06 私、ヤムント国にいきます!_01
「くぅぅ~っ!」
英子は、なおも戸惑っていた。
今テーブルを挟んで真向かいには、イケてるオジさんの斎木が座っている。
そんな斎木が両手を伸ばして、こちらの右手をしっかりと握っているんだからね。
たぶん、私が「うん」といって頷かない限り、このままいつまで経っても離してくんないんじゃないかなぁと、英子は思った。
「英子さんっ!」
「イヤァ~、でもぉ~」
「英子さんっ!!」
「くぅぅ~っ! 殺せっ!!」
「殺しませんっ!」
2人だけの面会室で、なおも執拗にこちらの説得を試みてくる斎木。
えぇっ!? ホンと私ったら、……。
一体、どうしたらいいのよぉ~っ!?
英子は空いた手で、半信半疑のまま、それらの資料に人差し指を這わせながら、何とか目を通していると、……。
「では、……。少々、昔の話でも致しますかね、……」
斎木はそう言って、やっと右手を解放してくれた。
「えっ!?」
何ていうんだろう? ちょっと、このままだと寂しいような気がしてきた。
すると、こちらの期待を裏切らないように、斎木は自身の身の上話を始めてきたのだ。
「……」
それは英子にとって、何とも不思議な話だった。
だって、英子にとって祖父の世代の話だったのだから、……。
戦前の軍学校でラッパを吹いていた話とか、師範学校の学生達と何かと競い合っていた話とか、女学校の生徒達とすれ違った話とか、……。
それらを懐かしそうに話すのを見て、英子の頭の中は、ますます不思議(?)でいっぱいになってきた。
英子は、ちらりと斎木の右手の辺りを見た。
そもそも、これほどのイケてるオジさんが独身なわけがなく……。
でも、その右手の薬指には、アメジストのような紫色の宝石の付いた指輪が、きらりと光っている。
「恋人か、……奥様かいらっしゃるんですか?」
英子が率直に、そう訊ねたところ、……。
「そんな人は、おりませんよ」
相手はそう言って、ニコリと笑った。
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