08 ウエルカム トゥー ヤムント国!_02
* *
大気が、……甘い。
異世界にきて、英子が初めて気付かされたのは、そんな感覚だった。
先ほどより英子と斎木はパジェロを降車して、この異世界、ヤムントの大地を踏み締めていた。
向こうには水量の多い河川があり、足元の草むらには、どことなく見覚えのありそうな野草や花々が生い茂っていた。
レモン色の陽光が降り注ぐところを見ると、おそらく、今現地は初夏の頃なのだろう。
「とても、……いい風景ですね!」
思わず、英子の口から言葉が漏れ出してくる。
「えぇ、私もそう思います」
そう言って、斎木もニッコリと微笑んだ。
あぁっ、私はついに異世界にやってきたんだ。
今さらながら、そう実感として心の奥底から湧き上がってくるこの気持ち。
そんなこと、ここ10年の間、一度たりとも起こることはなかったのに、……。
まるで、汲めども尽きない、……。
この情熱を、英子は力いっぱいその胸に抱き締めた。
「そろそろ、王都に向いましょうか?」
感慨に耽っていた英子に、斎木が笑顔で告げた。
「すみません、お待たせしちゃって!」
「いえいえ」
再び2人は乗車すると、それから30分ほどの間、斎木の運転で車両を疾らせていく。
車窓に流れるその風景は、英子にはどことなく子供の頃に一度訪れたことのある、北関東の山間部のそれを思わせた。
すると、……。
「斎木さんっ!? 車を止めて下さい!」
「どうされましたか?」
「蝶です。私、あんなにきれいなもの、見たことがありません!」
こちらの発したその言葉に、斎木は直ぐにSUVを停車させた。
車のエンジンがアイドリングする中、斎木は、しばしの間こちらの顔をじっと見ていたのだが、……。
「えぇ、いいですよ。でも、あまり遠くまでいかないで下さいね!」
「よろしいんですか?」
「えぇ、構いませんよ。ただ、ここらは、先日ゴブリンの群れが発生したと報告を受けておりますので、注意して頂かないとイケませんが!」
「えっ!?」
さっそく、斎木の口からダークファンタジーな言葉が発せられたと、……。英子は、思わず息を飲む。
そのゴブリンという名詞に、一瞬躊躇する気持ちが強く沸いたが、……。
でも、先ほどの蝶、あんなの日本では絶対お目にかかれないよねという気持ちの方が、勝ってしまった。
「はいっ! 了解ですっ!」
英子は車を降りると、件の蝶のいた草むらの辺りを見渡した。
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