12 国王瀬田良平に謁見する_05
* *
「えっ!? これは一体、どういうことなんですか?」
私(英子)は傍に立つ斎木さんに向って、思わず訊ねていた。
「あぁ、これはですな。今後ヤムントでも、現代日本家庭並みの生活水準にまで高められるよう、予め現地の大工に指示して、王宮内に用意したんです!」
「なるほど。モデルルームでしたか、……」
大規模マンションが建つ前に、その予定地の近くにモデルルームがオープンしていたりする。あれと同じ感覚なのかなぁと、英子は思った。
「えぇ、そうです。親方には事前に日本の住宅工法を説明し、標準的な官舎の居室の設計図面を渡したら、直ぐに仕上げてくれました。こちらの大工は、かなり優秀ですな!」
「ホンと、そう……ですね!」
ヤムントの、今後の標準家庭の目標として設けらえた部屋。
ご丁寧に、アイボリー調の壁紙に、プラスチックタイルの床材、台所には花柄のエンボス処理された長尺の塩ビシートが敷き詰められている。
まるで、こちらの大工や技術者の能力を試したら、日本の内装工事並みの仕上がりを実現してしまったという、……。
ホンと、遜色ない感じだなぁと英子は思った。
「どうですか、英子さん。もっとよくご覧になられても、よろしいですぞ!」
あれ? 何だか妙に勧めてくるなぁ、……。
リビングには、昭和50年代当時のオーディオセット。台所にはガスコンロらしきものと、水道の蛇口などが見受けられた。
それらにはコンセントや配管が一切なく、全て魔石で操作されている。
先日、トラヴィス伯爵領の領都のホテルで見たものと、大体同じ仕組みなのだろう。
魔石の利便性には、ホンと驚かされる限りだ。
「もしかして、斎木さんがこのモデルルームを作らせたんですか?」
「えぇ、そうです。国王の瀬田中佐が、早く作れ、早く作れって急かすものですから! ホンと、あの男には困ったもんです、……」
少しだけほろ苦く、乾いた笑みを浮かべる斎木さん。
この何でもできるスーパー公務員の斎木さんに、そこまで言わせる人って、……。
その瀬田中佐っていう王様、……。ホンと、一体どんな人なんだろう?
すると、……。
後方の入り口の方で、ドアが開閉する音がした。
一体、誰がきたんだろう? 英子はそう思っていると、……。
「やぁやぁ、よくきてくれたね!」
その青年は、年の頃は20代前半で、英子よりも若干年下に見える出で立ちをしていた。
ローブ状の高級そうなヤムントの民族衣装の上に、地球のアルメリア陸軍の深緑色のミリタリージャケットを羽織っている。
「えぇ~っと、……」
「キミかい、新しい子って?」
明るくて、気さくな感じ。もしかすると、まだ大学生か何かかなぁと思った。
「そのジャケットって、M―65フィールドジャケットだよね? もしかして、斎木さんが以前に連れてきた、若いクリエーターさんですか?」
「……」
そうしたら、その青年は斎木さんをちらりと見て、お互いに頷き合う。
「私が現国王の瀬田良平だよ。よろしく、お若いクリエーターさん!」
そう仰って、王様はニィッとお笑いになられた。
「魁!断筆姉さん!!」をお読み頂き、ありがとうございます!
英子の作家魂や、仲間たちとの冒険を楽しんで頂けたら嬉しいです!
この物語を気に入って下さったら、☆評価やブックマークで応援して頂けると、作者の励みになります!
英子と一緒に次の展開を盛り上げるため、ぜひ力を貸してください!✨




