09 バルディ男爵邸にて_08
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談話ルームにて、先ほどより男性陣はビリヤードを始め、女性陣には私(英子)の描く似顔絵を楽しんで貰った。
「素晴らしいですわ、エイコ様。まるで、王宮付きの絵師のように緻密で、ホンとそっくり……」
お嬢様は感激して、ご自身の似顔絵を胸元にしっかりとお抱きになられた。
ふふふっ。こちとら現役の絵描きだよ。
これまで各地のフリマ会場で、似顔絵描きをして散々稼ぎまくったからさ。
まぁ、……。これくらい、ホンとお手の物なのだよ。
英子はそんなことを思いながら、持ち前のテクニックでさらさらとバルディ男爵家の家族全員分の似顔絵を描き終えると、大層喜ばれた。
実際の話、この異世界にくる前の研修にて、現地ではとにかく似顔絵がとても珍重されることを聞かされていた。
そもそも一部の有力貴族しか、王宮付きの絵師に依頼することはできない。
ましてや、バルディ男爵領のように王都から遠く離れた領地の貴族には、そんなチャンスがほとんどないと言っていいらしい。
なら、先ほど斎木がデジタルカメラで撮影したように、写真を配って回ればいいのではと思ったのだけど、……。
でも、デジタルカメラは門外不出の日本産の技術であり、日本国が齎した戦略物資だ。たとえ貴族でも、その恩恵を受けることは認められないのだ。
斎木からは、こう伝えられている。
「英子さんはこのヤムント国で、日本国から派遣された絵師として、活躍して頂きたい!」と。
それは英子にとって得意分野での採用であり、自身の技術が認められたようで、……。
とにかく、……とても、嬉しかったのだ。
バルディ家の皆様に似顔絵をお渡しした後、再び軽い談話が始まった。
バルディ男爵と斎木が主にお話しになり、英子やご家族は2人の話を黙って聞いていた。
「サイキ殿、……。こちらの領でも、ひとつ心配な話がありましてな」
「ほぅ。どうされましたか?」
「最近、ゴブリンが異常に発生しておるのです」
「……」
その点は、実は英子も事前研修で話を聞かされていた。
ヤムント国内の名峰フォルナ山の麓、そこにあるダンジョンから、最近魔物が次々と湧き出していると。
英子はその話を聞いた際、日本の山間部でもクマが人を襲ったりするから、同じような話ってあるもんだなぁと思った。
それがまさか昼間のように、自分達までゴブリンに襲われちゃったりするんだからねぇ、……。
「男爵、実はですな。我々が本日オムラ渓谷を通った際、ゴブリンの群れに遭遇したのですよ!」
「何と!」
男爵は、斎木の話に苦い顔を浮かべられた。
聞くと、最近領内の村のいくつかが、ゴブリンの群れに襲われているとのことだった。
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