09 バルディ男爵邸にて_07
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「氷魔石ですのよ。ウチの厨房にも、冷蔵庫が設置されておりますの」
「……、魔石ですか」
私(英子)は事前研修でも聞かされていたのだが、……。この異世界のヤムント国では、魔石というものがとても多く利用されているのだ。
実は、様々な便利グッズの基礎アイデアが、地球の現代日本の科学技術と密接にリンクしている。
ヤムント国の現国王である瀬田良平は、その名前のとおり、かつての日本人だ。
斎木からの話によると、戦時中の南洋での作戦中、瀬田少佐率いる部隊が、偶然生じた次元振動の影響でヤムント国に転移した、……。
その時からの、両国の縁なのだという。
その後、大日本帝国が日本国に国名が変わってからも、なおも両国の交流は続き、日本からの技術移転がかなり進んでいるようだ。
だから、バルディ男爵家の厨房に設置された冷蔵庫も、基本的なアイデアは日本の家電を参考に、魔石で代用されているというワケ。
天井照明や水道の蛇口、魔石のコンロなど、まるで近現代の日本の文化的生活を模倣した魔石文明を、この国は現在築いているのだ。
何だか、……物事の発想とか、感覚とか、……。そんな諸々が、今の日本とあまり違わないような気がする。
バルディ家のご子息とお嬢様が、嬉々としたご様子で、屋敷の中を案内してくれた。
邸内は光魔石の照明で隅々まで明るく、壁に設置された日本製の時計は夜の10時を示していた。
この家にはテレビとラジオ、ステレオがないだけで、雰囲気は昭和初期の日本の地方の名家に招かれたような、そんな錯覚すら起こってしまった。
「エイコ様、こちらでお話しをお聞かせになって!」
お嬢様に手を取られ、談話ルームに招かれた。
室は、日本のモジュール換算で20畳ほど。部屋の窓際には、ビリヤード台が設置されていた。
さっそく、ご子息が斎木と対戦を始めた。
「サイキ殿が、以前お持ちになられたのですよ」
「そうでしたか、……」
バルディ男爵が、こちらにニッコリとお笑いになる。
それを横目に見つつ、中央のソファーセットに女子陣は落ち着いた。
「エイコ嬢は、これをお飲みになって!」
「はい、ありがとうございます!」
英子は奥方様から直接グラスを受け取ると、にっこりと笑顔を浮かべた。
グラスには数個の氷と共に、カシスが一粒アルコールに浮いていた。
「このグラスも、以前サイキ様がお持ちになったのよ!」
「そうでしたか、……」
へぇ――っ。ひんやりとしたグラスだなぁと英子は思った。
やはりバルディ家と日本政府は、かなり密接な交流があるようだ。
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