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VALLERY  作者: 鰻河
3/12

第3章 俺は神様

非常にモブの多い物語です。

モブ・ストーリー・・・?

「ヴァレリー。どうして来たんだよ」

「はっはっは、ジンジャー少年! 何をわかったことを聞きやがる!」

 ユリアンもジンジャーも手を止めて仔ギツネ片手に笑うヴァレリーを眺める。

「神様はペットを飼うことにしたんだぜ!」

「ちなみに名前は?」

 ユリアンがご満悦なヴァレリーに問う。

「聞いて驚け、この仔ギツネはランデイだ」

 ジンジャーは再び手を動かす。

「『――遙かなる炎の海――精霊の森に住まう獣王よ、その姿を顕現させたまえ』、ヴァレリー。こいつが僕のランデイね。名前パクらないのって、常識じゃない?」

 ジンジャーは呼び出した炎の獣を指さす。しかし、ヴァレリーは空いている手をひらひら振って、

「俺様リアルに神だからノープログレム! むしろ、神様のペットと同じ名前つけるお前が悪い! 改名しろ!」

 炎の狼に見向きもせず、宣言する自称「神」のヴァレリー。はた迷惑な野郎である。

「あー、わかったよ……、ランデイ。新しい名前何にする? え? クリスティーヌ・ジュエルパイ? 君、男じゃないか」

 炎の毛が燃えさかるのを見ると、ジンジャーは仕方なく元ランデイの意見を聞き入れることにした。

「ヴァレリー、そろそろここは危険な場所になるから逃げた方がいいわよ?」

「そうだよ、死んじゃうよ?」

「ああ、そう。じゃあ、教えろ。キツネって何食うの?」

 二人は、少し考え込んでから

「トカゲとかじゃない?」「カエルとか野ネズミじゃないかな?」

「オッケーオッケー! サンキュ! 早速、トカゲ探しに行って来るぜ!」

 そう言い残してヴァレリーが去ったのを確認すると、二人の目つきが豹変した。

「『――煉獄に連なる赤き山々――深淵に住まう腐敗の獣――哀れなる御霊を包みたまえ』」

 ジンジャーはありったけの力を本に注いですらすらと読み上げる。

「本当にくだらないわね! 死んでも知らないわよ!」

 ユリアンは両手の平をジンジャーに向けた。彼女の周りの地面から石が浮かび上がると思えば、すぐにそれは六本の筒、それもバズーカ砲らしきものに姿を変えた。

「バズーカ砲六本の総攻撃に耐えられるかしら!」

「その身体を腐らせて一生外に出られない身体になっちゃえよ!」

 ジンジャーもユリアンも油断のできない状況に立たされていた。先に動いたのはジンジャーだった。ジンジャーは本の中から現れた黒い影に小声で命令を下す。

 ユリアンはその動きを即座に察知し、宙に浮かぶバズーカ砲を動かした。

「標的、ジンジャー・カスタスを中心とする半径一メートル範囲。照準速度MAX、火力MAX、射出!」

 砲弾がジンジャーに直撃しようとしたときだ。砲弾が黒い影にぶつかった瞬間、溶けて消えたのだ。

「まだ、まだまだ! 第二波よ! 射出!」

 もう一度、幾つもの砲弾がジンジャーを襲う。しかし、彼は、

「『――大地の守護――自然の魂――荒れ狂う破壊の感情を抑えよ』」

 刹那、ジンジャーを軸とした岩壁のドームが彼を包み込んだ。壁に砲弾が炸裂する。しかし、何もなかったかのように、壁は立ちふさがっている。

「何しているんだ! ユリアン!」

 ユリアンは背後の声の主を見る。

「あ、兄さん! 手伝ってよ、あのジンジャー・『カス』タスに一泡吹かせてやるの」

「アホか! ネクロマンサのゴミあさりなんかにかまってる暇があったら、もっと能率的なことをしようと思わないのか、帰るぞ!」

 ユリアンの兄はアイリンの手を引いて去っていく。

「お、覚えてなさいよ!」

 ジンジャーは黒い影を使って岩壁を溶かすと「バーカ、弱虫~」と罵った。



「あんなことをする暇があったら、少しは余生を幸福にしようとか思わないのか、お前は。あと十年生きられるかどうかなんだぞ?」

 自宅でユリアンは兄の説教を不本意ながら聞いていた。

「第一、殺し合いをしているのをヴァレリーに見られたらどうするつもりだったんだ。死罪を犯すところだったな」

「ねえ、ヴァレリーってなんなのよ。自称神なんて痛い意外のなんでもな……痛いわね!」

 兄はユリアンの頬を思いきりはたいた。

「ヴァレリーを馬鹿にすれば天罰が下る。ずっと言ってるだろうに」

「うー……理由がなきゃわかんないわよ」

 兄はふぅと一息ついて、言い残す。

「明日は成人の儀だろ? その時、わかるはずだから」

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