序章 その男はヴァレリー
お久しぶりです。
今回はドカンと一発ファンタジー。
一応書ききっているのかな?
そんなわけでVALLERY、スタートです。
「ジンジャー・カスタス! あなたは何を言っているのかわかっているのかしら!」
十四程の少女は腕を高く掲げて正面の少年に向かって叫んだ。
「もちろん! 僕はネクロマンサ家の人間だ。ゲスなアルケミスト家のブタ共とはちがうってことを述べただけさ!」
相対するジンジャーと呼ばれた少年は、分厚い本をぱらぱらと捲りながら少女を馬鹿にした。
「あら、その古めかしい白紙の本一冊で何が出来るの? ページをちぎって紙飛行機でも折るつもり? 紙飛行機ではこのアルケミスト家屈指の錬成士ユリアン・オルキーヌには勝てないわよ」
ユリアンと名乗った少女の腕は機械で包まれていた。回転しながら蒸気を吹き上げる鋼鉄。その先端にはチェーンソーの刃がある。
「あはははは、無様な姿だね! この鉄塊女! さっさと土下座したらどうだい? 『私は無様なクズでゴミ虫です。ですから、あなた方誇り高きネクロマンサ家の華麗な魔術を惨めな私めに授けて下さい』ってね!」
ジンジャーが本に手をかざすと、不思議なことに紫色の文字が浮かび上がった。
「『――夢幻の闇夜――悠久の星々――ここに集え、魔人の下僕』」
その文字を読み上げると、本から紫色の炎が現れる。
「男ならそんなちまちましたことやってないで正面からかかってきなさいよ!」
炎はユリアンへと一直線に飛び込んだ。しかし、ユリアンも右腕の武装を軽々と持ち上げて、走り出す。その間にもジンジャーは、他のページに手をかざし、文字を出現させて読み上げる。
「君こそ本当は男じゃないのかい? 『――遙かなる炎の海――精霊の森に住まう獣王よ、その姿を顕現させたまえ』」
ジンジャーが言葉を言い終わったとき、ユリアンの目の前に紫色の炎の獣が立ちふさがる。
「さあ、骨の髄まで溶かしてしまえ! ランデイ!」
ランデイというニックネームらしい獣は唸り声一つあげずにアイリンの喉に食らいつこうとしたその時、
「おい、俺も交ぜろよ」
ユリアンの装甲は崩れ落ちた。
ジンジャーの呼び出した炎とランデイはかき消えた。
そして二人は声を合わせて、
「「うへ……、ヴァレリー!」」
と防砂林の中から現れた紺色の髪の青年を見て口から何かが飛び出すくらいびっくりした。
ヴァレリーの右手に可愛らしい仔ギツネがいるのだから。
大陸の西にある「シグナ半島」。そこに住む人々は主に二つに分けられる。
魔術を使用する「ネクロマンサ家」か、錬成術を使用する「アルケミスト家」か。
彼らはシグナ半島の領地を争っている貴族である。
そして、同時にシグナ半島に縛られ、呪われた人間だ。
どうでしょうか?もちろんこれはまだはじまりにすぎません。プロローグですよ?