10 深夜の抗戦_03
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先ほどより、斎木達が物見やぐらに立ち、暗視双眼鏡で周囲の状況を見ている。
こちらからは物見やぐらの斎木達の様子を窺うことができ、今のところ大きな動きはない。
私(英子)は奥方様の指示に従い、とりあえず調理道具のフライパンを渡されると、他に鋤や大鎌を持った女性達と共に、中庭の中央で待機した。
傍らにいる女中のマギーが、先ほどからず~っと小刻みに震えている。
でも、こちらから「しっかりして!」とか、「やればできる!」なんて言っても、むしろ逆効果だ。
英子はお守り代わりにしている装備品の短銃を、懐から取り出した。
私にはこれがある。もし何かあっても、銃口を咥えて引き金を引けば、楽に死ねる。
でも、ここに集まっている女性達は、奥方様ですら大鎌しか持っていないんだ。
私なんて、射撃訓練はホンと形だけなんだよ。
だったら、どうしたらいいのかなぁ、……と英子は思った。
「先ほどのゴブリン、……。やはり斥候なのですかね?」
黙然としている奥方様に、こちらからそう訊ねたら、……。
「まぁ、……違ったら、それはそれで良かったんじゃないの!」
「……、そうですね」
笑顔を何とかお作りになる奥方様に、こちらもホッとした表情を作って応じると、女性陣の中から「あぁ~~っ、ベッドでもっとグッスリしたかったなぁ~~っ!」と素っ頓狂な声で叫ぶ者が出て、思わず周りがくすくすと笑い始めた。
なるほど。皆さん笑っているけど、……。ホンとは死ぬほど怖いんだね。
とりあえず、バルディ男爵邸の防御の準備は全て整った。
腕時計の時刻を見ると、夜中の3時30分を液晶盤の数字が示している。
事前の研修では、魔物が一番活動的になる時間が、この時間というワケなんだけど、……。
すると、……。物見やぐらに立つ斎木達に、動きがあった。
そろそろかっ!? 胃の中に、冷たい鉛が入り込んでくるような緊張が増してくる。
「来たぞぉ―――っ、ゴブリンの本隊が現れたぁ―――っ!!」
物見やぐらで、普段は召使いを務める若い伝令が叫んだ。
それからも、次々とやぐらからは大声で深刻化する状況が伝えられ、英子の周りの女性達の中には、歯の根をガタガタさせて、己の恐怖と闘っていた。
そして、伝令の最後の叫び、……。
「バルディ男爵邸は、全周とも完全包囲ぃ―――っ!!」
その絶叫に、女性陣はいまだ沈黙を継続する。
ホンと、もの凄い精神力だと感心する反面、その一方で、心の中に、これまでかつてないほどの興奮に包まれている己を見出すと、……。
私って、つくづく創作者だ。マジで因果な性格してるんだねぇ、……と英子はじわりと思った。
「魁!断筆姉さん!!」をお読み頂き、ありがとうございます!
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