10 深夜の抗戦_08
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バルディ男爵家の人々が、徹夜のまま、総出で中庭の片付けをする中、……。
私(英子)だけは一人、クロッキー帳にゴブリンの死体のラフデッサンをしていた。
実はさ、私って現代人だから、……。ほとんど死体というものにはお目にかかったことがなかったんだよね。
それに、男爵からはこちらが客人だから、片付けを手伝わなくていいと仰ってくれたからさ。
これ幸いと、先ほどからずっと描かせて貰っているのさ。
そんなことを英子は思いつつ、ゴブリンの身体の細部を隈なく見て、画面に描き続けていると、……。
ポンポンと、後ろから肩を叩く者がいた。
「どうされました?」
そう言って振り返ると、……。
昨晩、死に物狂いで闘っていた頑張り屋のマギーが、いくぶん青い顔をしながら微笑んだ。
「エイコ様は、そんなものを描いて、……。怖くはないんですか?」
「……、う~ん、……。怖いよ」
英子はそう言いながら、ゴブリンの右腕を取って、脇の辺りの刺し傷をじっと観察する。
「だったら、何故?」
「う~ん、そうだなぁ、……。誰かがちゃんと、この戦闘の記録を残して置かないとダメだと思うんだよね!」
申しワケないんだけど。先ほどから、ゴブリンの身体から漏れる臭気がきつくてさ。
マギーには悪いけど、もう少し話は後にしてくれないかなぁと英子は思った。
とりあえず、こちらが集中してデッサンを続けていると、そのうちマギーはどこかにいってしまった。
おそらく上の者から、「こちらの様子を見てこい!」と言われて、わざわざ話しかけてくれたんだろうね。
でもさ、……。こっちも真剣だから。
悪いけど、いつもの愛嬌のいい英子さんじゃないんだからね。
それにしても、……。ホンと不思議な身体だ。
ゴブリンってこの異世界の魔物だっていう話だけど、……。何だか、南米のチュッパカブラみたいなフォルムだよね。
英子はそう思いながら、腕の関節の可動域がどれくらいか試してみる。
相手が死体だから襲ってくることもないため、それをいいことにいろいろな方向に折ってみた。
すると、……。
ボキッという音と共に、ゴブリンの二の腕がプラ~ンとなった。
ふと、背後からの視線を感じ、振り返ると、……。
少々弱ったような笑顔の斎木が、バルディ男爵と共に立っていた。
「英子さん、これからホブゴブリンの剥ぎ取りを始めるのですが、……。一緒にご覧になりますかな?」
「はっ、はいっ! ぜひ、私も立ち合わせて下さい!」
英子は、先ほどまで弄っていたゴブリンの死体を麻のガラ袋に放り込むと、さっそく、斎木達とホブゴブリンの横たわる草原に向った。
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