怪奇事変 大太法師
投稿遅れてすみません!
早速ですが、問題です。
静岡県のお土産と言えば??
第八怪 大太法師
静岡県静岡市
「あ~着いたよ、もうケツが痛くてダルくてやる気なくなりそー」
『任務放棄、減給承諾、受理』
「ちょい待!たんまたんま!うそうそ、何だかやる気出てきちゃったー」
『……お願いしますよ、京極さん』
「はいはい、京極さん行きま~す」
此処は静岡県静岡市、春の季節もあり桜が咲きほこっている。
そして一望できる“富士山”。
「いつもあざーす!」
その場で姿勢を正しお辞儀をする京極は“富士山から採れた水”のペットボトルを、そのままピッチャーフライを取る姿勢の様に、飲み終わったペットボトルを投げ捨てた。
「ごちで~す」
だがそのペットボトルは専用のゴミ箱にジャストミートするのであった。
まだ夏でもないのにアロハシャツを着こみ、ジャンダーレスの金髪とグラサン、そしてネックレスと清潔感のある長身の男の名は京極戎史郎。
霊術院卒業生の1人であり“特級霊媒師”の資格をもつ男である。
性格はポジティブ思考で深く考え込まない事がモットー。
そしてこの男は自由気ままが大好きで、基本的に周りの人間関係は――終わっている。
それに気づいてるも自分を変えようとしないのは、あくまで自分主軸で行きつつ、他人の考えを変えるつもりはないっと言う点だ。
嫌いならどうぞ、お好きならどうぞ、どうでも良いならどうぞ……無関心なのだ。
が、別に京極は人間で心もある為、当然傷つく、周りは否定するが。
そんな彼に下された任務は2つ。
1.霊力が異常に高い数値を現場の人間が確認、調査をすること
2.ある“少女”を霊術院へ入学希望を届ける
3.問題が有りと発生した場合“現場で処理”
「あ~あ、こんな任務とかじゃなくて旅行で来たいよね~、静岡着たら浜松餃子に富士宮やきそばに、欠かせないお供に特産のお茶!っと温泉」
此処に来る前に渡された小さな紙に記された住所を元にある場所に向かう。
「なのに……最初に行くのが神社参拝かい!ガチで嫌になるよね~、龍介にやらせろよー」
と、愚痴るも重い足取りを動かして進む。
景色だけでも楽しめる静岡県の街並みは、駅周辺は都会そのものだが、徐々に目的地に向かうに連れて古い町並みを堪能する事が出来る。
「これもありか……」
霊術院も同じ様な作りが多いが、こちらは昔からあるって感じで好きな方だ。
ちなみに霊術院はその構造を昔に無理やり合わせたと言った表現が正しく、京極は歴史を感じなかった為、好きになれてない。
此処で少し“特級霊媒師”の仕事を話そう。
基本的に“特級霊媒師”の仕事は――危険度が5段階中最高クラスの5と規定されている。
それだけ実力を認められている為、基本的には霊術院側で特殊な事情がない場合、このレベルを下げる事はない。
あるとすればその称号を剥奪された時ぐらいだろうが、何せ最年少で“特級霊媒師”となった京極はエリート中のエリート。
初めは異例としてその実力を周囲に実感させるために、霊術院側の処置で通常の入学、昇格と同様にその基準を計ってきたが……全て無意味。
隠し通せる程のものではなく、すぐさま“特級霊媒師”の称号を授かることになる。
「な~なにが特級だよ、クソダサ称号人の頭上にくっ付けるなって~の」
愚痴愚痴と文句を垂れつつ、着いた目的地、神社を見ながら嫌そうな表情をしつつ歩を進めると前から2人の少女達が降りてくる。
実はさっき購入していた飲み物を片手に持ちながら飲んでいる為、なんか言われると思いつつも、向こうからしたら参拝客と思ってるだろうと考え、気軽に声をかける。
「あ~お嬢さんたち、このあたりに”枝垂神社”ってあると思うんだけど、知ってる?」
京極はわざと目的地を分かりつつも聞くと、明らかに不機嫌そうなピンク髪の長髪をした女の子は背負っていた細長い物体を使ってある場所を刺した。
「見えねーのかよ、おも糞上に書いてあんだろうが」
「あ、本当だ」
なんて猿芝居をしながら彼女の持っている、恐らく竹刀か何かを収納できる物を“霊視”すると、そこには“刀剣”が隠されていた。
恐らく……一般の人には視る事のできない代物で、見ても竹刀にしか見えない様になっているのだろう。
それに、隣にいる金髪のショート髪の少女も多少の霊力がある様で、こんな偶然があるのだろうかっと笑ってしまう。
「ありがとね、JKちゃん達」
片手をぷらぷらと振りながら彼女達が来た道を通ろうとした瞬間—―異常な“霊度”を感じた。
それは霊力により重圧に似た力とでも呼べば良いだろう、それだけの力の正体、あの2人のどちからだろう。
すれ違い様に鎌をかけてみるか。
「ところで桃色髪の嬢ちゃん、そんな”物騒なモノ”持って通学してたら警察に捕まるんじゃない?」
「え?」
「……」
2人の表情を見ると当然と言えばやはり驚愕してや様子がが、ピンク髪の少女は怒った様に喋りだす。
「朝からその歳でボケてんのかよ?参拝じゃなくて滝修行でもしてきた方がマシなんじゃねーの?陽菜、行こう」
「う、うん、失礼します」
苛立ちながら去るピンク髪の少女と礼儀正しくお辞儀をして去る金髪の少女。
それにしても――
「滝修行…ね、つうか言い方辛辣」
ペットボトルに入った飲料を飲みながら階段を昇って行く。
「な~んか……面倒事に巻き込まれそうな予感」
頭を掻きながら無駄に長い境内を上り、辿り着くと、そこは桜が満開に咲いた澄んだ境内だった。
だが時折濁りの様に漂う“霊度”が周囲に流れているのが不快に感じる。
目の前に漂っていた“黒い霊気”を息で吹くと一瞬で掻き消えた。
そうして目的地に辿り着いた京極は、案内役の人に霊術院の紹介状を見せると宮司を呼ぶと本殿の方に足早に移動をした。
「お待ちしておりました、私は龍宮寺光公と申します」
「ん?」
「?どうかされましたか?」
「いえ、なーんも、案内してもらっても?」
「ええ、どうぞこちらへ」
2.ある少女を霊術院へ入学希望を届ける――その名前は“花岸佳織”
龍宮寺ではない、それとも活動をするにあたっての別名義か?と思う。
本殿とは違い境内にある移住区に移動され、此処が宮司の家、あとはあの2人の家なのだろう。
早速客間に案内されお茶を出され、それを啜る……前に――
「あ、コレ霊術院から」
「どうも、拝借致します」
「お茶いただきます」
静岡県さんの茶葉、どんな味なのか……っと思っていたら宮司が声をかけてきた。
「霊術院への転校……ですか?ウチの子が?」
「はい、まぁ学校が変わるだけ何で」
「いえ、しかし……此処を継ぐ子も必要でして……」
「それは追々考えて行けばいいのでは?宮司様も直ぐに亡くなる様には見えませんし」
だがそれでも考え込む宮司に今度は京極から切り出す。
「ああ、ちなみにその紙に書かれてない内容を補足すると、欲しいのは“花岸佳織”さんって子ですね、宮司さんの名前と違うんですが、いらっしゃいます?」
その言葉を聞いた瞬間、明らかに宮司の態度の反応、醸しだす空気までが変わった。
「花岸は旧名で、今は龍宮寺で通っております……佳織は確かにいますが、あの子は“霊力を持ち合わせておりません”」
「へぇ~……」
京極は理解した、正直他人の事情なんて関係ないからダメならダメで良かったんだが、この宮司の態度と発言、恐らく神社の当主にしたかったのは佳織と言う少女であって、
その条件を満たしていないのだろう。
“霊力がない”それが恐らく宮司の“条件”なのだろう。
「正直……“霊力のないあの子”が霊術院で上手く打ち解けられるかどうか……才能すら発揮されず無駄に金銭を払う未来しか見えませんな」
「霊術院では元々“霊力”の扱いについて教える場です、当然まだ“力に目覚めていない者”も対象として扱ってます」
「ならば逆に陽菜はどうでしょ?血は繋がってませんが、あの子には高い霊力が――」
「あ、俺の独断じゃ決められないんで。あくまで霊術院側の要求は“花岸佳織の転校”を勧めてます、それ以外の部外者を霊術院に敷居に跨がせるのは俺がどやされる」
「し、しかし!」
「道中2人のJKにお会いしましたが、ピンク髪の子が俺もタイプかな~……伸びしろがデカイですし、本人の技量もある」
「……そんな」
「今度、娘さんの竹刀を“霊視”してみればわかりますよ、それでも竹刀に見えるなら――普通って事で!」
「ど、どう言う意味」
「ところで――」
強引に話の主導権を握り会話する京極は指を下に向けて意味深な言葉を使った。
「“下で何か”してます?」
「……」
宮司はそれ以上何も言う事は無かった。
「じゃ俺はこれで!色好い返事待ってますよ~……神聖な場所を穢さない様にも気を付けて下さい、お邪魔しました!」
それだけ言うとお茶には手を付けず来た道を引き返す。
宮司の顔色は……終始悔しさににじみ出ていた。
「いや、だから花岸佳織は龍宮寺佳織にクラスチェンジしちゃってたの!」
『苗字など差ほど問題ないでしょ、本人とは?』
「直接会ったよ、多分“あの子”だけどめちゃくちゃ辛辣な暴言吐かれた、滝修行なんてするか?」
『それは何よりで、その調子で頑張って下さい、それよりも――』
「土地は安定化してるし問題ないけど偶に”霊度”と“黒い霊気”がねー、多分原因はさっき行った神社で何かヤバイ事やってる臭いんだよね」
『ならばそれの鎮静化も宜しくお願いします』
「……あのね、俺は便利な人型ロボットじゃ――切りやがった、ぜってー友達居ないだろう、コイツ」
電話越しの人間に文句を言いながら、コンビニに購入した食べ物をホテルで満喫していた。
3つある条件の内2つはほぼクリア済み、残りの内1つは強硬手段だからあまり講じたくないが、そもそもあの様子じゃ流されるだけだろう。
ホテルのカーテンを開けて窓から見る山には巨大な人の姿が影として映し出されていた。
それは霊力がある人間なら見る事ができる姿であり、更に“霊視”すればもっと細かく見る事ができるが、京極は既にそれ以上の立体感で見る事ができている。
まるで本当にそこに怪物が佇んでいる様に。
「静岡の物の怪、大太法師……あんなの召喚されたら静岡ぶっ壊れちゃうけど、富士山でも噴火させる気か?」
“黒い霊気”はゆっくりとアレに集まって姿をなしている、完成まで凡そ1週間にも満たないだろう。
早めに壊さなければ面倒だが、恐らく儀式が境内の地下で行われているが、簡単には通してくれないだろう。
「なら召喚したタイミングかな、無敵時間なしなら“霊術”で対処できる……か」
ベットに寝転がりながら今日であった2人の少女を思い出す。
うちどちらかにあの重い“霊度”を感じた、そして宮司の言葉を思い返せば消去法で、あの黄色髪の少女が儀式に参加している事になる。
「面倒だな……」
瞼を閉じると懐かしい記憶が蘇ってくる、幼少期、少年期、唯一無二の親友との青春――もう戻る事の出来ない思い出。
「眠れねーし、ちょっと散歩に出るか」
ホテルを後にした京極は夜の静岡を歩く。
都会ではあるものの、徐々に喧噪は静かに電車の音と、僅かな車が走行する音だけが聞こえる。
だが、もっと強大な音が真後ろから聞こえたと同時に大きな衝撃が加わり吹き飛ばされる。
通行人が驚いた表情をするも、吹き飛ばされた京極――無傷だった。
「あのさ、こ~んなオッサンに近い年齢に近づいた奴のストーカーなんて楽しい?」
「馬鹿な……今の“霊術”で死なないだと」
黒装束を身に纏った者が驚愕の表情を浮かべている、いや、正しくは目元でそう感じただけだ。
「いや、殺しに来るってヤバ……つうか、境内から出た時から付けてたろ?あのままホテルに居たら場所関係なくドンパチしてただろうし、こっちとしては有難いんだけどね」
「お前のことは知っている、霊術院を最年少で卒業資格を持ちつつ、更に凄腕の霊媒師ってやつなんだろ?」
「見たいね、自覚はあるけど、多分それじゃ計れないぐらいには」
そう言うと嬉しそうに、平気で刃物を懐から取り出す。
「いいね、その余裕を泣きじゃくる顔で懇願する姿を見たくなってきた」
「良いけど場所を移そうか?此処じゃ仕事終わりの人たちに――迷惑だ」
会話が終えるタイミングを計って相手の後ろに周った京極は、その肩を掴むと“霊力”を込めた筋力で相手を空中に投げ飛ばす。
凡そ人間が出せる力ではない力量に相手も驚くも、霊媒師の戦いでは普通の事だ。
「驚いたのは――」
「ッ!?」
「俺が“瞬間移動”してるから?」
そのまま既に攻撃モーションに入っていた蹴りを相手に放ち広い屋上に叩きつけた。
「くぅ!?」
「俺の”霊撃”を込めた蹴りは結構効くでしょう?それに地面コンクリートだし、壊さない様に加減したから大したダメージじゃないだろ?」
「なめやがって!」
「だってそりゃ――弱いもん」
その言葉がトリガーとなり、相手はナイフを投げる……が、そのナイフはまるで幾数本、いや、数千本へと増えて降りかかる。
「食らえ!霊術で込めた俺の時雨ササメ!」
その台詞と共にナイフは京極に向かって降りかかる。
「どうだ!俺の数千本にも及ぶナイフの切れ味は!?霊術と霊撃を込めたこの攻撃を躱せた奴は今まで誰も――」
「君……馬鹿って言われない?」
「ッ!?」
手刀を首に当て脳震盪を起こさせる、とっても軽い霊撃を込めた手刀で。
「……な、なぜ!?」
「いや、さっき俺“瞬間移動”って言ったよね?言わなかったっけ?」
「あり……え、ない!く…うかん……を飛んだ?」
「正しくは“記憶した座標に霊術で印を記した場所にピンポイントで飛ぶだけ”だから、まあやろうと思えば君もできるんじゃない?」
相手は意識を失いながら最後の捨て台詞を吐く。
「そん……な、高度な、ぎ、じゅ……つ、でき……ない」
「あ、気絶した。尋問とか苦手なんだよな~……そう言う専門のやつ連れてくれば良かったな」
だが男の着ていた服を確認するとある家紋模様が気になった。
「この家紋……どこかで?」
こうして1日は終えた、その1日で山にそびえる巨体は成長し、まるで空気を入れた風船が膨らんでくる様にも見え、終わりのカウントダウンの様に思えた。
あれから1週間はあっと言う間であった。
その後京極は毎日の様に襲われ、その度に相手を返り討ちにしていた為、借りていたホテルはまるで倉庫の様になっていた。
部屋の掃除はキャンセルか、どうしよも無い時は霊術で何とか隠していたがそれも今日までだろう。
ここ最近調べた内容で一番はやはりあの“家紋”であった。
もう一度“枝垂神社”に参拝に行くとやはり同じ“家紋”と言う事で間違いはなかった。
わざわざ「悪事を働いています」なんて公言しにくるようなもので、あまりにあほくさくてため息が出てくる。
更に言えば道中、ターゲットとも接触できていた。
凄まじい傷跡に血痕からただの喧嘩と言うより、誰かに襲われたと言った表現が正しかった為、簡単な治癒を施して家に帰して上げた。
相変わらず上から目線な物言いが苛立ったが、まぁ所詮子供も戯言だと流した。
そして予想してた通り1週間で山にそびえる巨体は完全体となっていた。
「んじゃ悪霊退散と行きますか」
どの道アレを使って何をしようと、コントロールできる程の何かがあったとしても、野放しにはできないのだ。
枝垂神社付近に来るとその“霊度”は強大で辺りに漂う“霊気”も既に瘴気へと変化してるぐらいおどろしいモノへと変貌していた。
辺りに腕の無い者、首が取れた者、焼け焦げた者――これ等全て悪霊なり。
京極は目の前に手印を結ぶと言霊を唱えると、周りに居た悪霊達は一瞬で消失し、粒子となって空中へ消えていくも、その粒子はあの山の巨体に吸い込まれていった。
餌――として連れてこられたのだろう。
「死人に対して扱い方がなってねーんだよ」
一瞬で巨体の目の前に現れると見下す様に腕をかざし、そして霊撃を込めた衝撃波を放つと巨体はその勢いに抗えずその場に尻もちを付く。
見下す京極と見上げる巨体の悪霊はその力の差に怒りを露わにし、凄まじい咆哮を京極に向けて放つと、京極もその勢いに吹き飛ばされる。
巨体の悪霊はゆっくりと立ち上がり、枝垂神社に向かうも突如、後ろに何かを感じ取った巨体は腕を振りまわす。
が、それは空を切っただけで、対象人物に当たる事はなかった。
代わりに、そこに居たであろう人物は身体を空中に、逆様の状態で親指と中指を握り、玩具のパチンコを放つようにデコピンをかましたのであった。
すると巨体の頭部は弾け飛び、分散した黒い霊魂が血飛沫の様に境内に降り注いだ。
「あ~ごめん、もっと加減しとけば良かったか?」
空中に“降り立ち”、そのまま空中散歩をするかの如く、巨体に近づくと胸元辺りを掴み「せーの!」っと掛け声を出したかと思えば、握りつぶす様に手を捻ると巨体は軽々と
弾け飛んだ。
「俺が居たことがお前の不幸だよ、そして――アンタの」
「ッ!?」
かなり離れた距離に居た宮司の真後ろに立った京極に宮司の龍宮寺は驚く。
「き、きさま!あ、アレを祓ったのか?」
「霊媒師なんだから当然でしょ?」
「よ、よくも長年の計画を!」
「そうそう、自分の計画を破綻された悪役の言う台詞No1はやっぱそれだよね~、苦労して悪霊集めてお祓い、その清めた魂を再度構築しなおして怨念を込める行為は――
”死者への愚弄”だ」
構えると龍宮寺はその場をそそくさと離れようとするも、目の前の大木に風穴が開いたのを見て動きを止めた。
巨大な穴だ、宮司の身体など意図も簡単に消すほどのできる程の穴が、不遇にも並んだ大木にも同じ様に空き、続いていた。
「今度は当てる、死ぬかもしれないから動くな」
「……貴様は、何者……」
「霊媒師だよ、それよりいつからこの計画を――」
その瞬間、辺りの“霊気”に“霊度”が重くなった。
「これは――“霊域”か!?」
あの巨大な悪霊が放った漆黒の瘴気が取り囲んだかと思えば、宮司の中に吸引されて行く。
「ぐ、グ、グプ!ガァァァァァァァ!?」
「チッ!?」
直ぐに霊術で解呪しよとするも既に時遅し、完全に正気を失い、目は真っ赤に血走り、筋肉は凡そ人ではない程強大な禍々しい青へと変貌していた。
「キ、キサマ、コ、コロ、ス!」
「馬鹿が馬鹿な真似しやがって!」
既に霊壁で身を固めている為、呪いの効果は全く影響にないが、霊域を出るには指定された範囲からの脱出が前提となる。
が、しかし、相手は霊域に付与できる霊術が込められている、それは分かりやすく言えば“呪い”だ。
つまり相手を閉じ込めたり、出られなくできる霊術が込められた場合は――大人しく殺されるか、祓うかのどちらかしかない。
「……おいおい」
上でも何か変化が起きたらしい、何やら“霊域”の様な強大な霊力を感じ取った。
どうやら境内では誰かが戦っている様子だ。
「コロス!」
「だがまぁ――確認はお前をちゃんと祓い飛ばしてからだな」
トンっと額に人差し指を付きつけると、相手は凄まじい絶叫を遠吠えその場で藻掻き苦しむ。
「“降魔印”――魔を退けると時に使う初歩的な技かな?まぁ込めた霊力によっては、焼ける様に痛むけど、加減はした、離れないともっと酷い事するぞ~」
「ガァァァァア!!」
「(また咆哮かい……)」
京極はそのまま吹き飛ばされるも、相変わらず無傷。
その姿に流石に乗り移った物の怪も驚愕の表情を浮かべざる負えない。
「大太法師……相手が悪い、お前が幾ら強い霊力で俺を閉じ込めようが、霊気で吹き飛ばそうが――その宮司には既に霊術のマーキングを施してある」
「ッ!?」
「つまり、俺が地球の果てに居ようと直ぐにお前の元に辿り着けるって事、それ以前に攻撃も俺の霊壁が強すぎてほぼ空気による衝撃だけだし、意味ないんだよね」
悟った、怪物は……大昔、まだ肉体を得てこの世に君臨していた頃と比較しても、この様な化け物は――存在していないっと。
「バ、バケモノ!」
「化け物に化け物って言われたのは心外だな、でも霊術院の総監部共もそう思ってるし強ち間違いじゃないかも」
両手同士を近づけると、その空間に渦巻き状に輝いた光の粒子が集まる。
そして光球を作り出して、最後の通達をする。
「このまま霊域で俺に挑み続けるか、解いてソイツから離れるか好きな方を選びな?」
「グルルル」
あの光の球は“危険”と全細胞が訴えかけてくる、それだけの威力が込められている。
だが大太法師はその寸前でこの男は今憑りついている人間に致命的なダメージを負わせる事などできないと思った。
何故ならまだこうして生きているのがその証拠だから。
本気なら勝負など既に済ませられたはずだ、なのにしなかったのには理由がある――つまり、生身の人間に危害を咥えたくないと言う理由。
ニヤリと不気味に笑うと大太法師は京極に向けて言い放つ。
「オ前ハ――」
だが、腹を何かが抉る様な感覚と共に、何かが消失した感覚を味わう。
見ると腹部に穴が開いており、そこからゆっくりと赤い血液が流れ出しているからだ。
「ナ……に」
悪霊と化した大太法師は既に今の一撃で消失し、最後に宮司の意識が痛みと共に戻る。
「俺が善人で殺らないとでも?殺るよ、俺は……罪も罰も、呪いも背負って生きる――それが俺のやり方だ」
「……人、ごろ…し」
そう告げて力なく倒れる宮司からは床を赤く染め上げる程の流血が噴き出す。
「人殺しだよ、俺は、この道を選んだ瞬間からね」
そして今も強大な力のぶつかり合いが起きている境内の上でも決着が付こうとしてた。
恐らく“あの2人”だろう。
何が遭ったのかは不明だが、携帯を取り出して事の顛末を伝える。
「任務完了!直帰しま~す」
「いや、だからちゃんと後始末はしたよ!マジで!」
東京に帰宅する前に事前報告をした京極は宮司の遺体のお清めとお経をして、場の乱れの処理もしっかりとやったし、周りにうろついていた悪霊もついでにサービスでお祓い
駆除してやったのに、何を疑う事があるのかっと憤慨していた。
『そちらではなく“ターゲット”です』
「んー……」
実はあの後少しだけ会話をして霊術院なる場所も紹介したが、本人も疲弊しきっていた為、それどころではなかった。
一方的にこちらの都合ばかりを告げるのは筋違いだと思い、連絡先だけは渡してあるから後から電話は来るはずだけど……この調子だと電話越しの相手は納得しないだろう。
「あーうん、大丈夫」
『……本当なんでしょうね?』
「ほら本気と書いてマジって言うじゃん、ソレ!」
『……』
「それより、俺の重要な任務あるんでしょ?それ教えてよん」
『……はぁ、千葉の方で異様な“霊域”を観測してます。その中でもある“人物”について調べて欲しいとの事です』
「……だれ?」
『――です』
「……全然知らないけど、まーた何か面倒事?それとも悪だ組?」
『お願いします』
「霊が視えるだけでも特異体質なのに、オマケに“莫大な霊力まである”とか、俺か神木以来じゃない?」
『ええ、ですから調査をお願いします』
「はいはい、じゃ今度は千葉ね。近いし、さっさと終わらせて休暇申請出そ~っと」
第八怪 巨大な物の怪“大太法師”
答えは「うなぎパイ」!
京極さんも買って東京に帰省しましたよ~




