02 英子は数年前の春に、都内の美大を卒業していた_04
* *
それからほどなくして英子が帰宅すると、……。下宿にただ一人。
抱えた食料の入った紙袋をテーブルの上に置き、水道水を煮沸した水の入ったピッチャーから、カップいっぱいゴクリゴクリと音を立てて飲む。
「さて、……と」
英子はもはや室内着と化しているつなぎに早々に着替え、再び絵筆を執った。
慣れた作業に、自然と手が動き出し、……。太筆で大まかな面を塗り終えた後、休憩を挟むことなく、次の作業に入っていく。
女性らしく、ち密に繊細にしなやかに、……。筆先に細心の注意を払って、細かい箇所を彩色していく。
その後一回だけ、トイレ休憩で席を離れると、……。
テーブルの皿の上のラムネを数個齧り、インスタントコーヒーの粉を半匙だけカップに入れて、ピッチャーの水で溶かして、それを飲んだ。
ふと、テーブルの上の目覚まし時計を見ると、深夜3時半過ぎ。
今日は飲み会で時間を取られちゃったから、その分取り戻さないと、……。
それに、……。帰り道で、会いたくないヤツらにも会っちゃったしね。
瞼の裏に、女の院生の挑発めいた笑顔と、助教の勿体ぶった気障な顔、……。
すると、窓の外から季節外れの夜風が背筋をぶるるとさせて、思わずくしゃみがひとつ出た。
「ホンと、時間を腐らせること、ばっかり、……」
そう英子は呟くと、休憩を終えて、再びキャンバスの前の席に着いた。
そのまま英子は無心に描き続け、気が付くと朝を迎えていた。
「まぁ、……。本日のノルマは、これで達成かな?」
英子は、朝陽を浴びたその作品を中古のデジカメでパシャリと写すと、データを自身のWebの創作日記にアップする。
ちゃんとアップロードされたことを画面で確認すると、肩に手をやって、首をコキリと鳴らした。
あぁ、……。そう言えば、……。
英子は、ふと思い出して、飲み会の席で緑子から貰った用紙のアドレスにアクセスする。
印刷されたプリントと同じく、中世社会の王都のワンシーンのような、おそらく3DCG? のトップページが、モニター画面いっぱいに現れた。
「なるほど!」
思わず目を見極めて、その画面の隅々までじっと見る英子。
そのままポチポチとマウスをクリックして、ここ数日の斎木のアップした日常を続けて読んでいった。
「ふぅ~ん。霞が関のお役人って、かなり忙しいんだね!」
国会議事堂近くの深夜のコンビニで、仕事の合間を縫って、斎木がおにぎりとお茶を買う写真がアップされていた。
どうやら、斎木茂吉はかなり忙しい人物のようだ。
英子同様に寝る間も惜しんで働く様子に、どこか連帯感のようなものを強く感じた。
「私も、そろそろ準備しなくちゃ」
英子は下着姿になり、……。濡れタオルで全身をくまなく拭き終えると、軽い化粧をしてラフな外着に袖を通す。そのまま一睡もせず、朝から始まるバイト先のひとつに、颯爽と向っていった。
* *
不遇な環境でも、英子はめげずに創作活動を続けます。
若いとはいえ、寝ないで仕事をするのは、体に毒ですよ。
「魁!断筆姉さん!!」をお読み頂き、ありがとうございます!
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