09 バルディ男爵邸にて_10
* *
「ふぅ~っ、……。何とか間に合ったぁ」
英子は邸内を出て、母屋の外にあるトイレで用を足すと、漸く人心地ついた。
初めて泊まった屋敷の外部トイレに無事辿り着けたのは、化粧をして仲良くなった若い女中マギーのおかげ。
ちゃんと事前に場所を聞いておいて、ホンと良かったなぁと、……英子はしみじみと思った。
たださ、……。いきはよいよい、帰りは恐ぁ~い何だよなぁ、……。
深夜故に邸内は照明を消していて、真っ暗。庭先も月明りだけを頼りに、ここまできたんだからね。
でも、これから部屋に戻るのは、……さ。ちょっと、勇気が要るよね。
ここで、英子は左手にしっかりと握っている、装備品の拳銃をじっと見た。
「……」
その際、月光がその黒鉄の銃身の辺りを照らすと、ギラリと輝いた。
「まぁ、……お守り代わりなんだけどね。どうせ、私は引き金なんか引けっこないし、……」
英子は現代人なので、これまで殺生をしたことがほとんどない。
だから、事前研修で射撃訓練をしてもあまり身が入らず、全てにおいて優秀な成績を誇った英子でも、射撃だけは辛うじて及第点だった。
だって、……さ。私、たとえ自衛のためでも、殺しはイヤなんだよぉと英子は思う。
薄暗い庭先を、多少びくびくしながら進んでいくと、……。
「キャァ――――ッ!?」
母屋の反対方向から、突然若い女性の叫び声がしてきた。
「えっ!? 何々っ!?」
思わずゾッとするも、お守り代わりに持っている拳銃をじっと見た。
これは、いかんとマズいんだろうなぁ、……。
英子はぶるるっと頭を振って怖気を払拭しつつ、教本通りに拳銃を構えた。
「よしっ!」
そうやって気持ちを一気に切り替えると、声のした方に構えたまま駆けてゆく。
すると、……。
ザシュッ!! という音と共に、月光を浴びた白刃が何ものかを切り裂いていた。
見ると、斎木や男爵達が槍やショートソードを持って、数匹のゴブリンを切り殺すところだった。
「えっ!? えぇ――っ!?」
傍には若い寝間着姿の女中が横たわっていて、……。
英子は居ても立ってもいられず、駆け寄って抱きかかえると、声をかけた。
「マギーッ、マギーッ!?」
頬を何度かピシャリとすると、相手は眉間に皺を寄せながら「うっ、うぅ~ん」と悩ましげに呻いた。
血も付いていないし、幸い気絶しているだけの様子。良かった。
「このゴブリン達は、おそらく斥候でしょうな!」
男爵がそう仰ると、斎木はまるで現役の軍人の表情で、装備品のライフルの撃鉄を、黙って上げた。
* *
楽しかったバルディ男爵邸で、まさかのゴブリン襲来。
男爵の仰るとおり、これからゴブリンの本隊が迫ってくるのでしょうか?
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