06 私、ヤムント国にいきます!_05
* *
「ココとココとココに、ご自身の住所とお名前を記入して頂けますか?」
「はい、……」
斎木の指示の下、英子は次々と書類の所定の場所にサインをしていった。
結局さぁ、……。私にとって、今の生活は第一だからさ。
そりゃぁ、多少斎木さんは私に対して強引だったと思うけどさ。
でも、……だよ。
斎木さんは、私にこう仰ったんだ。
「この度の『エース展』向けにお描きになった作品を、ウチの会社(本省)で買い上げさせて頂きたいと思います。そうですな、……。お値段はこれでよろしいですかな?」
そう言って、背広のポケットから小さな電卓を取り出すと、ピッポッパッと少々計算した後に、こう示してきたんだよ。
「えっ!? いち、じゅう、ひゃく、せん、まん、じゅうまん、ひゃくまん、せんまん、……。えぇ――っ!? 一億ぅ!?」
「我々は、これでも少ないと見積もっておりますよ!」
そう言って、斎木はニコリと微笑んだ。
マッ、マジかよっ!?
もう、絶対……抗えない。
私は、金の力に負けた。
現金のパワーに屈した。
これで、私も「契約書」の奴隷に堕ちていくのだ。
「くぅぅ~っ! 殺せっ!」
英子がそんなことをぶつぶつと呟きながら、なおも絵画の売買契約書などにサインを続けていると、……。
「ふふっ、殺しませんよ。むしろ、英子さんのお力をこれから存分に発揮して頂けると思ったら、とてもワクワクしますな。我々は、あなたの能力が大いに活かされるものと、期待しておりますぞ!」
そう言って斎木は書類を全て回収すると、様々な契約書に記入漏れがないかどうか、真面目な表情で目を通し始めた。
もう、……後戻りはできない。
「くぅぅ~っ!」
英子は自身が斎木から過大に評価されてしまって、何だか居た堪れないような気持ちになった。
「それでは契約成立です。ご決断、誠にありがとうございます」
「はい」
ははは、……。もう乾いた笑いしか出ない。
「それでは、今後のことなのですが、……。英子さんは半年ほど日本を離れ、現地で生活して貰います。現在はまだ極秘任務となりますので、一度『失踪扱い』になってしまいますが、構いませんね?」
「えっ!?」
マジかよ! と、英子は思った。
「魁!断筆姉さん!!」をお読み頂き、ありがとうございます!
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