11 トラヴィス伯爵邸にて_07
* *
「英子さん。とりあえず、乾杯をしませんか?」
そう言って、斎木さんはグラスに注がれた赤ワインを軽く掲げた。
「はい。でも、いいんですか? このワインだって、ちゃんとアルコールですよ?」
私(英子)は、先ほど斎木さんがアルコール厳禁と言っていたから、これは一体どういうことなのかなぁ、……と。
少しだけ、訝しんだ表情を作って訊ね返した。
「あぁ、……それなら。だって、こんな街中に魔物が現れるワケないでしょう!」
「なるほど、……。えっ!?」
「それに、私は基本厳禁と言っただけで、全くダメとは申しておりませんぞ!」
斎木さんはそう言って、ニヤリと笑った。
「あぁーっ、ズルいっ! 斎木さん、そんなの大人のズルッコですよ、それぇ!」
どうやら斎木さんは、こちらをリラックスさせようとしてくれているみたい。
なら、その意図にあやかって、私もイヤなことをさっさと上書きして、忘れちゃおうと英子は思った。
「ハハハッ、乾杯!」
「乾ぱぁ~い!」
チンとお互いのグラスが鳴って、さっそく飲み干そうとしたところ、……。
斎木さんの背後から、食堂の給仕係の人がスッと顔を寄せて耳打ちしてきた。
一体、どうしたのかなぁと思って様子を窺っていたら、……。
斎木さんはうんうんと頷きながら、途中、ちょっとだけ眉間に皺を寄せて、考え込んだ表情になった。
その係の人が離れていったので、「一体、どうされましたか?」と、こちらから訊ねた。
すると、……。
「ここの領主、フォルト・トラヴィス伯爵から、……ディナーのお誘いです!」
「……。ディナーって、……。私達も、今ディナー中なのですけど!」
「ふむ、……。とはいえ、彼はこの街の有力者ですからな。さすがに、袖にするワケにはいかないかと!」
「……」
せっかくの、斎木さんとの楽しい夕食だったのに、……。
「もう、宿の前に馬車を迎えにこさせているようです」
「了解です。任務ですから、仕方ありませんね」
こちらが、少しだけお気持ち表明をしたところ、斎木さんは少しだけ腕を組んで考え込んだ。
「そのウチ、埋め合わせますので、……」
「了解です、……」
とりあえず、2人ともフォーマルな服装をしているため、そのまま宿の玄関に向かった。
すると、伯爵の使いの者が現れて、「伯爵がお待ちです!」と一言だけ言った。
「では、英子さん、……。先にお乗り下さい」
「はい」
斎木さんに促されて上座に乗車すると、車内は高級そうなファブリック仕立てになっていて、座り心地はそこそこ良かった。
でも、……さ。
「あぁ、……。ほろほろ鳥、食べたかったなぁ」
英子は、思わずそう呟いていた。
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