……」

 

 2人に倣うようにカロルはタツミを見上げ、深々と頭を下げた。

 しかし彼は頭を上げると何か言いたげにタツミを見つめる。

 

「? 俺に何か用でも? (この視線の感じ……どこかで?)」

「……」

 

 訝しげに問いかけるも少年から回答は無い。

 あまりにも無言のまま見つめてくるその様子に「何か言うべきだろうか?」とタツミが考え始めたその時。

 

 「おーい!」

 「無事かっ!!」

 

 遠くから声と共に喧騒が近づいてきた。

 全員の視線がそちらに向かい、カロルとタツミの間に流れていた微妙な雰囲気は霧散してしまう。

 

 タツミ以外の3人が近づいてくる足音や聞き取れないが聞こえてくる声に警戒心を抱く中で、タツミはその気配が何者かを確認し始めた。

 『気配察知』は敵意などの感情によって敵か味方かを判断する便利なパッシブスキルであり、スキルの射程範囲にいるのであれば、姿が見えない相手であっても関係なく察知出来るのだ。

 

「他の冒険者たちが来たみたいだ……」

「わかるのか!? まだかなり距離があるようだが?」

 

 足音や気配だけでは何者か判断できない距離。

 だと言うのに近づいてくる気配を味方だと断言した彼に、アーリは驚きと懐疑の声を上げる。

 

「ええ、まあ」

 

 追求を避けるように言葉を濁しながら頷くタツミ。

 彼の言葉に同調するようにルンの腕に絡み付いていた蛇が一鳴きした。

 

「あら、リューも人間が来たって言ってるわ。魔物よりも探知能力が高いなんで凄いわねぇ」

「それなりに修羅場を潜っているので。とりあえず他の冒険者たちと合流するべきだと思いますが何か異論はありますか?」

 

 タツミは彼女の賞賛を肩を竦しながら受け流すと、今後の動向を提案する。

 全員が無言で頷き、反対意見が出ることはなかった。

 

 

 

 駆けつけてきた他の冒険者たちと合流したタツミたちはリザードマンの群れが現れた事実を伝えた。

 その場で臨時会議が行われ、アギ山方面の捜索を強化する方針が決まる。

 リザードマンの群れの下山と人里への接近が瘴気に関連した物なのかどうかは不明だが、魔物が襲ってくる可能性があるのならば、たとえ瘴気と関係が無いとしても捨て置く事は出来ないという結論になったのだ。

 

 しかし時間は既に予定していた捜索時間である4時間に近づいてきている。

 経過報告の意味も兼ねて一度、村に戻るべきではないかという意見もあった。

 そこで総合的に探索能力の高い冒険者グループ4組がこのままアギ山への偵察に向かい、残りの5組とタツミは探索を中断、当初の予定通りに拠点であるアスロイ村へと報告に戻る事になった。

 アギ山に向かうグループはあくまで偵察であり、リザードマンを発見しても深追いしない事を意思確認している。

 冒険者とて人の子だ、自分の命は惜しい。

 タツミが語る瘴気を纏った魔物の凶暴性を彼らは真摯に受け止め、決して無理はしない事をお互いに誓い合った。

 

 アスロイに戻った冒険者たちは村の守りに就いていた者たちを集め、リザードマン襲撃について情報を共有。

 この辺りにいるリザードマンは滅多な事では自分たちの領域であるアギ山から出てこない事を、村長を含め村の住民もよく知っており山で異常事態が起こっている可能性が高いという結論が出た。


 まだ瘴気の存在は確認できてはいないが、単純な数の差を覆す存在が乱入してきたにも関わらず、逃亡も考えずに襲い掛かってくるリザードマンたちの姿とその血走った目は、スケルトンの瘴気に触れて気が狂った魔物たちと非常に酷似している。

 アギ山の異常事態が瘴気に関連する物である可能性は限りなく高いと考えられていた。

 そして瘴気により魔物が強化される事実は、今回の件に関わった全員が知っている事だ。

 否応にも緊張感は高まっていった。

 

 

 現在時刻は12時過ぎ。

 アギ山へはアスロイ村から3時間の距離がある。

 村にいる冒険者たちは交代で食事を取り、先に戻ってきた探索グループは食事を終えた者たちからアギ山の探索に向かう事になった。

 

 最初に食事を取る事になったのはタツミと彼が助けに入った3人組の冒険者たち。

 彼女らはせっかくだから交流を深めようと彼を食事に誘ってきた。

 特に断る理由も無い為、タツミは彼女らと同行している。

 冒険者たちに開放された民家で腰を落ち着け、改めて名乗り合う。


 彼女らはBクラス冒険者グループ『アルカリュード』。

 3人は西の大国『ディンエスト』出身でパーティを組んで5年経っているのだという。

 元々は6人のパーティだったがメンバーがそれぞれの事情で抜けていき、新しいメンバーを探しながらグランディアまで足を運んだという話だ。

 

 

 槍を使っていた女性の名は『アーリ・クレイドル』。

 女性用の軽装鎧を着込んだ一般的な女性と比べると背の高い女性だ。

 切れ長の瞳が彼女自身の生真面目そうな雰囲気を増長させ、ミディアムストレートの青がかった黒髪はよく手入れされているのか、時折日の光に照らされて輝き人の目を惹きつける。

 鎧の隙間から見える焼けた小麦色の肌は健康的な色気を感じさせるが、本人の放っている実直な雰囲気が相殺していた。

 手足の長いスレンダーな体つきとしなやかな動きで槍を操る姿は獲物に飛びかかる豹を連想させた。

 

 蛇を腕に絡ませ自身の手足のように操っていた女性は『ルン・ダゴード』。

 全身を分厚いローブで覆い、フードまで被って顔をも隠すその姿は一見すると不気味に思える。

 しかしフードから零れる薄茶色の長髪、紫色のルージュが引かれたぽってりとした唇、僅かに見える白い肌、ローブの上からでも理解できる抜群のプロポーションが彼女の怪しさを妖しい魅力へと書き換えていた。

 時折、ローブの裾から顔を出す蛇の姿も、彼女の艶かしさを強調するアクセントと化している。

 その1つ1つの所作も見る者の目を引く物で、なかなかに刺激が強かった。

 タツミとて冒険者としての経験と二日酔いすらも無効にする常時発動のパッシブスキル『状態異常無効・上級』が無ければ彼女に目を奪われていたかもしれない。

 

 魔法使いの少年は『カロル・カレリィ』。

 西方の辺境にひっそりと存在する人里に住んでいた少年で年齢は今年で12歳。

 外の世界への憧れから里を飛び出し、現在は彼の両親と懇意にしていたルンの元に転がり込み、2年前からアルカリュードに身を置いている。

 ぱっちりとした丸いこげ茶色の瞳に小柄な体型、二次性徴もまだで肉付きも良くないのか、見た目は非常に中性的だ。

 魔法についての知識は大人顔負けで、現段階で初級から中級、さらに補助系統まで完璧に扱えるという。

 この年で既に魔法使いを極めつつあるという才能の塊のような子供だ。

 さらに本人も極めて勤勉で努力家だと言うのだから、先が楽しみというよりは恐ろしくすら感じられる。

 

 

 4人は家事が得意な防衛グループメンバーが作ったシチューに舌鼓を打っていた。

 美味しい食事という物は食べていると気分を良くし、人の口を無意識に軽くする物だ。

 彼女らはAランク冒険者としてのタツミの事を知っていたようで、この大陸では珍しい東洋甲冑の事や行方不明になっていた2年間何をしていたのかをここぞとばかりに尋ねてきた。

 ややこしい事情は省いて2年間、異大陸ヤマトにいた事を話すとどういう大陸なのかという話になり、食事をしながらの談笑はさらに盛り上がりを見せる。

 そんな他愛のない談笑の延長でタツミはルンに出会った時から気になっていた事を聞いた。

 

「ルンさんは『魔物使い』なんでしょう? 瘴気の事を知らない訳が無いと思いますが、よく今回のクエストを受ける気に……いや、よくその蛇を連れて来る気になりましたね?」

「……瘴気は近寄りすぎると悪影響を及ぼす。その影響は魔物の方が顕著に出る、っていう話の事よね?」

 

 聞かれる事を想定していたのだろう。

 彼女は余裕のある笑みを浮かべるとすらすらと彼の疑問に答えた。

 

「私とこの子は生まれた時から一緒にいるの。だからもしこの子が狂ってしまったら、その時は命を賭けて止めるわ。最悪の場合も……覚悟してる。まぁそんな事になったらまず私が死ぬでしょうけど、ね」

 

 魔物使いにとって魔物は最大の武器であり、生涯を共にする『相棒』である。

 たとえ連れて行く事にリスクを伴おうとも『決して離れない、離れられない存在』なのだ。

 ゲームにあった各職業の説明を思い出しながら、タツミはルンに頭を下げた。

 

「……魔物使いにとって自分の魔物は特別な存在だという事を忘れていました。くだらない質問をして、申し訳ない」

「気にしてないわ。同業の人間じゃないとこういう矜持みたいな物はなかなか理解できないでしょうし、危険を避けようと思うのは当然の事だもの」

 

 クスクスと異性を惹きつける艶やかな笑みを浮かべ、腕の裾から顔を出したリューの頭を撫でながらシチューの具を食べさせている。

 まるで我が子のように蛇を可愛がり笑みを深くしたルンに釣られてタツミも口元を緩めた。

 

「くっ、私も『ドラード』を連れてきたかった!!」

 

 突然、対面の席から聞こえてきた声にタツミは目を瞬かせながら視線を向ける。

 そこにはルンとリューの仲むつまじい様子を穴が開く程に羨ましそうに見つめているアーリの姿があった。

 

「あの子、今出産を控えた大事な時期でしょう? 無理させず大事を取るのは当たり前の事じゃない」

「それはわかっているが……やはりあいつがいてくれるのとそうでないのとでは勝手が違う。これでは存分に戦えないぞ」


 不満そうに口を尖らせるアーリの姿は先の戦闘時のキビキビとした堅物めいて見えた印象を覆す幼さを感じさせた。

 それだけドラードという存在が彼女にとって大切だと言う事なのだろう。

 

「ドラード、と言うのは? 名前と話の流れから察するにアーリさんの魔物の事だと思いますが?」

「ああ、私の相棒の使役竜だ。しかし少し前に発情期を迎えてな。数日の間、自由にさせて戻ってきたら……番いを作っていた。それでまぁ、あれよあれよと言う間に戦いに連れ出すには厳しい年月が経ってしまった。もうすぐ、遅くとも数週間後には出産だと言う事だ。だから今回のクエストには連れて行くことが出来なかった。高い金を払ってここらで一番腕利きの魔物専門の医師に預けたが……うう、今頃どうしているのだろうか? 寂しさと心細さに泣いていないだろうか?」

 

 先ほどルンとリューの仲の良い様子を見ていたが、フォゲッタにいる使役竜を思って今にも泣きそうになっているアーリも相当な相棒好きだと言う事がよくわかる。

 タツミは公園で遊んでいる子供を優しく見守るような心境になって彼女に暖かい視線を送った。

 

「というか貴方がドラードの為に大枚叩いたから私たちの生活費が苦しくなって今回の依頼受けたのだけど?」

「だってだって! 初めての出産なんだぞ!! 出来るだけ万全の環境でやってやりたいだろう!?」

「まぁ私もリューがそういう事になったらたぶんお金使っちゃうわねぇ」

「そうだろう! 大事な相棒の事で妥協なんて許されん!!」

 

 お互いの魔物についての話(大半は惚気話のようだ)に入ってしまったルンとアーリ。

 気持ちよく話をしている所を邪魔をする事もないと考え、食事に没頭するタツミの服を誰かが引っ張った。

 隣の席に座っていたカロルである。

 黙々と食事を取っていた印象のこの少年は、出会った当初から妙に友好的な視線をタツミに向けていた。

 その理由がわかるかもしれないと思いながら、タツミはカロルと視線を合わせる。

 すると彼の頭に直接、声変わりもしていない子供の声が響き渡ってきた。

 

「……(念話で失礼します。あらためまして僕の名はカロル・カレリィ。以前、貴方に助けていただいたサレス族の者です)」

「サレス族。……ああ、魔法の威力を高める為に呪文以外の言葉を発する事を特殊な呪法で禁じているあの一族の……。そうか、だから喋らないんだな。納得したよ」

「……」

 

 自身の一族の事を知っていた事が嬉しいのかカロルはコクコクと頷いた。

 

 カロルが言っている助けたと言うのは『サレス族に大陸で蔓延している流行り病の特効薬を届けよ』というクエストを受けた時の事を指している。

 排他的というわけではないが、その特殊な風習の為に意思疎通が取りにくいサレスの民たち。

 流行り病は病気その物の体内潜伏期間の長さと症状発見の困難さから気付いた時には自力で動く事もできなくなってしまう。

 運の悪い事にサレス族はほとんどの住人が次々と発症し、自分たちで対策を取ることが出来なくなってしまったのだ。

 基本的に会話によるコミュニケーションが出来ない事に加え、依頼その物も病気に罹らなかった僅かな者たちが行った物の為に彼らの裁量で出せる報奨金も少ないという有様。

 さらにかなりの辺境にある里に薬を届けるのは下手なダンジョン攻略よりも難しく、冒険者にとってかなり割に合わない依頼となってしまった。

 ギルドにも相談し、報奨金や報酬はギルドからある程度の上乗せが行われたがそれを踏まえても依頼を受ける者がいるかどうかという状況だった。

 そんな依頼を受けたのが当時、Aランクに成り立てだったタツミであり、サレスの民たちからすれば彼は正に命の恩人なのだ。

 

「しかし念話を使うサレス族がいるとは……俺が彼らの里に行った時は皆、筆談か身振り手振りで意思疎通していたんだが」

「……(僕は里でも特別に魔力が高かったので日常的に念話が使えるんです。ただ話したい相手と目を合わせないと使えないので日常会話が精一杯ですし、やっぱり魔力を消費してしまうので普段はなるべく使わないようにしています。僕自身も症状は軽かったんですが寝込んでいたのでタツミさんが来られた時はお会いする事が出来ませんでした)」

「そうなのか。あれは仕事としてやったんだ。正直、そこまで恩義を感じる事はないぞ?」

「……(……僕も、僕の両親も病にかかっていました。一族を助けてくれた事にはもちろん感謝しています。けれど僕にとって貴方は家族を救ってくれた人です。これは感謝を言葉にする事すらも出来ない僕なりの感謝の示し方なんです。決して無理をするつもりはありません)」

 

 これ以上、遠慮するのは彼の感謝の気持ちを無視する事になるだろう。

 そう考えたタツミは、彼を納得させるためにも自分が折れる事にした。

 

「わかった。ただし疲れたら念話以外の会話方法に切り替えてくれ。決して無理はしない事。いいな?」

「……(はい、わかりました)」

「(この1件の間くらいなら大丈夫だろうし、魔力が足りないならこっちでエーテルを都合するか。どの道、俺は近いうちにフォゲッタを出て行く予定だし、この繋がりもそう長く続く事にはならないはずだ)」

 

 話し込んでいるうちに時間は過ぎていき、いつの間にかシチュー皿は空になっていた。

 

「美味い食事だった」

「うふふ。ドラードちゃんについて語り尽くして気が晴れただけでしょ?」

「それもある。さぁ気を取り直して行くぞ!!」


 満足げな様子で率先して前を歩くアーリ。

 苦笑いしながら彼女の後に続くルン。

 

「いつもあんな調子なのか? あの2人は」

「……」


 にっこりと笑いながらタツミの質問に頷くカロル。

 個性の強い同僚たちの姿に呆れると同時に奇妙な頼もしさを感じながらタツミは、彼女らに続いて歩き出した。

 目指すはアギ山。

 

「そうだ、タツミ殿」

「何ですか、アーリさん?」

 

 意気揚々と一番に民家を出たアーリが振り返り、タツミに声をかけた。

 

「うむ。その敬語は無しにしてもらえないだろうか? 実力もあり、年もおそらく私より上だ。そんな貴方に敬語を使われると言うのはなんというか……居た堪れない気持ちになる。私のようにその喋り方が癖だと言うのなら、もちろん無理にとは言わないが」

「そうね。見たところ私と同じくらいの年齢だし。今の口調、素じゃないでしょう? 下手な遠慮は無しって事でもっと砕けていいのよ?」


 アーリの提案に便乗するルン。

 どうやら彼女もタツミの敬語を気にしていたようだ。

 

「そっちがいいなら……。お言葉に甘えて敬語は無しにさせてもらうよ。あらためて、お互い助け合っていこう」

「ええ、頼りにさせてもらうわ」

「こちらこそ、よろしく頼む」

「……」

 

 タツミの言葉を受け、ルンは笑みを浮かべ、アーリは真剣な表情で、カロルは無言のまま頷いて応えた。

 

「(アギ山……確か昔は鉱石の採掘場で、その時の森林伐採の影響か緑はほとんど残っていない。掘り尽くされて廃れた採掘場をリザードマンたちが寝床にしてしまってからは冒険者以外に足を踏み入れる者はいないはず。……住処ならさっき戦った群れよりももっと数が増える可能性が高い。そろそろ使い時か?)」

 

 アイテムリストの中から取り出し、冒険者ご用達のバックに放り込んでいた火縄銃。

 絶大な威力と殲滅力を持つゲーム上では最強クラスの武器。

 ソレを使う事を考えながら、タツミは森の隙間から遠くに見える土気色の山を見据えた。

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