10 深夜の抗戦_11
* *
正午前に、斎木と私(英子)の乗った車は、まるで昨晩何事も起こらなかったかのように、……。ホンとあっさりと、次の目的地に向けて出発した。
陸自仕様のパジェロの後部座席には、ホブゴブリンから剥ぎ取ったあの魔剣が、独特のオーラを放ちながらそこに置かれている。
実際の話、こんなものを持っていたら、何か呪いとかかかってしまうんじゃないのかなぁと英子は思った。
でも、今はそんなことよりも、もっと大事な話をしなければと肚を括ると、軽く咳ばらいをひとつした。
「斎木さん、……よろしいでしょうか?」
「……。えぇ、どうぞ」
ふむ。少しだけ、いつもよりも淡々とされているような、……。
だけど、ここでちゃんと言っておかないと、後で悔やむことになるとイケないから、……。
とにかく、このまま押し通そうと英子は思った。
「私が無理を言ってしまって、……。男爵邸に残ってしまったから、これだけの騒ぎに巻き込まれてしまいました」
「……。まぁ、そうですな」
斎木は運転に集中しているためか、こちらの方を見ず、正面を向いたままそう言った。
「……。怒ってます?」
「いいえ」
その声の調子は、静かに怒っている人の声色だ。
こちらが言い方をひとつでも間違えたら、おそらく取り返しの付かない事態にだってなり得ると英子は思った。
とにかく、気マズい。早く何とかしないと、……。
「男爵のご子息から聞きました。斎木さんは、あのホブゴブリンをとても冷静に屠られたと!」
「……」
「あの時、私は中庭で奥方様達と一緒にいたのですが、……。ホブゴブリンがあの巨体で飛び跳ねながら、邸を襲ってきて、……。皆さん、もうこれはダメだと浮足立ってしまっていたんです」
「……」
私は、運転する斎木の横顔をちらりと見た。その表情はとても冷たくて静かで、……。
まるで古強者という存在は、こういう人のことを言うのだろうなぁと英子は思った。
「ごめんなさい。私が余計なことを言ってしまって!」
「いや、……。英子さんは、それでいいんです」
「えっ!?」
「実際の話、私達が男爵に加勢したことで、あの邸の者は誰一人として死ぬことはなかったのですからな!」
「そうですよね」
「だから、……。英子さんは、これからもそうやって、この異世界の人々を救ってやって下さい!」
「はいっ!」
斎木が、漸く笑顔をこちらに向けてくれた。
それだけでもう、……。英子は、何とも救われた気持ちになった。
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