06 私、ヤムント国にいきます!_03
* *
「ご理解頂けたようですから、……。そろそろ指輪を返して頂けますか?」
老人の容貌をした斎木が、そう言ってくる。
「!?」
英子は、思わずゾクリとした。
先ほどまでの力の漲る肌ではなく、若干の皺とはいえ、染みがこめかみや各所に現れ、年齢を重ねた者独特の乾いた何かを示していた。
英子は、もう一度指輪に目を落とした後、「返さなくちゃ!」と思った。
こちらの震える指先から、斎木はその指輪を受け取ると、慣れた動作で自身の右手薬指に再び装着した。
「えっ!?」
テーブルを挟んで目の前の斎木は、みるみる間に、元の30過ぎの姿に戻った。
「何それっ!?」
思わず不躾ながら、つい本音が飛び出してしまった。
すると、斎木と目が合って、ニコリと微笑み返されてしまう。
イケねっ、……しまった。これは私の落ち度だったと、英子は思った。
相手に対する敬意も、思いやりの心もない、……。若者特有の傲慢さが、つい口からこぼれ出てしまったのだ。
私はこう言っては何だけど、……さ。世間一般の女子達よりも、ず~っと努力も苦労も重ねてきたと思うんだ。
だから、他の子達よりも、相手を尊重するというか、敬意を払うというか、……。
そんな思いやり、人情といったものがさ。私のこの身には、ちゃんと備わっているんだと思っていたんだ。
なのにだよ、……。
私はさっきまで憧れの対象だった斎木さんをさ、……。
こともあろうか、そんな老醜というか、醜悪なモノでも見るかのように、そう振舞ってしまったんだ。
それは、相手の尊厳を傷つける。絶対やってはならなかったのに。
英子はそんな風に思ったら、……。
思わず、涙がこぼれてきた。
えっ!? えっ!? 止めてよ、みっともないっ!
もう自身の意志にお構いなく、目に涙が溢れてきて止まらなくなってしまった。
「ごめん~っ、なぁさぁ~いぃっ!!」
今さら謝っても、相手に失礼を働いたことは消えてなくならない。
でも、どうしたらいいのよぉ~っ、と英子は泣きながら思った。
すると、目の前の斎木は、いささか驚いた表情を浮かべてこちらを見ると、……。
フッと、小さく鼻で笑った。
「おがぁ~しぃでぇすぁ~っ(おかしいですか)?」
斎木はコホンと咳をひとつ吐くと、……。
「英子さんのような美人さんでも、そんな顔をなさるんですね」
「おがぁ~しぃでぇすぁ~っ(おかしいですか)?」
英子は、再び同じ質問を繰り返す。
「いいえ。それでこそ英子さんです。あなたを選んだ我々の目に、いささかの狂いもなかった!」
そう言って、斎木はニッコリと微笑んだ。
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