第4章 クラウス
うなが「うわーい!閲覧数増えてる!喜びのあまりゲフンゲフン
ヴァレリ「そんなこと書く場所じゃねえだろ。さっさと俺のカッコイイところをアピールするまえがき書けよ~」
うなが「だが断る!」
クラウス・ライミッツベルクは、疲れた身体を引きずるジンジャー・カスタスを見かけた。
(ジンジャーはどこに行ってきたのだろう)
午後三時のおやつタイムといわれる時間だが、クラウスは子供のくせして甘い物が苦手という異端児なので、この時はいつも畑で野菜をかじっていた。
「ジンジャー!」
疑問を晴らすべくクラリオはジンジャーに声をかけた。
「なんだい、クラウス」
「そんなに疲れた顔してどこに行って来たの?」
ジンジャーにとってクラウスは弟のような存在だ。両親同士が中がよい為だ。
「ちょっと、ケンカ……」
「え? 錬成術が見れるの!? まだいる?」
「誇り高きネクロマンサ家を裏切るつもりかい? そんなことしたら、この土地にいられなくなるよ?」
「そういう訳じゃなくって……、そう! 錬成術とやらがどのくらい無様かをこの目で見て、笑ってやりたくてさあ」
途中からの嘘に仲の良いジンジャーが気がつかないわけはない。しかし、彼はその嘘の意味も読みとった。
「多分、しばらくしたら戻って来るんじゃないかな? きっと、無能らしいミサイルをもちだして、ね」
「そもそもどうして、喧嘩になったの?」
ジンジャーは「そうだねえ」と、これまでのことを思い出す。
「確か……」
僕の趣味が魚釣りってのは知ってるよね。
どちらの領地でもない場所、俗にいう中立地区ってわかるでしょ?
中立地区で魚を釣ろうとしたら、遠くからの銃弾で釣り竿が真っ二つになって。
犯人はアルケミスト家のブタでさ。
つい、ね。
「なにが、『つい、ね』なの!? ブチギレるのは仕方ないと思うけど、ここは大人な対応しようよ!」
そう年下のクラウスに叱られると、ジンジャーはちっちっち、と指を小刻みに振った。
「まだ十三歳だし! まだ未成年だし!」
「来年成人じゃないか……。でもさあ」
クラウスの口からポツリと言葉がこぼれる。
「僕らはいつまで生きられるかな」
ジンジャーは答えようとしなかった。
ただ、「わかんないよ」と小声で呟くだけだった。
クラウスは夕方、海岸沿いへ歩いてみたがアルケミスト家らしき人影は見えなかった。
(にしても風が強いなあ)
水平線の彼方には、大陸があって、人がいて、自分より四倍の時を生きる。
(僕が何をしたっていうんだ)
そう考えると、クラウスは自分が損をしているとしか考えられないのだ。
魔術とか錬成術が使える対価として寿命を失ったというなら、寿命が欲しかった。
魔術なんていらない。
(そうだよ、僕はできそこないだもん)
クラウスは、魔術が不得手なのだ。
ジンジャーのような魔術を連続で使える者は少ない。
いわばジンジャーはエリートなのだ。
「くうん」
砂浜に座っていると、一匹の仔ギツネが近寄ってきた。
「どうしたんだい? 君もひとり?」
膝に座りたいような顔をしているので、クラウスは膝に座らせた。
「こんな人生いやだよ」
気がつけば仔ギツネに愚痴をこぼしていた。
「望んでもいないのにこんな力をもらってさ、上手く使えないしさ、その代償で寿命が短いしさ。みんな僕を現実的っていうけど、みんなが夢を見てるだけなんだ……」
「ほええ、歳の割に随分と大人びてるなあ、中身が」
「え?」
アルケミスト家の人間だろうか。クラウスは紺色の髪の男をじっと見つめた。
「いやあ、そんな憎らしそうな目で見るなよ! あっはっは、びっくりしたぁ?」
「あの、いつからそこに……」
「その前に聞くことがあるだろう!」
仁王立ちする男は不吉だった。
「えーと、誰ですか」
「よくぞ聞いてくれた、なんか色々一致しない少年よ!」
不気味な呼び方をされたが、クラウスは気にしない。
「俺様は『神』ヴァレリー! そして、そのキツネは俺様の使い魔、ランデイさ!」
そのランデイという仔ギツネは毛を逆立ててヴァレリーに向かってグウウと唸っている。
「……神?」
「そう、神様だ! 悩みがあるなら言ってみろ! できることなら協力するぜ!」
その言葉にクラウスは目をきらきらさせ、
「ほんと!?」
「もちろん! さあ、どうぞ!」
クラウスは純粋な目でこう言った。
「僕を神様の弟子にして下さい!」
「――――――」
口をぽかんと開いてしまったヴァレリーは、すぐに、
「まじで! いやあ、何教えればいい? 要は君……」
「クラウスっていいます!」
「そう、クラウス! 神になりたいのかね?」
「いや、不老不死になりたい」
目に輝きをなくしたクラウスは俯きながら言った。そんな、クラウスにヴァレリーは焦りを隠せずに
「えっとね、神様はね、旬のおいしいリンゴを食べないと不老不死が保てないんだよ?」
「じゃあ、神様は不老不死じゃないの?」
「そゆこと。でもさ、やってみるか!」
「何を?」
「話を聞いている限り、長く生きたいんだろ? 平均寿命の二十四歳よりずっと長く。それだったら、何か力になれるはずだし」
ヴァレリーは、クラウスにランデイを抱くように言うと、防砂林の向こうへ導く。
「あ」
防砂林に入ろうとしたときだ。
「どうしたんですか?」
「……かしこまらなくたっていいぜ!」
「わかったー」
ヴァレリーは自分の行動に気がついた。
(こいつ、十二歳くらいだよな? ということはこれって誘拐だよね? 子供誘拐するって正義と正反対っぽいけど、本人が望んでるっぽいからノープログレム!)
やーいやーいヴァレリー犯罪者ー