11 トラヴィス伯爵邸にて_06
* *
ドアをノックする音がする。
「はぁ~い」
ドアスコープから廊下側を見ると、斎木さんだった。
「そろそろ、食事の時間です。おや、英子さん、……。お加減はよろしいのですか?」
「はいっ、大丈夫ですっ!」
私(英子)は、なるべくならさっきまでの落ち込んだ気持ちを引きずらないよう、目いっぱい明るく表情を作って微笑んだ。
でも、まぁ……。そのつもりだったんだけどね。
「……。そうでしたか」
「はい」
斎木さんは、私の目が少しだけ赤く泣き腫らしていることに、直ぐに気付いたようで、……。
だからといって、こちらを無理に励ますでもなく、穏やかに微笑むだけだった。
「英子さん、……。ここの宿の食事は、とても美味いと評判なんです!」
「へぇーっ、それは楽しみです! 美味しい食事、ふふふっ、お酒もあったらもっといいかも!」
すると、……。
「英子さん、……。王都に着くまでは、基本アルコールは厳禁です!」
きっぱりとした口調で、こちらを咎めてきた。
「男爵の屋敷で、カシスドリンクを頂きましたが、……」
「でも、夜中にトイレにいきたくなったでしょ?」
「……。はい」
「だから、非常事態にちゃんと対処できないとマズいですから。くれぐれも、王都に着くまでお酒は厳禁ですっ!」
「……。はい」
これでは、まるで私の保護者みたいだなぁと英子は思った。
もしくは、メンター気取りの上官か?
いや、むしろ親心に近い感覚で、私のことを見守ってくれているのか?
そもそも、斎木さんの実年齢は90歳だそうだから、……。
もしかしたら、私のことを世話のかかる孫くらいに思っているのかもしれないなぁと英子は思った。
「本日は、鳥のソテーがお薦めのようですよ! この辺りは、ほろほろ鳥という脂ののった鳥が名物でしてな。私も、この街にきたら、さっそく食べようと思っていたんです」
「いいですねぇ。私も鳥を食べたいなぁって気分でして!」
この際だから、斎木さんがせっかく振ってくれた話題に便乗しようと英子は思った。
さっそく定刻どおりに、2人で1階の白壁を基調とした食堂に入ると、予約した窓際の席に着く。
開いた窓からは、夕方の涼しい風がそよいでいて、……。
斎木さんも私も宿の格に合わせて、少しだけフォーマルな服装をしており、……。
もうそれだけで、先ほどとは打って変わって、気分が段々と上向いていくのを感じていた。
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