02 英子は数年前の春に、都内の美大を卒業していた_01
金曜日の、夜の22時頃。
「もう、こんな時間か」
池袋での飲み会を終えた英子は、私電の江古田駅のプラットフォームに立っていた。
改札を出ると、駅前の個人スーパーで週末分の食材をまとめて物色した後、そのまま下宿先まで戻ることにした。
行きつけの本屋は閉店間際のようで、書店員が入口のシャッターを丁度下ろすところだった。
江古田駅前は学生街だから居酒屋も数多く集まり、夜中だろうと人で賑わっている。
金曜日の夜は特にそうで、……。英子は食材の入った袋を抱えながら、店の前に酔っぱらったままたむろする後輩たちの脇を抜け、通りを進んでいった。
途中、母校の美術大学の前を通ると、……。もう遅い時間にも拘らず、校内のアトリエが並ぶ付近から、煌々と蛍光灯の灯が漏れていた。
自然と、……歩を緩める英子。
「うん。凄いよね、……あの人たち」
おそらく、今もなお意欲的な学部生や院生たちが、寝る間を惜しんで創作活動に励んでいるのだろうなぁと、英子は思う。
英子もまた、この美術大学のOGだ。数年前の春に油絵学科を卒業し、そのまま大学院に進む道もあったのだが、……。
でも、学費を払うことができないという名目で学部のみ卒業して、今日に至っている。
「今頃、……皆、どうしてっかなぁ?」
何となく立ち止まって校舎の方を見ていると、……。アトリエの灯の向こうから、学部時代の知人と目が合った。
「あれっ!? 英子じゃん! 久しぶりぃーっ!」
その言葉に、英子は思わず顔を顰めたものの、直ぐに笑顔を作ってこちらからも小さく手を振った。
その相手は、数年前と変わらない出で立ちだった。
「全く、……。変わんねぇなぁ、……アイツ」
白のTシャツに青いデニムのオーバーオールを履いている姿を見て、……。英子の胸のどこかに、チクリと棘が差すのを感じた。
すると、向こうの女性は大きく手を振ると、こちらに向かって走ってきたのだ。
実は、……。その女性は、英子と研究室の院生のポジションを取り合った、……いわゆるライバルだった。
「ふふぅ~ん、久しぶりだね英子。ちゃんと息してた?」
「えぇ。まぁ、辛うじて、……ね」
数年ぶりに会ったというのに、相変わらず噛ましてくるヤツだなぁ、イヤだなぁと英子は思った。
「そっか。たまには、研究室に顔出してくれたらいいのに」
「うん、……そのウチ、ね」
ホンと、心にもないことをペラペラと喋ってくるもんだ、と思った。
そうしていたら、……。
更に性質の悪いことに、その研究室の助教まで、建物の奥から姿を現したのだ。
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