09 バルディ男爵邸にて_04
* *
「マギー、……。あなた、随分とお綺麗になったこと」
「はっ、はいっ、奥方様っ!」
先ほどより、バルディ家の女子陣は、私(英子)が化粧を施した女中のマギーを取り囲むと、執拗にその顔を見つめ、……いや凝視していた。
「ふぅ~っ、ホンと見ていてため息が出てくるわ。どうして、こうも美しくなっちゃったのかしらねぇ?」
そう奥方は仰って、こちらを笑顔でじっと見つめなさった。
うん。結構、興味を持たれて下さったみたい。
やはり異世界でも、女性は美というものを、とことん追求するところは同じなんだね。
だから、私の知る範囲の化粧技術なら、いくらかお伝えしても構わないだろうと英子は思った。
「そうですねぇ、……。私が化粧をする場合、その顔をひとつの素材と見て、如何に立体的に造形が奥深くなるように仕上げるのかが、コツですね!」
「なるほど。だから頬の辺りに影色を着けて、表情を立体的に見せているのね」
「えぇ、仰るとおりです、奥方様!」
こちらもそう言って、ニッコリとスマイルを作る。
「エイコ嬢。あなたのお化粧も、とてもお上手ねぇ!」
「はい。私は絵描きですからっ!」
「絵描き?」
奥方様はそう仰って、不思議そうな顔をされた。
「あっ、はいっ。こちらでは絵師っていうんですね」
「ふふふっ、ホンとお上手よぉ、……。あなたがそんなにお美しいのも、何だかワカる気がするわ」
奥方様とお嬢様は、うっとりするような表情を浮かべられ、こちらの顔をじっと見つめなさった。
「母上! 姉上共々、エイコ嬢にその化粧をお願いしてはどうでしょうか?」
すると、先ほどより黙って話を聞いていたご子息が、明るい顔でそう仰った。
「えぇ、こちらこそよろしければ。何人か側仕えの女中の方にも同席させ、軽い化粧程度なら、どなたでもできるようにするのは如何でしょうか?」
こちらのその言葉に、お嬢様はパァ~ッと明るい表情を浮かべられ、……。
「私にも、できるでしょうか?」
「えぇ、もちろんですよ!」
スマイルを作って頷くと、女中達まで皆笑顔になった。
「では、エイコ様。直ぐに始めましょう! 別室にご案内いたしますわ!」
お嬢様はこちらの手を取り、別室への移動を促されなさった。
思わずその握力の強さに頷くと、グイグイと女性達が別室に引っ張っていく。
食堂を出る際に、ちらりと男性陣の方を見た。
「我が妻が無理を言って申しワケない。気の済むまで相手をしてやって下さらんか?」
「はい。こちらも楽しいですから」
「それはありがたい、……」
バルディ男爵はそう仰って、少々困ったようにお笑いになる。
その男爵の顔には、深く大きな傷跡がある。
前に何かあったのかなぁと、……。英子は思った。
「魁!断筆姉さん!!」をお読み頂き、ありがとうございます!
英子の作家魂や、仲間たちとの冒険を楽しんで頂けたら嬉しいです!
この物語を気に入って下さったら、☆評価やブックマークで応援して頂けると、作者の励みになります!
英子と一緒に次の展開を盛り上げるため、ぜひ力を貸してください!✨




