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魁!断筆姉さん!!  作者: 西洋司


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02 英子は数年前の春に、都内の美大を卒業していた_03

   *         *


「ねぇーっ、英子。私たちね、今度の秋にトリノで開かれるビエンナーレに、ウチの学校から代表して出展することが決まっているの」


「そうだな。ウチの研究室から、2人で合作でな。もう既に海外のメディアにも取り上げられてさ。バイヤーとも、そのウチの何点かは、話がもう付いているんだよ」


「そうそ」


「……」


 聞きたくもない。全く面白くもない助教と女の院生の夫婦漫才を、いつまで聞かせてくれるんだろうなぁと、英子は思った。


「それじゃぁ、私、……」


 タイミングを見計らって、そろそろお暇しようと思ったんだけど。


「ねぇ、英子、もうちょっと付き合ってよ。私たちの仲じゃん!」


「えっ!?」


 女の院生は、そう言って英子の塞がっている右手首をむんずと掴むと、……。ニシシと、白い歯を見せて笑った。

 どうやら、英子のことを全く逃がす気がないらしい。


 英子はそのまま2人と気マズい会話を続けることになり、……。結局、軽く近況報告をお互いにし合う羽目にあった。


 英子は現在フリーターをしていることを正直に告げると、「そのウチ、チャンスがあるわ」といって、女の院生が窘めるように笑うと、助教も表情を作ってうんうんと頷いた。


 一方、女の院生は自身が成功していることをことさらアピールし、近々海外の美大に2人で留学する話を振ってきた。


 英子は、そのことをどうしてもこちらに伝えたかったんだろうなぁと、理解した。


 それに比べて、英子の立場の如何に危ういことか。

 大学院には進学できず、就職活動も失敗。金銭的にもカツカツで、23区にこれ以上住み続けるのは、もはや限界を迎えていた。


「英子ってさ。もうとっくに『断筆』しているんじゃないかって、研究室で噂になっていたんだよ」


 女の院生は、笑顔でそう嫌みを言ってきた。ライバル心剝き出しなのは、相変わらずだなぁと英子は思った。


 ホンとさ。今の私なんて、アンタたちから見たら足元にも及ばないのにね、と英子は思う。

 でも、英子にも矜持がある。負け犬にも、五分の魂があるんだからね。


「そだね。私も早く仕事を見つけないと。バイトだけじゃ、ホンと直ぐに干上がって、ダメになっちゃうよ」


「なら、差し詰め、英子は『断筆』姉さんか?」


 英子は怒ったりせず、笑顔で否定も肯定もしなかった。

「魁!断筆姉さん!!」をお読み頂き、ありがとうございます!

英子の作家魂や、仲間たちとの冒険を楽しんで頂けたら嬉しいです!

この物語を気に入って下さったら、☆評価やブックマークで応援して頂けると、作者の励みになります!

英子と一緒に次の展開を盛り上げるため、ぜひ力を貸してください!✨

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