08 ウエルカム トゥー ヤムント国!_05
* *
斎木の運転するパジェロは、ボルツ原野をひたすら進んでいく。
英子がこちらの現地時刻に合わせた腕時計を見ると、そろそろ正午を過ぎる頃になっていた。
なるほど、……。
東京とこのヤムントの現地で、時差があるからワカらなかったけど、……。かれこれ、もう2時間ほど車で移動してきたのかと英子は思った。
「斎木さん、この辺りはボルツ原野とのことでしたが、ず~っとバルディ男爵の領地ということですね?」
「そうですな。まだまだ、もうしばらく原野を進むことになりますな!」
「男爵領とのことでしたから、もう少し狭いエリアを治めているイメージでしたが、……。結構な広さですね?」
「えぇ。元々このヤムント国では、王権神授説に基づいて運営がなされていて、貴族達もそれほど多くはありません。むしろ、先の大戦で功績を上げ、新たに貴族となった平民もいます」
「なるほど」
「こちらの男爵も、元々は平民の出です。我々日本の過去に存在した庄屋に当たる家柄の者が、功績を上げて、そのまま男爵を務めて貰っています」
「そうでしたか、……」
「……」
ここで話題が途切れたため、英子は再び車窓を眺め始めた。
途中野牛の群れを見たり、野鳥の集まる湖畔もあった。
へぇーっ、意外だなぁ。
英子の眼には、たまに見かける動物や辺りに繁茂する野草が、これまでいた地球のそれと大差なく見えた。
斎木から、「実は、ここが東ヨーロッパの田舎なんですよ!」なとと言われたとしても、……。
こちらも「あっ、やっぱりそうでしたか!」といって、そのまま信じてしまいそうに英子には思えた。
でも、これだけ長い車での移動中、一度たりとも空を飛ぶ飛行機を見ることがなかったし、電線も自動車も見ることはなかった。
「えっ!?」
英子は、思わず我が目を疑った。何と、遠くの空に翼竜が単独で飛んでいたのだ。
「斎木さん、あれっ!?」
「えぇ。翼竜ですな!」
事もなげに言う斎木に、英子は目をまん丸くする。
なるほど、私は異世界にきてしまったんだなぁと、英子は改めて深く理解した。
「あの翼竜は、いわゆる赤龍ですな。現地でもなかなか目撃例がなくて、大変珍しいんですよ!」
「はぁ」
「これは、幸先いいですな!」
斎木はそう言って、ニコリと笑った。
英子は、なおもその赤龍とやらが飛行するのを見つめ続けた。
その雄大な大きさから、もし捕まったら、軽く一飲みされてしまうんだろうなぁと、思わずゾッとした。
夕方頃、だんだんと暗くなってきた辺りで、斎木はパジェロの前照灯を点けた。
「そろそろ、最初の中継地に到着します。先ほどもお伝えしたとおり、バルディ男爵邸で、本日は休ませて貰うとしましょう!」
斎木はそう言うと、ほどほどに大きい屋敷の庭に、車を進入させていった。
* *
異世界のヤムント国に入った初日から、英子は痛い洗礼を受けました。
このまま、英子が異世界をイヤにならなければいいのですが、……。
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