11 トラヴィス伯爵邸にて_16
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私(英子)は、向こうのテーブルで先ほどからトラヴィス伯爵と話し合いをしている、斎木さんの方をちらりと見た。
すると、斎木さんはこちらの女子陣の話にも耳を配っていたようで、……。
今、こちらではどんな話が行われていたのか、とっくにご存じだった様子。
斎木さんはニコリと笑ってひとつ頷くと、再び伯爵との話し合いに入ってしまった。
ヨシッ! 斎木さんからもゴーサインが出たから、……。もうひとつ、話を前に進めてしまおう!
英子はそう思いながら、奥方様の前のローテーブルの上に、その眼鏡ケースほどの大きさのプラスチックのケースをスッと置いた。
「エイコ様、……。こちらは、……何かしら?」
「はいっ。奥方様が私達の仲間に加わって頂いた際の、最初のプレゼントですっ!」
ちゃんと、事前研修のとおりに上手くご提案できたかな?
日本の官舎の一室で、私が女性の専門官から指南を受けた際、いくつか大事なことを言われている。
決して、相手を辱めるな。
決して、相手の面目を落とすことだけはするな。
必ず、相手の自尊心をくすぐって、こちらの味方に付けろ!
まさに、今が丁度そのタイミングだ。
目の前の女性は、ヤムントでも有力な女性貴族で、夫に権力もあれば、資金も実力も情報力すらある。
昨晩に起こったホブゴブリンの討伐を、ほぼリアルタイムで手下に探らせてから、数時間後には、こうして新たな判断をしてから、敵対勢力である斎木さんを自邸に招き入れた。
その行動力たるや相当なもので、今後こちら側に寝返ったことで起こるデメリットすら、既に計算積みだろう。
なら、こちら側王党派としては、重要人物の参加を大いに歓迎する意思を示さなくてはならない。
「プレゼント、……ですの?」
「はい、奥方様。私達とこれから親しくして頂きたくて、……。日本政府から用意させて頂きました!」
「……。そう、日本政府、……、からなのね」
「はい!」
私は年齢相応に、とても明るく元気よく、愛想よく奥方様に接していた。
これは、外交をしているつもりではないけど、……。
でも、大口客を取り込む、大切な営業行為と思って、ひと踏ん張りしたところだよ。
すると、……。
「見ても、……よろしいかしら?」
「はい! お手に取って頂ければ、幸いです!」
奥方様は、ご息女の方をちらりと見て深く頷かれると、「ワカッたわ」と言いながら、そのプラスチックのケースをお手に取った。
それから、蓋を開けて中を見た瞬間、……。
「「!!??」」
目の前の女性2人が、声にならない声を上げた。
「日本の真珠です。こちらでは貴重なものと伺っておりまして、特別に用意させて頂きました!」
奥方様はわなわなと震えながら、その真珠のネックレスをお手に取ると、その両目は今にも星が煌めくように潤んでいた。
「お嬢様には、こちらを! もう少しお歳を召されたら、相応の物をご用意させて頂きますね!」
こちらはそう言って、真珠のイヤリングをお渡しした。
「「~~~~~!!??~~~~~」」
目の前の女性2人は、喜びを身体から絞り出すような声を漏らしている。
うふふふっ。どうやら、完堕ちしたみたい、……。
「魁!断筆姉さん!!」をお読み頂き、ありがとうございます!
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