09 バルディ男爵邸にて_02
* *
「あら。もしかして、お化粧に興味があるんですか?」
英子はそう言って、姿見に映る背後に控えた若い女中に声をかけた。
「えっ? いっ、いいえ、……。私は、そんなつもりではっ!」
まだ10代後半くらいの少女が、慌てて首を振る。
「……」
う~ん。何だか、お化粧にはとても興味がありそうな表情を、この子、していたんだけどなぁ、……。
「ねぇ、……。よかったら、あなたもちょっと試してみる?」
「とっ、とんでもないっ!! 私は平民です。お貴族様でないと、お化粧なんて以ての外ですっ!!」
「ふぅ~ん」
そんなこと言ってるけど、……。でも、本音では、……さ。
「なら、私からのお願い。ヤムントのお化粧事情を知りたいからさ、とりあえず私の国、日本流のコスメを試させて貰って、男爵家の皆様に見て貰おうかなぁって思ってるの!」
「……、そういうことでしたら」
そうぼそっと呟く女中だけど、……。その表情は、少しだけ紅潮していた。
しばらくして、英子は先ほどの女中を伴って男爵家の食堂に向った。
途中、召使いの男性とすれ違った際、相手はこちらの顔を見て、耳まで真っ赤になった。
更には、私の後に控えている若い女中の顔を見て、目を剝いて驚いていた。
英子が食堂に入ると、既に斎木とバルディ男爵の一家は、長いテーブルの席に着いており、何事か話し合いをしていた。
「お待たせ致しました」
こちらが事前研修のとおりに、イブニングドレスを身にまとってカーテシーをすると、……。
男爵家の皆様が「おぉっ!」と仰って、頬を紅潮させて微笑んだ。
バルディ男爵自ら席を立ち、「どうぞ、エイコ嬢。サイキ殿の席の隣りにお着き下され!」といって、椅子を引いて席に着かせてくれた。
「ありがとうございます」
そう言って、とりあえずスマイル、スマイル、……。
男爵家の皆さんをふと見ると、……。男爵も奥様もご子息もご令嬢も、皆さん笑顔でこちらの顔をじっとご覧になられていた。
すかさず、隣席の斎木がこちらに顔を近づけて、耳打ちしてきた。
「さすがは英子さんですな。男爵家の皆さんが、こんなに愛想がいいのは珍しいのですよ!」
「もしかして、私の化粧が珍しかったのですか?」
こちらも、小声で斎木に返すと、……。
「とんでもないっ! 英子さんが、とてもお綺麗だからですよ!」
「なるほど」
まぁ、あまり、……意識しないようにしているんだけどさ。
今回、私が異世界ゆきのチケットを手に入れるきっかけに、私自身の「外見」もその要素のひとつだったらしいね。
席の背後では、控えている若い女中同士で、化粧をした女の子が注目の的になっているみたい、……。
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