11 トラヴィス伯爵邸にて_14
* *
「お母様が、みるみる間にお美しくなってしまわれました!」
食堂の奥のリラックススペースで、私(英子)が奥方様のメーキャップをしていたところ、……。
傍らでその様子をご覧になられていたご息女が、さっそく大騒ぎを始められた。
まぁ、……。こうなることは、男爵家での経験で、大方予想できたことなんだけどね。
とりあえずファンデーションをざっと仕上げたから、次は頬紅かな。
でもまぁ、それはそれとして、……。私は奥方様に、ちょっと訊いておかないとマズいことがあるんだよね。
「奥方様、……。私からも、二、三、お訊ねしてもよろしいでしょうか?」
こちらがスマイリーにそうお訊きしたところ、……。
「えぇ、構わなくてよ!」と、満足そうにお答えになられた。
なら、遠慮なく。さっそく訊いちゃおぅかな。
「では、先ずひとつ目ですが、……。私と斎木の乗る車両が領都に入った際、領民の皆さんを使って、何かしら足止めをされませんでしたか?」
「ン―――ッ、何のことかしら?」
「馬なしで自走する車のことを、私達は自動車と呼んでおります。その車体からは臭い排気ガスを噴出しますので、こちらの世界の方なら、どなたでも直ぐに気付くと思うのですが、……」
「……」
「ご存じない?」
「さぁ、……。下の者から、主人が何かしらの報告を受けているのかもしれないわね」
「……」
さて、……。一見すると、奥方様は手鏡に映るご自身の顔に、頭がいっぱいのご様子なんだけど、……。
「では、ふたつ目です。私達の昨日の動向を、どこまで把握なされていましたか? 実はですね、……。昨晩は隣領のバルディ男爵邸に泊まらせて頂いたのですが、ちょっとしたトラブルが発生したものでして、……」
「……」
「奥方様? やはり、何かご存じでは?」
すると、……。
奥方様の手鏡を持つ手が、次第に小刻みに揺れ始めた。
「そんなワケ、……ない、……でしょ?」
「……」
小声で奥方様が何事か呟かれるけど、……。
でも、こちらからはあえて何もコメントしないよ。
「日本人は、……あんなのが、……ちょっとしたトラブルって言っちゃうのね!」
奥方様はそう仰ると、手鏡をローテーブルの上に静かに置いて、黙ってしまわれた。
「……」
なるほどねぇ、……。
トラヴィス伯爵家では、やはり昨晩のことを先刻ご存じだったみたいだねぇ、……と英子は思った。
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